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広告宣伝やマーケティングに“向く人”“向かない人”

 少し前の話になりますが、本国のみならず世界が注目した、アメリカ合衆国大統領選挙。トランプとバイデンの戦いは、トランプがヒラリー・クリントンに勝利した前回の選挙と同様、各州で得票率が拮抗しました。
その結果はともかく、気になったのは同調圧力です。事前調査ではバイデンが有利とされるなか、誰に投票するかを表明しない多数の「隠れトランプ派」が存在したといわれています。
 「トランプに投票する」ことで、コミュニティから排斥されることを恐れた一部の市民が、明言を避けるという事態に発展したといいます。
 日本にはそもそも「和を以て貴しとなす」「村八分」といった言葉があるように、主張を曖昧にする傾向があります。ところが、自己主張を良しとする国民性のはずの米国で、強い同調圧力があることは意外でした。

 自身のことで恐縮ですが、子どもの頃から周りの意見に左右されることは少なかったため、反対意見が多くても自己主張するほうでした。流行りの店でも不味い料理もあるし、みなが絶賛してもつまらない映画もある。それが普通だと思っていたし、付和雷同タイプの人間は昔から信用できませんでした。年齢を経て社会人となり、物事には「落としどころ」があることを学んだものですが、若い頃はビジネスパーソンとして損をした面があるかも知れません。

 閑話休題。
 結論から言うと、広告宣伝やマーケティングの仕事は、付和雷同タイプの人間には向いていません。成功は「落としどころ」ではなく、たった一人の熱狂から生まれることが多いからです。

 ハズキルーペのCMをご存じでしょうか。俳優の渡辺謙さんが「本当に世の中の文字は、小さすぎて読めない!」と絶叫する、あの広告です。好感度ランキングで上位に輝いたCMだそうですが、アイデアを出したのは大手広告代理店でも有名クリエイターでもありません。同社の代表取締役会長の松村謙三さんです。
 とても商品が売れるとは思えない、代理店からの企画にうんざりした同氏が、自らペンを取って構成やセリフを考え、総監督として撮影現場に立ったといいます。同業の老眼鏡メーカーと同じ発想や、ただ聴衆を面白がらせるだけの広告では、短期間に単品で数百万本を売り上げ、取扱店舗5万店にまで成長することはなかったと思います。

 コロナ禍も後押しして市場が激変するなか、「うちの業界は…」「前例がないから…」と言っていては差別化できません。もちろん、同調圧力に影響されていては成功もおぼつかないでしょう。
 市場に問いかけないと答えがわからない時代。社長にとって一番大切なことは、社員や同業者の「できない」「ありえない」に屈することなく、“思い”の歩を進める勇気をもつことです。

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