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人生の終わりには、悔いを残さないようにさまざまな力が働く。

 私とダンナとの不思議な関係を書いた「48歳バツイチだけど運命の人に出会った」を連載中ですが、唐突にスピリチュアル的な別の話を書きます。季節外れですが……。

2017年のクリスマスイブのこと。

私が経営するBARでは、常連客を集めてパーティーを催しておりました。  

チキンやローストビーフ、シャンパン。
お客様がそれぞれ飲み物や食べ物を持ち寄り、プレゼント交換などで盛り上がっていました。  

その裏では常連Aさんの職場の女性(28歳)と、常連Bさんの知り合いの男性(29歳)を引き合わせる、という目論見も進行しておりました。
2人とも爽やかな美男美女で話もはずんでおり、その場にいた誰もが「これは決まったな」と思っていました。

カウンターには常連の女性とその同僚が座り、その様子を横目で見ています。パーティーも佳境に入り、私はお客様に断ってカウンターの中で洗い物をしていました。

涼音さん(仮名)は40代前半、その同僚の恵理子ちゃんは30代半ば。

涼音さんは彼氏がいない恵理子ちゃんに向かって「来年こそはアンタに彼氏を見つけてあげるからね」と言いました。  

それを聞いていた私の右耳に突然「功君」という言葉が飛び込んできました。  

功君は常連というほどではないけど、店に何度か訪れている男性。年の頃は恵理子ちゃんと同じくらいです。多趣味で話好き、ちゃんとした職業だけど、見た目からしてオタクなんですよね。

片や恵理子ちゃんは顔立ちはキレイなのに、こだわりが強く、人と打ち解けない感じの女性です。  

私は「あー功君か。彼女いないみたいだけど、紹介するっていうとちょっと微妙かな。恵理子ちゃんは王子様待ってそうなタイプだし。第一、功君の連絡先知らないしな」と思ったのです。  

ところがその時、出入りの酒屋さんが配達に来ました。 酒屋さんは顔が広く、地元のオタク人脈もあることを思い出し、功君の連絡先を知ってるか聞いてみました。

知っているというので私が連絡を取りたがっていると伝えてくれないか、と頼みました。すると功君は30分後に電話をくれ、一時間後に来店。 

パーティーはすでにお開きになっており、涼音さんと恵理子ちゃんだけが残って片づけを手伝ってくれていました。 簡単に功君を紹介し、あとはお若い方たちで……というわけにもいかない二人なので、私と涼音さんが人となりや生活がわかるように会話をリードしました。 そして三人は深夜までやっている店に移動しましたが、私は片づけがあるので行きませんでした。

後から私は、恵理子ちゃんに合うような35~40歳くらいの男性を二人思い出しました。
 「C君とかD君の方が見た目も爽やかなんだけど、なんで気づかなかったんだろ。でもあの時、たしかに右耳に功君って聞こえたんだよな……」

まあ、いいか、と私は年が明けたら恵理子ちゃんに彼らを紹介しようと考えました。

そして、その後二人がどうなったかを聞かないまま2018年になり、1月17日に涼音さんが急死したという連絡が。 

私は涼音さんと二人であちこち食事に行ったし、お客様というより友人だと思っていました。 通夜、葬儀と両日とも参列しましたが、功君も両日来ていました。

涼音さんはとても面倒見の良い女性で、彼女がかわいがっていた若い子たちの再就職先を探したり(職場がかなりブラックらしく、後輩の悩みを涼音さんはよく聞いてあげていました)、婚約パーティーや温泉旅行を計画したりと、とても段取り上手な人でもありました。
彼女と仲が良かった子たちの中には、職場を離れた人もいたのですが、全員が通夜、葬儀と両日出席することができました。なぜならその日は、みんなで温泉宿に一泊しようとしていた日だったのです。  

また涼音さんはクリスマスパーティーで交換用のプレゼントのほか、女性たちにプチプレゼントを用意していました。それはなんと黒いタイツ。 冬場の葬儀でしたので、私を含め女性は皆そのタイツを履いて参列しました。

誰彼となく口にしました。 「涼音さん、最後まで段取りしていったね……」と。 

先日、恵理子ちゃんと会う機会がありましたが、その後、功君とはうまくいっているようです。美人なのに感情にとぼしく、他人に対して壁を作っているようだった彼女は、だいぶ表情が優しくなっていました。

涼音さんが亡くなった日、彼女は離れて住んでいるお母さんとご飯を食べにいったそうです。そして別れた後、少し具合の悪くなった涼音さんは、お母さんに電話します。

「私、ちょっと具合悪くなったんだけど、お母さんは大丈夫?」

大丈夫、とお母さんが答え「良かった」と返したのが、彼女の最後の言葉だったそうです。

その話を聞いて私は、彼女が「お母さん大好き、仲いいよ」と話していたことを思い出しました。そして亡くなる何日か前には、やはり離れて住んでいる子供たちとも会っていました。最後に一番大事な人たちと会っていたんですよね。

もっといろいろなことが起こっているのだけど、これ以上は書きません。私は霊能者ではないので、霊能的なタブーを知らず、書いてはいけないことを書いてしまうかもしれないので。

ただ、起こったことすべてが「彼女がこの世に悔いを残さないため」の始末だった、とだけ書いておきます。

先日、義母……たー君のお母さんが亡くなりました。89歳なので大往生と言えるかもしれません。
私はたー君とケンカ中。
これまで何度もケンカをしてきましたが、その時は一番派手で、私は別れも辞さない覚悟でした。葬儀に出る、出ないでモメましたが、結局、通夜だけ参列することに。
するとその矢先に喪主のお義兄さんが緊急入院し、たー君が喪主を務めることになりました。
親戚たちが帰ってしまった後、ご遺体と私とたー君だけしか居ない式場で、私はたー君への不満をぶちまけました。
いつもは逆ギレするたー君は、その時ばかりはなぜか神妙に私の言い分を聞きました。
そして、葬儀が終わってから返事する、と言いました。

結局、私の要求も通り、なんとなく仲直りみたいになったある日、たー君がコワイことを言ったんですよ。

お義兄さんが入院したのはお義母さんの力だ、と。

お義母さんとお義兄さんは仲が悪く、お義母さんは「喪主なんかしてほしくない」とお義兄さんを病気にした、と言うのです。

霊感強い一家なので、そういうこともあるかもなー……と、部外者の私は、ぼんやりと思いました。そして、いつもは人の意見など聞かないたー君が、私に言いたいことを言わせてくれたのも、もしかしたらお義母さんの力かもしれないな、とも。

お義母さんとはお義父さんの葬儀の時に一度会ったきりなのですが、なんとなく「嫌われてはいない」感触はしてましたので、私の味方をしてくれたのかも、という気がしています。
たー君はモラハラ的な性格で、けっこう女性に逃げられてるし、本人も「もういい歳だし、ミチルがいなくなったら俺は一人だな」なんて言うくらいなので、多分私が最後の女なのでしょう。

息子に寂しい老後を送らせたくないお義母さんが、なんらかの力を働かせたのではないか、と思っています。

人間、死ぬ間際には、悔いを残さないようにさまざまな願いが通じる。何か残したとしても、必ずつづきをやってくれる人が出てくる。

私はそんな風に考えています。



 


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