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CSは、事業の進化の担い手? Customer Success Cafeイベントレポート

Customer Success Cafe ~イケてるスタートアップのCEOから学ぶ、事業経営視点のカスタマーサクセス~に参加してきました。本記事はそのイベントレポートとなります。

趣旨は以下です。

カスタマーサクセスの重要性を、経営から現場まで、全社で共有できていますか? 本イベントでは、カスタマーサクセスを経営の中心においてビジネスを推進するCEOとその右腕のカスタマーサクセス部門責任者の方々をお迎えし、事業経営におけるカスタマーサクセスの役割について考えます。

事業経営視点で語るというところが興味深く、参加してきました。残念ながら、おくれてしまったので、弁護士ドットコムの橘さんのお話から。

顧客に向き合う、カスタマーサクセス
弁護士ドットコム株式会社 執行役員 クラウドサイン事業部長 橘大地さん

ご存知、クラウドサインは契約書いらずでクラウドで契約する仕組み。
https://www.cloudsign.jp/
いまは業界ごとにバーティカルにどんどん広めているフェーズとのこと。

本題に入り早々、CSで何をやるか考える際に、手段と目的を取り違えがちであることが語られます。
「カスタマーサクセスはオンボーディングが大事。だから、受注後に操作説明を行おう」ではなく、「クラウドサインの操作性はシンプルで顧客は困らない。だから顧客が困っていることを解決する」。
クラウドサインの場合は、顧客の困りごとは、法務の説得とか、オフラインの話だったりする。
(前提として、クラウドサインはプロダクトのUIが磨き上げられている話がありました)

だから、【顧客課題→オンボーディング施策→カスタマーサクセス部門が担当】という順序をしっかりと大切にすること、そして、顧客接点があるチーム(マーケ・セールス)が感じている課題を取りに行くことが大事です。

クラウドサインの具体例を挙げて説明が続きます。

「操作は理解したけれど、社内のワークフローをどのように構築したらいいのか?」という悩みを持っている人がいたときには、社内決済フローの構築と印章規定の変更のサポートをすることを始めたとのこと。

また、「取引先がクラウドサインを利用してくれるか不安」という声もあった。そこで、取引先への説明方法と説明資料の共有をした。
さらに言えば、全取引先がクラウドサインを認知している状態になれば課題解決であるので、CMを打ってプロモーションをしたりもしている。

カスタマーサクセスを考える上で重要なことは、プロダクトが、そもそもNet Revenue Retentionが高いのかということ。(Net Revenue Retentionについてはこちらが参考になります) 

この指標の良さは、顧客の成功を追いやすい指標であるということ。そして、カスタマーサクセスの視点から見ると、顧客の成功とプライシングを一致させて行くことができることがポイントです

例えば、クラウドサインでは、固定費用+契約書件数に比例するという料金体系にしていて、発行するIDライセンス数にしていません。これは、日本では法務部門が契約するので、サイン権限がある人間が限定されていることとが背景ですが、加えて、クラウドサインというプロダクトにおいては「顧客の成功」は、契約書をちゃんと発注できること。
なので、契約書件数に比例する料金体系は、「顧客の成功」と一致していると考えることができます。

【まとめ】
・顧客課題→オンボーディング施策→カスタマーサクセス部門が担当という順序をしっかり守る
・マーケ・セールスと連携して、顧客の課題の本質をしっかりと把握し、解決する
・顧客の成功とプライシングを一致させ、CSのモラルハザードを防ぐ

カスタマーサクセスチームの役割は顧客の成功だと思っていました
株式会社空 CEO 松村大貴さん


ソラは、ホテルの料金設定を効率化するサービスMagicPriceを提供しています。(http://sora.flights/

サービスの説明もそこそこに衝撃なタイトル「カスタマサクセスチームの役割は、顧客の成功だと思っていました」の意図の説明が始まりました。

大前提として、顧客の成功は「プロダクト」が担うべきと主張します
では、カスタマーサクセスチームの役割は何か?
それは、二つと松村さんは語ります。
ネットレベニューチャーンレート(churnしたMRR - 拡大したMRR / 前月末MRR )をマイナスにすることと、ファンベースを築くことです。

今回の話は前者に焦点を当てています。
では、ネットレベニューチャーンレートを減らすにはどうしたらいいでしょうか?
それは、定義からあるように、「解約を減らす」「売上を増やす」ことです。重ねて「売上を増やす」にはどうしたらいいでしょうか?
そこで、CSができることは「上位課題を発掘する」「プロダクト、事業モデルを改善する」「アップセル機会のある顧客を見つけ、提供する」ということになります。
「上位課題を発掘する」とはより顧客が困っていることを、一緒に見つけて行くこと。より困りが大きければ、より大きな取引になる可能性はありますよね。

では、「解約を減らす」についてはどうでしょうか?
ここでは、顧客を減らすことは、むしろ注力する顧客が絞られるので振り分けるリソースが増えるということ。単価の増加が同時に起きていれば必ずしも悪いことではないという考え方もできるということでした。
言い換えれば、継続、拡大契約してくれそうなコア顧客を理解し、絞ることで、顧客数が減ってもNRCRはマイナスにできることも、それもひとつの正解ではないかということです。

まとめます。ネットレベニューチャーンレートをマイナスにすることは、顧客のより本質的な課題を理解し、プロダクトの提供価値を高め、事業の存続可能性を高めることであり、すなわち、顧客にとっても嬉しいことであるということです。

まとめ
・CSチームの役割はNRCRをマイナスにすること
・上位課題を発掘し、プロダクトや事業モデルの進化にコミットしよう
・それは、最終的に、顧客の成功につながる

パネルディスカッション
われわれカスタマーサクセス責任者は、CEOのオーダーにどう立ち向かっているか? 

【登壇者】
MyRefer Customer Success Groupマネージャー 三加 裕記さん
弁護士ドットコム株式会社 クラウドサイン事業部 Head of Customer Success 岩熊 勇斗さん
株式会社空 カスタマーサクセスチーム マネージャー 村田 憲亮さん

最初の質問は、「カスタマーサクセスの役割は何か?」

三加さんは、事業の成功と顧客の成功をどう近づけて行くかを担う BizDevとお話しされました。そのため、セールスやマーケともコミュニケーションをとり事業全体を改善して行くこと、プロダクトがマーケットフィットしてきたら、サポートを効率化する方法も考えます。そして、最終的には、「何を次に事業としてやるか?」ということを考える時間を作り出すことが大事だと語られました。

岩熊さんは、プロダクト、事業売上、顧客の成功を、三方良しにしていく役割があると語ります。どれか一つ欠けても、CSとしては難しいものになるということ。

村田さんは、2点挙げました。
1点目は、PFMのフィットを促進すること。プロダクトは世に出た時にはマーケットにフィットするかわからないので検証するために、本質的な課題を社内に還元して改善につなげることが重要です。
2点目は、ビジョンを伝えてファンづくりに貢献すること。空という会社はビジョナリー。ビジョンはプロダクトのコンセプトに落とし込めている。空がこういうコンセプトでプロダクトを作っていることを伝えて、ファンになってもらいたいとのことでした。

続いて、「顧客のリテラシーが低い場合にどう立ち向かうか?」という質問に対して、岩熊さんは、 「まだ乗り越えられてないが、細かいところでは、バーティカルでどういう業界とやり取りをすることがわかってくるので、業界ごとに対策を立てている」と話しました。他の二人も、業界を見つつ、サポートを通して得られた知見をプロダクトにフィードバックしているとのこと。

3つ目の質問は、「フリーミアムからSaasへの転換をどうしたか?」。

三加さんは、ちゃんと利用してもらってリファラルの概念を作っていかないといけないと考えた時に、有料・ハイタッチで伴走して行くことが大事だと議論になったことが転換のきっかけと話します。既存のフリーミアムの方には、「有料課金になりますけど」とコミュニケーションをとったとのこと。

岩熊さんは、「Saasの話では、フリーミアムやめたほうがいいと言われますが、うちはフリーミアムです」と語ります。そもそもプライシングはプロダクトによる。クラウドサインの場合は、操作性がシンプルでユーザーが勝手に使えるようになるのでエントリーが低く、使っているうちに気に入れば自然と有料転換しやすい。加えて、ハンコ文化と戦う必要があったので(文化を広げていくために)フリーミアムにしたとのことでした。

興味深かったのは、評価と人材の育て方についての質問でした。
三加さんは、MyRefer社のビジョンとして「コロンブスの卵」があることを語り、その体現のためにどれだけ事業に対して発信してイノベーションを起こそうとしたかを評価の軸にしているとしました。アップセルなどのKPIに加えて、事業をどれくらい進化させたかを見ているとのことです。
くわえて、組織的な取り組みとして、「コロンブスMTG」という四半期に一度設ける。それを事業を発展する上でどう取り組んで行くかを話すようにしている。

最後は、「本質課題発掘のためのヒアリング能力を上げるためのスキルアップの取り組み事例を知りたい」という質問でした。

村田さんによれば、空では、何よりもオープンな雰囲気で議論することが、スキルアップの機会になっているのではと話します。具体的には、開発やセールスを含めて、事業開発についてのディスカッションを時間をとってやっている(長い時には半日かかったりすることもあるとのこと!)。
また、社外に対してもオープンで、毎週金曜日に興味ある人向けの飲み会をやっている。そこでもお酒を飲みながら議論をしているので、社外の人を交えての議論は活発にやってるとのことでした。

岩熊さんは、組織としての取り組みは正直できていないが、チーム内での議論をしっかりとするようにしているとのこと。「人じゃなくてコトに向かう」をもとに、日々、対等にフィードバックし合う関係構築を心がけているとのこと。個人としては、諸先輩がたや、たくさんお話ししてフィードバックをもらうことを心がけ、 海外に目を向けたり、できないことを積極的に開示して、フィードバックをもらう機会を積極的に作っているというお話でした。

三社とも議論の機会を大切にしていることを共通にしているのが興味深かったです。

感想

個人的な感想として、以下がありました。

・顧客の成功は、プロダクトが担う。
・CSは、顧客の成功を実現する過程で、多くの課題を知り、それをプロダクトにフィードバックする存在である。
・CSのパフォーマンスが、顧客の成功と事業の成長につながるようなKPI設定やプライシングが重要。
・CSは、事業視点を持ちながら、顧客との深いコミュニケーションができ(課題の掘り下げ)、それをフィードバックする力も求められる、万能選手であること。
・個人としてCSを見る場合は、「どれだけフィードバックの提案をしたか」を指標にして行くのは良さそう。

おそらく、今回のイベントの趣旨が、「CEOから学ぶ」というところが非常に良かったのだと思います。いい意味で、現場にとらわれすぎず、視座を上げる経験になりました。


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