路生よる

作家です。「地獄くらやみ花もなき」「折紙堂来客帖」など。 作風は、ミステリーのような、…

路生よる

作家です。「地獄くらやみ花もなき」「折紙堂来客帖」など。 作風は、ミステリーのような、ホラーのような、妖怪のような。

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「地獄くらやみ花もなき」コミックス1巻が発売されました+ご購入頂いた方への御礼に特設サイトを無料公開中

「地獄くらやみ花もなき 第壱集」とは 美少年探偵×ニート助手の〈地獄堕とし〉事件簿! 罪人が〈妖怪〉に見えてしまう遠野青児は、古ぼけた洋館で、雪のような白肌と漆黒の瞳と髪を持つ少年・西條皓と出会う。恐ろしいほどの美貌、そして年齢に似合わぬ優れた洞察力を持ち、〈代行業〉を営むという皓のもとで、なぜか助手として働くことに。皓の代行業、それは隠蔽された罪を暴き、罪人を地獄に送り届ける〈地獄代行業〉だった――!? 第3回角川文庫キャラクター小説大賞〈読者賞〉受賞のミステリー小説

    • 「地獄くらやみ花もなき」コミックス1巻購入御礼特設サイトの楽しみ方

      「地獄くらやみ花もなき」コミックス1巻をご購入頂いた方への御礼として、特設サイトを無料公開しております。電子・紙の本どちらでも、コミックス1巻さえ手元にあれば、期間無制限で閲覧できますので、ぜひお楽しみください。 特設サイトの閲覧方法① お手元に「地獄くらやみ花もなき」コミックス1巻をご用意ください。紙の本・電子書籍どちらでも大丈夫です。 ② 下記のURLをクリックして、特設サイトにアクセスしてください。   https://jigokukurayami.blog.fc

      • 「死を招ぶ探偵・凜堂棘の事件簿 第零怪 通り悪魔」試し読み

         この世には、本嫌いの探偵もいるのかもしれない。      ※  秋の長雨——と言うべきか、ここ数日続いた雨のせいで本の匂いが強まっているのは確かだった。数世紀の歳月を経た洋書の匂いだ。  紙や革、あるいは接着剤に含まれた揮発性有機化合物が、年月と共に分解される際に発せられるその薫香は、バニラやアーモンドの入り混じったものにも似ている。  匂いの源は、床から天井まで壁一面を覆った三層構造の書架だった。飴色に光る胡桃材のそれには、レールの上を滑る移動式の梯子が取りつけられて

        • 【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・6

          ←5に戻る   始めから→  ◆  数日後。  相変わらず居候生活を続ける青児のスマホに、佐織さんからメールが届いた。なんと〈首吊りトイレ〉と呼ばれるあの公衆トイレで、沙月さんの首吊り死体が見つかったと言うのだ。換気用の窓にショルダーバッグの紐をかけ、遺書の一つも残さないまま。 〈何かご存知ありませんか? 思い当たることがあったら何でも教えてください〉  そんな風に結ばれたメールからは、激しい動揺が感じられた。 〈見ててください。あの子、不幸になりますから。近いうちに必ず

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        「地獄くらやみ花もなき」コミックス1巻が発売されました+ご購入頂いた方への御礼に特設サイトを無料公開中

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        • 「死を招ぶ探偵・凜堂棘の事件簿 第零怪 通り悪魔」試し読み

        • 【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・6

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・5

          ←4に戻る   始めから→  はっと気がつくと、見慣れた通りに立っていた。  自宅マンションから徒歩十分ほどの細道だ。いつの間にか帰路についていたらしい。けれど一体どうやって屋敷を出たのか、沙月は思い出すことができなかった。  ひょっとすると、すべて夢だったのだろうか。緑のトンネルの先にそびえる洋館も、死に装束めいた和装の少年もまた、何もかも悪い夢だったのかもしれない。  けれど、黒い靄のような胸騒ぎが心にまとわりついて離れなかった。今にも取り返しのつかない何かが起ころうと

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・5

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・4

          ←3に戻る   始めから→  画面に表示されたのは、ウェディングドレス姿の沙月さんだ。白スーツ姿で寄り添う新郎は、いわゆる爽やか細マッチョのイケメンである。  なるほど、これが乙瀬凌介氏か。 「ちょうど淳矢のDVに苦しんでる時期に知り合ったそうです。大手デザイン事務所のホープで、年収一千万。去年、若手の登竜門とされる新人賞を受賞してます」 「それは、確かに不幸じゃないですね」  下種げすな言い方をするなら、恋人の乗り換えに成功したわけだ。 「沙月にとって、淳矢はちょうどいい

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・4

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・3

          ←2に戻る   始めから→ 「夫のいない家に一人きり、お腹の中には赤ん坊。そんな状況で胸騒ぎがしたら、普通は虫の知らせと捉えるものじゃないでしょうか?」 「え、あの」 「結局、メールの差出人はどこの誰かも不明のまま。もしかすると、今この瞬間に沙月さんを待ち伏せしているかもしれない、そうは思わないんですか?」 「す、すみません、そろそろ時間が――」  そそくさと席を立とうとする沙月さんの手を皓少年がつかんで止めた。 「差出人が誰か、本当は知ってるんじゃないですか?」 「え?」

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・3

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・2

          ←1に戻る 「え、ほ、本当ですか!?」  直後に立ち上がった皓が、本棚から一冊の本を引き抜いた。大判の画集のようだ。 「江戸時代に鳥山石燕という絵師によって描かれた妖怪画集です。この本には〈画図百鬼夜行〉や、続編の〈今昔画図続百鬼〉などが収録されています。これは復刻版なんですけどね」  白い指がページをめくる。  さまざまな姿形をした妖怪たちに名称や解説が添えられていた。画集というよりは図鑑のような印象だ。活き活きとうねる墨の線は、恐いというよりはユーモラスなおかしみがある

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・2

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・1

           恥の多い生涯を送っている。    ◆  遠野青児(とおのせいじ)にとって、齢二十二に至るまでの来歴は、生き恥そのものと言っても過言ではなかった。  なにせ漁師の家に生まれながら未に船酔いを克服できず、二十五メートルプールでも溺れるほどの重度のカナヅチときては、生まれながらに何かを間違えていたと言うより他ないだろう。  そして、今や立派なニートである。職なし文なし宿なしの三重苦だ。  それもヒキコモリ先は、神奈川県の港町にある実家でも、在学中に借りていた都内の貧乏人向け風

          【無料公開】『地獄くらやみ花もなき』第一怪 青坊主・1