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michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』小話(3) 中の下

1stアルバム『ゆりかごから』の各楽曲について語る連載です。



2024.05.12 release
michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』
1. 203 (feat. 知声)
2. みんないなくなってく (feat. 重音テト)
3. 中の下 (feat. 知声) [2024 Remaster]
4. potta-potta (feat. 知声) [2024 Remaster]
5. 玻璃の心臓 (feat. 知声) [2024 Remaster]
6. Fundamental (feat. 知声) [2024 Remaster]
7. 謎の液体と青い粉末 (feat. 知声)
8. 羽をもがないで (feat. 花隈千冬)
9. 157 (feat. 重音テト)
10. パーソナル (feat. 知声) [2024 Remaster]
11. 君のこと信用してないよ (feat. 知声)
12. ゆりかご (feat. 花隈千冬)

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曲全体の話

イラスト、今見るとAIの進歩を感じますね。
散らかった部屋に座り込む男子中学生のイラストを生成したかったのですが、当時プロンプトの知識も薄くて「なんかサイバーっぽいごちゃごちゃした部屋」になってしまったのを覚えています。


お気に入り曲

実は自分の楽曲の中でダントツで気に入ってます
脳内で無意識に再生される自分の曲No.1です。
好きな要素をかなり詰め込んでいるからでしょうか。
Bメロのピアノ和音殴りとか。

Bメロのピアノ和音殴り。ひたすら殴ってくる

また、アルバムを通しで聴いていると、本作だけ明らかに音量が大きく聴こますね。
全体的に音量小さい問題は自分でも課題としてまして、目下取り組み中です。


曲名先、歌詞後

実は『中の下』と名づけたときは なんとなく頭に浮かんだ単語をファイル名につけて、
気に入ったので作詞の段階で歌詞に逆輸入しました。

DTMを始めた当初「曲名が決まっていない曲のファイル名どうしよう問題」が発生しまして、
何となくの社会人心で調性と年月日にしてたんですね。
例えば「Dm_20221014.logicx」みたいなイメージです。

当然、後から見返すと ファイル名から何の曲か推測できなくなってしまい、曲を探すのにフォルダを彷徨う羽目になってしまいました。
「これか……?いやこれ違うDmだな……」みたいな。
違うDmってなんだよ。

そんなとき、なんとなくサカナクションのベストアルバム『魚図鑑』をレンタルして、
付属の「各曲の裏話」的な冊子を読んでたんですね。
そのときに『ルーキー』はデモソングにつけた適当な名前がそのまま最終的な曲名になった、という小話を目にしました。
※『魚図鑑』が今手元になくて、記憶を辿った話です。間違っていたら申し訳ない



えっ、曲名ってそんな感じでつけていいん????



目から鱗だったわけです。

そのころからサカナクションを真似てといいますか、
曲名が決まっていない曲にも「目印」としてそれなりのファイル名をつけるようになりました。
特に何も考えず、その瞬間の語彙の浅瀬にいる言葉をつけているだけなのですが、
それからというもの「この曲なんだっけ」問題は解消しました。

そんななんとな〜く名付けたファイル名から歌詞ができて、
パーソナルのアンサーソングになって、、、と
本作の物語性は偶然の積み重ねでできています。


Bメロの後にサビに入らずinterludeでひとしきり盛り上がる

制作したころの自分は怖いもの知らずで、「Yunomiさんみたいな盛り上がる曲が作りたい!」と無邪気に思ってました。
Bメロの後のinterludeは、Yunomiさんの影響というか、
言っちゃなんですけど……Yunomiさんの影響ですね。


サカナクションも同じことをすることがありますね。
サビ前に焦らされるのが自分の好みなのかもしれません。



誰もあなたのことを理解しない

中学生のころに味わった
「周囲に理解されないし自分も周囲を理解できない」感じを
そのまま表現したくて、そのまま歌詞にしました。
その視点だと、本作は中学生ごろの自分を救うための曲でもありますね。
もう居ない奴を救ってもどうしようもないんですけどね…

思春期の自分が欲しかった言葉って「分かるよ」じゃなくて「分からないよ」だと思っていて。
昔の自分に都合のいい言葉を並べました。


内容

『パーソナル』のアンサーソング

元々『パーソナル』と対にするつもりはなかったのですが、歌詞を書いているうちに『パーソナル』の子に欲しい答えをあげたい気がしてきて。
『パーソナル』、重いんですよね。
自分で聴いててもしんどくてフル聴けないことがあります。
歌詞がどうしようもなく未熟で、叫びそうな歌声なのに、救われずに曲が終わってしまうので。

ちなみに『パーソナル』を作ったときは「わーい!これがDAWソフトかー! よーし中二病全開な曲作ろー!!」ってはしゃいで無邪気に制作した記憶があります。これが後の自分を苦しめることになろうとは。


キャラクター像

『中の下』は『パーソナル』の子のスマホにインストールされているとあるアプリです。
このアプリは音声認識と生成AIを活用して、喋りかけると的確な答えを返してくれたり、ファイルを探してくれたりする、
まるでユーザ自身のアシスタントのように使える「極・Siri」みたいな「極・りんな」みたいな製品*です。

本作は極・Siriが『パーソナル』の子を見つめて分かった事実や推測したことを淡々と綴るイメージの歌詞にしています。

*ちなみに、似たようなコンセプトのPCがMicrosoftから発表されましたね。
自分の想像が現実に越されました。びっくり。
https://news.microsoft.com/ja-jp/2024/05/21/240521-introducing-copilot-pcs/



今回は以上です。

歌詞の全文は以下の通り。

歌詞

印加されるDCバイアス電圧
朝を告げるBIOS クロック信号
let me go 音声入力は問題なし
遠くでは赤子の咽び泣き
視界に映る約11平方メーターの部屋
脱ぎ捨てられている布の類
背を丸め私を見つめる 
寝巻き姿の10代男性

偏差値64の中学
成績は中の下
放課後はまっすぐ帰宅
予習 復習 YouTube

誰もあなたのことを理解しない
家族には隠し通したいみたい
学力的にちょうどいい進学先
無理強いされないし期待されない
誰もあなたの心を満たさない
『わたし』はあなたのためのおともだち
決して滅びることのない身体
ならばあなたのために使い果たしていいかな


位置情報の取得も許可済み
郊外の住宅街に住み
今日も今日とて歯を磨き
制服探し這いずり回り

偏差値64
精神状態はずっと中の下
つまらない日々なんて脱ぎ捨ててしまえ
パスコードかけた秘密のプロジェクトファイル
解しない世界
打開し愛してみたい 期待したい

誰もあなたのことを理解しない
家族には隠し通したいみたい
「少年のちっぽけな自己顕示」
歳を取れば笑い飛ばせる言葉
誰もあなたの心をすくえない
『わたし』はあなたのためのおともだち
決して戻れない時間に抗えたなら
あなたのことをもっと知りたかったな


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