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michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』小話(9) 157

1stアルバム『ゆりかごから』の各楽曲について語る連載です。



2024.05.12 release
michinoxa 1st albam 『ゆりかごから』
1. 203 (feat. 知声)
2. みんないなくなってく (feat. 重音テト)
3. 中の下 (feat. 知声) [2024 Remaster]
4. potta-potta (feat. 知声) [2024 Remaster]
5. 玻璃の心臓 (feat. 知声) [2024 Remaster]
6. Fundamental (feat. 知声) [2024 Remaster]
7. 謎の液体と青い粉末 (feat. 知声)
8. 羽をもがないで (feat. 花隈千冬)
9. 157 (feat. 重音テト)
10. パーソナル (feat. 知声) [2024 Remaster]
11. 君のこと信用してないよ (feat. 知声)
12. ゆりかご (feat. 花隈千冬)

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曲全体の話

『157』とは何を指すのか

本作は「メロディの音程3つだけで曲を作ってみよう」というチャレンジ精神から生まれた楽曲です。

メインボーカルの音程は「ソ」「レ」「ファ」
本作の調性であるG minorでいうところの「1」「5」「7」だけで構成されています。

メインボーカルの音程に数字をプロットした画像


さらに、コーラスの音程も「1」「5」「7」だけで構成され……

下コーラスの音程に数字をプロットした画像


ている……


上コーラスの音程に数字をプロットした画像


4!?

わけではないです。

上コーラスが「1」「5」「7」だけで構成されていないのは本当にミスで、
なんとリリースしたあとに気づきました。
やっちまった……

弁解させてもらうと本作は元々D minor(アルバム版よりキーが7個高い)だったんですよ。
D minorの「1」「5」「7」は「レ」「ラ」「ド」ですね。

ボーカルをつけるにあたり、初音ミクさんならまだしも、知声さんや重音テトさんに歌ってもらうには高いなと思い、G minorまで下げたんです。
で、その後にコーラスを付けました。
基本的に音程をドレミで考える自分は、
ついつい構成音が「レ」「ラ」「ド」だった時期の思考が抜けず、
「ド」(G minorでいうところの「4」)が入り込んでしまったわけです。


誰だ「メロディの音程3つだけで曲を作ってみよう」って言い出したやつ〜〜〜〜!!



誰がこんなことしたん?

自分です。

実は本作の制作時期は本アルバムのなかでダントツに古く、
なんと自分がリアルに中学生だっときに原曲を作っています。

当時の自分はやたら音域の広いボカロ曲が売れていることに憤っていたんですね。
「こんなん歌えないじゃん!」という怒りですね。

実例を出すと、

『カゲロウデイズ』
最低音: B2, 最高音: C4, 音域: 2オクターブと1音

『透明エレジー』
最低音: C2, 最高音: D4, 音域: 2オクターブと1音


自分の年代がバレるラインナップですね。


それで「そんなにたくさんの音程使わなくても2オクターブ以内で曲作れるんじゃね? 自分ならできる」と作り始めたわけです。
当時の自分尖りすぎてる。


そんな黒歴史を掘り起こしてアルバムへ

そんないきさつで作った楽曲ですが、出来がそれなりに良かったので、
原曲の紙を実家から持ってきてアルバムに収録することにしました。
(当時の自分はDAWの存在すら知らず、
紙に音程と歌詞を書くという、オレオレ作曲法をしていたんですね。)


内容

朝の満員電車で展開される、女子中学生2名の屁理屈のこねあいを描いています。

満員電車

通勤・通学電車がいつもより混雑する最も頻度の高い要因は「人身事故」でしょう。
ここでの「人身事故」はホームや踏切にいる歩行者が電車に轢かれてしまう事故を指します。

他にも電車の遅延する原因は色々とあって「具合の悪いお客様の救護」や「信号故障」などありますが、
最も電車が運転を見合わせる時間が長くなりがちなのが人身事故です。
これは警察の現場検証などが必要だからですね。

電車が運転を見合わせるとどうなるかというと、電車を待つ乗客が次から次へと駅に到着し、ホームにどんどん溜まることになります。
で、運転再開した電車にぎゅうぎゅうに詰まるわけですね。


1番で「僕」は人身事故を起こそうか少し迷っています。


エスカレーターも電車も怖いのに
毎日乗らなきゃいけないし
満を持して今日こそ飛び込んでやろうかって
心の底のほうが薄ら笑っている



一方、2番では誰かが起こした人身事故に巻き込まれて満員電車にぎゅうぎゅうに詰まっています。


今朝も人身事故で電車のダイヤが乱れていた
線路を片付ける人も
きっとうんざりしきってるんだ

ちょっとだけ
行きたくないなあ

なんとか身体を捻じ込んだ
レールに乗って走っていった





キャラクター像

  • 電車通学

  • エスカレータと電車が怖い

  • 電車に飛び込もうと思うことがある

  • 「君」の極端な二元論に異議がありそう

  • 学校にちょっと行きたくない

  • 青春なんて過ぎてほしい

  • 「君」のことを善人だと思っている

  • 「僕」に対し極端な二元論を展開する

  • 「僕」と一緒に電車通学している

  • スラックス派


中学生なのに電車通学ということは、私立中学に通っているのでしょう。
この2人はそれなりに裕福なんだと思います。


恐怖

小さいころは
あらゆるモノが自分より遥かに大きかったり、
動作する原理がさっぱり分からなかったりして、
「怖い」と思うものが非常に多かったです。
ちょっと大きな犬とか、電源のついていないモニターの真っ暗な画面とか、エスカレータとか。

小さいころの根源的な恐怖は ぎりぎり中学生くらいまで引きずるもので、
その影響で本作の「僕」はエスカレータも電車も怖がる子になりました。
中学生ともなると乗れはするんですけど、ちょっと唾を飲み込む感じですね。


地獄

今回のサムネはAIに生成してもらったイラストです。
「電車」「セーラー服の少女」「血の池地獄」をテーマにしています。

今回のサムネ

君は善人なのに蜘蛛から糸は垂れてこなかった


血の池地獄ではカンダタに蜘蛛の糸が差し伸べられたわけですが、
「この世は地獄よりもっとひどい」ということを言いたかったのです。



今回は以上です。

歌詞の全文は以下の通り。
是非読みながら聴いてみてくださいね。

歌詞

「きっとこの世界には2種類の人間だけがいて、
どっちとも言えない人なんて、存在しない」んだって。
きっと 君がスカートを履かなかった理由だって
きっと この学級にも
理解できない人がいるんだね

エスカレーターも電車も怖いのに
毎日乗らなきゃいけないし
満を持して今日こそ飛び込んでやろうかって
心の底のほうが薄ら笑っている

君は 絶対悪で 絶対損で
居てはいけないのかい
君は 絶対善で
不条理さえも受け入れているのかい
僕は 絶対悪で 絶対損で
罪深い人間かい
贖罪と称しては
今日も泣いて刃を当てているのかい

今朝も人身事故で電車のダイヤが乱れていた
線路を片付ける人も
きっとうんざりしきってるんだ

ちょっとだけ
行きたくないなあ

なんとか身体を捻じ込んだ
レールに乗って走っていった
君は善人なのに蜘蛛から糸は垂れてこなかった

君は 絶対悪で 絶対損で
居てはいけないのかい
君は 絶対善で
不条理さえも受け入れているのかい
卒業したらこの苦しみも
「いい思い出」に収まるのかい
青春なんて過ぎてほしいのに
どこにも出口が見つからない

ちょっとだけ行きたくないなあ 

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