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森田童子の話す声

森田童子の「インタビュー音源」というのを見つけ、聴いてみた。
彼女の歌声は今まで聴いたことがあったが、
話すところを見たり聞いたりする機会はなかった。
「どんな声で話すんだろう?」と、強く惹かれた。

インタビュアーの質問に、
曲を歌うような声で、彼女は答え始めた。
彼女の話す声は、歌う声と殆ど同じだった。
響きや抑揚も、彼女の歌そのままだった。


言葉遣いは丁寧で品がある。
可憐。小さな真珠みたいな声。
気がつくと、一番組聞き終わっていた。


別な番組も見つけ、聴いてみた。
先の番組よりフランクな雰囲気。
時々笑う!
笑う彼女は、とってもかわいらしかった。


インタビューの合間合間に彼女の曲がかかるのだが、
話す声に聴き入ってしまって、
だんだんどこからが曲で、どこからがインタビューなのか
分からなくなっていた。

サイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」が大好きで、
そこで描かれる「君とぼく」という関係性に影響を受けたことを
彼女は打ち明けてくれた。


他にも、スタジオライブの音源を見つけ、聴いてみた。
番組の最後の方に、アナウンサーからの質問コーナーがあったのだが、
それは彼女の音楽の本質からズレた内容だった。
質問の声は、乾いていて、ちょっと突き放したような響きを持っていた。

それを受けての彼女の声には、ちょっと揺れがあった。
拒絶するか応えるか、葛藤があったのかもしれない。
揺れを抱えつつも、彼女はなんとか誠実に答えようとしていた。
葛藤しつつも、応えようとしてしまうところに、
柔らかい危うさのようなものを感じた。

アナウンサーとアシスタントの声と、
森田童子の声の佇まいは、
全く違う質のものだった。

「見ているものが違う」ということが、声の違いにはっきりと表れている。
映像がないおかげで、かえって鮮明に浮き彫りになってしまっていた。


彼女の銀色の歌声は、決して弱々しいものではない。
曲によっては強く大きな響きで聴く者に向き合ってくれている。
ある時は細く柔らかく、ある時は太く荘厳に、
銀の声は鳴っていた。

彼女のことを知りたいと思って聴いてみた「話し声」だったが、
ただただ深く魅了されただけで、結局分からなかった。

聴いていると、私の深いところが震え、動き始める。
でも、その正体が何なのかは分からない。


森田童子は、2年前の2018年に亡くなっていた。
私は昨日、そのことを知ったのだった。



誰かの目にとまって、楽しんでいただければ幸い。 そして、もしもサポートをいただけたとしたら、天にも昇るような気持ちになるでしょう。