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387/1096 天然さんいらっしゃい2

吾輩は怠け者である。
しかしこの怠け者は、毎日何かを継続できる自分になりたいと夢見てしまった。夢見てしまったからには、そう夢見る己を幸せにしようと決めた。3年間・1096日の毎日投稿を自分に誓って、今日で387日。

(この毎日投稿では、まず初めに「怠け者が『毎日投稿』に挑戦する」にあたって、日々の心境の変化をレポートしています。そのあと点線の下から「本日の話題」が入っているので、レポートを読みたくないお方は、点線まで飛ばしておくんなましね。)

387日目、静かにひたひたと、400日目が近づいている。あと2週間を切ってしまったではないか!意外なほど楽しみだ。

予定どおりいけば、400日目は日本で迎える。帰国中のピンチを今回も越えられますように。越えられなかったら、一生分すねてやる!(笑)

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昨日の『天然さんいらっしゃい』を夢中で書いて急いでアップして、あとで自分で読んでみて、可笑しくて涙が出た。
 
常識の枠をはみ出る数々のエピソードに、わたしたちは既成概念を飛び出る経験をさせてもらえる。かつ、思い切り笑えて気持ちまで明るくなり、さらには生き方や真理についてまで考えさせられる。天然さんはこの世の宝なのかも知れない。

さて、今日は天然さんいらっしゃいの第2回目。わたしにとって殿堂入りとなっている天然さんエピソードのうちのひとつを綴ってみようと思う。

今回は、わたしの夫の妹のエピソードである。天然が本格的すぎて、手放しに笑えるものとはちょっと異質になってくるかも知れない。

わたしがイタリアに来てはじめてこの義妹に遭遇(と書くのが適切かと思う)したのは、義妹が義父の会社で仕事をしている最中であった。

仕事をしているとは言っても、義妹の理解のうえでの『仕事中』である。


義妹はその『仕事中』に、いつも音楽を聴きながらフェルトでなにかを作ったり、義弟と喧嘩をしたりしている。そうした業務のためか、本人が言うには彼女の仕事は大変忙しいのだそうだ。

わたしは彼女に、グーグル翻訳先生に教えてもらったイタリア語で、はじめまして・・・!と挨拶をした。義妹は快く迎えてくれ、明るく挨拶を返してくれた。わたしは、いい人そうで良かった・・!と思った。その場でわたしたちは、グーグル先生に頼りながら、日本のこと、イタリアのこと、それぞれの国や文化の違いなどについて楽しくお喋りをした。
 


その中でわたしは「日本に行ったことはありますか」と聞いた。

その義妹の返答が「ないない、イタリアがいちばんだから、他の国は好きじゃないの。興味はゼロよ。食べ物とか言語とか、なにもかも」というものだったこと、また、「わたしは自分の兄がとても嫌いなのよ、あなたも嫌いでしょう?」という発言があったことから、わたしはあの会話の途中ですでに、なんとなく、薄っすらと感じはじめていたのだ。

彼女から漂ってくる、本物の天然さんの香りを。

今日はそれが気のせいではなかったことを決定的にわたしに確信させた、そのあとの会話をご紹介したいと思う。

彼女の仕事内容が、この会社の事務であることについて話していたときであった。お金の動きや取引した物資の重量などを、書類を見てソフトに打ち込むという大変難しい仕事が主な業務だという説明のあと、彼女は悩ましげにこう言った。

「わたし数字がダメなの。とにかく苦手なのよ。日本人は数学が得意でしょう?イタリア人は全般的に数学がダメなのよ」

わたしは、こちらでは日本人は数学が得意だということになっているのに驚いた。わたしの知らないことであった。へぇ~と思いながら、わたしはそれならばと聞き返してみたのだ。「ではイタリア人は、なにが得意なの?」
 
義妹はそれに対して「あ!なんだと思う?この科目だけは、イタリア人が飛び抜けて世界でいちばんと言えるものがあるのよ」と言うのだ。

わたしはその質問を受けて、以前知人が「世界には多くの国のいろんな車メーカーがあるけれど、車のデザインだけは、どの国の人もどうしてもイタリア人には敵わないらしいよ」と言っていたことを思い出した。きっと芸術に優れているに違いない。しかしわたしはしばらく考えてみた。

音楽だろうか。いや、それはきっとドイツ人やオーストリア人が優れている気がするし・・・・科学だろうか?でもダ・ヴィンチが偉大だったからと言ってイタリア人全般が科学が得意だというのはあまりにも安易すぎる。

義妹は真面目な顔で待っている。そして「答えは簡単よ!ほら、わかるじゃない・・!」とにこやかに催促してくる。

いろいろと考えてみたけれど、やはりイタリアはオシャレの国。ブランド品のデザインが優れているのもあるからと、わたしはこう答えた。「アートかな?」

それに対する義妹の返答、その破壊力。忘れることができない。このときから9年経った今も、彼女の顔を見るたびにこのことを思い出す。
義妹はとても得意げに、そして優しくわたしを諭すように、こう言ったのだ。

「ああ、たしかにそれも得意ね。でもいちばんは、イタリア語よ!これはイタリア人が世界でトップなの。日本人も、日本語が世界一なんじゃない?」

「えっ」と思った。えっと。どうすれば。わたしは義妹を刮目して見た。それまで笑顔を作っていたわたしの表情筋が、エンストを起こしている。いろいろ止まっている。時間も止まっている。ピーーーと聴こえる。
しかしわたしは思った。いや、自分よどこへ行く。待て。まだだ。まだ確定してはならない。早まるな、落ち着け。そんなはずはない。ジョークだよ、ジョークなんだよ。だから探れ、探るんだ!その糸口を、彼女の目から・・・!

義妹がちょっと怪訝そうにこちらを見つめている。『これはたんなるじょーくなんだ、そうでないはずがないとおもうんだ』と、非常に緊迫した葛藤の中に投げ込まれながらもかろうじて常識の枠内に収まろうともがく、エンスト中のわたしの目を見つめている。

そこで義妹は、少しきまり悪そうに言ったのだ。「わたしはドイツ語もやったの。でもダメだった・・勉強がすごく辛かった。やっぱりイタリア人はイタリア語のほうが得意よ」

爽やかな満塁ホームラン。外角を巻き込む球筋の見えない場外ホームランであった。わたしはマウンドに取り残された。

義妹は本気であった。わたしは先ほどまで渦中にあった激しい葛藤から解放され、一瞬宙を見て我を取り戻し、表情筋のエンジンを静かにかけ直した。そして再度それを注意深くハンドルしながら、完全に偽物の笑顔の枠内に落ち着いて駐車して、こう答えた。
「イタリア語がそれだけできれば、もう十分よ!」

さすが我が天然夫の妹である。
彼女のなにかは、超合金でできている。だから決して正面衝突してはならないのだ。わたしはあれからも、うまくハンドルを切って、急回転する彼女の運転を邪魔しないようにしている。

また、彼女にあるとき、日本人が猫の鳴き方を真似るときは「ニャー」というのだと教えたことがあった。すると彼女は張り切って彼女の夫にそれを伝えたのだが、そのときにも虹の彼方を見せてくれたことがあった。

日本人は、猫の鳴き方を、ニャーという。
ただの、ちょっとした豆知識のようなものである。
しかしわたしはそのとき、彼女の真髄を見た。彼女は義弟に、


「ねえ、日本人は猫の鳴き方をニャーニャーって言うんだって!イタリア人はミャウミャウって言うわよね。でもそしたらそれは、日本の猫はニャーと鳴いて、イタリアの猫はミャウって鳴くからなのか、猫の鳴き方はどちらの国でも同じなのか、そこがわからないわよね~!」

と言ったのだ。

女よ。聞きなさい。汝は他国の動物をテレビなどでも見たことがないのか。そう思った。思ったが、言わなかった。

義弟は当然だが「猫はどの国でも同じ鳴き方だろ!なにを言ってんだ」と言った。わたしは義弟のその真面目な反論にも、いろいろいろいろ、億千万のいろいろいろいろを思った。すると彼女は非常に立腹しながら

「わからないじゃない!!日本に行って確かめてみなさいよ!!」
と反撃したのである・・・・・

わたしは静止した。静止するという技を、このときに会得した。その場にいるようで、もはやいかなる気配をも消した状態である。

彼らはそのあともどちらも意見を譲らず、結局は義弟が「もうええわ!!」と言っていなくなり、義妹は「困った人だわ・・・」と落ち込んで事態は収束した。わたしはそのときあまりに気配を消したままでいたため、肖像画になりかけたのだった。危ないところだった。

ちなみに、彼女は数字がダメだと言っていたが、それはどうやら本当のことのようだ。娘が彼女の家にいるとしょっちゅう聞かれるそうなのだ。

「ねえ、今午後2時だけど、2時間経つと何時?!」

時空を歪めかねない、ヘビー級の質問である。娘は、こうしたときも決して驚いた様子を見せずに「4時だよ」と答えてあげるのだとか。彼女もいつの間にか、大型免許を取っていたようだ。。。
 

わたしはある日この義妹と、神と宗教について語り合ったことがある。あの日わたしは、超合金の硬度というものを知ったのだった。

その日、わたしは義両親宅のホームパーティーで親類たちとともに義妹とも会った。歓談中に宗教の話題になると、義母はわたしを見て言った。

「あなたはどの宗教を信じているの」

義母は怒る一歩手前にあった。しかしそれはこのときに限ったことではない。義母はOSがデフォルトでどんな入力にも怒りソフトで処理をする仕様になっているのだ。いつも、ワンクリックかワンタップで怒りソフトが起動されようにきちんと設定されている。
 
わたしはその場にいる全員がカソリックであるこの状況で、誤ったクリックで義母の怒りソフトが起動しないように慎重になりながら、正直に答えた。
「わたしは仏教徒です」

しかし義母はあまり納得がいかなかったようで、

「仏教の神はブッダなの」と質問を重ねた。

「ブッダはなんと言ってるの」

まずい。ツッコミの方向性からして、これはあまりイージーなシチュエーションではないのだと思った。親類一同がこちらを見ている。大船カソリック号からこちらを見ている。わたしはひとりいかだで漂流し始めた。義母の目に敵意に似たなにかが灯っている。

ここでおかしなことを言うわけにはいかない・・・!しかし、この場で日本人を代表して、なんと答えればよいのだろう。わたしは空海を思った。空海になって、長崎でフランシスコ・ザビエルと握手するのだ・・!真ん中を答えろ、真ん中を・・・!

「ええと、ブッダは神ではありません・・仏教には神がいません。でも、仏教は善い行いから善い心が育つと教えてくれます」

どうだ・・!これは大丈夫なはずだ・・・!どことも喧嘩しないはずだ!
フランシスコ・ザビエルの頭を指差してハゲチャビンと言ったことにはならないはずだ・・!

すると義母は「ふん、それはいいわね」と言った。うわ、よかったあああああと思った。助かった!ここです!いかだに乗っています!救助してください!カソリック号に乗せてください!

しかしわたしは忘れてはならなかった。そこにはあの超合金義妹も同席しているということを。

義妹は言った。言ったと言うか、なにかのピンを抜いた。


「神がいないなんて!じゃあ、日本には神がいないのね、いなくても大丈夫なのね。じゃあイタリア人の言ってる神って、実はいなくても大丈夫なんじゃない?」

ポーン、コロコロコロ・・・・義母の前になにかが転がった。義母はそれを拾ってこちらを見た。わたしは気がついた。それはさきほど義妹がピンを抜いた、手榴弾である。

「あなた、神はいないと言うの?」

まずいんでねえかな。いないっていったらとってもまずい気が。と思った。しかしわたしは一神教の神を信じているわけではない。お地蔵さんの頭に立ちションはできない。我は仏教徒なり、さらばカソリック号よ・・!

「仏教では神がいるとは考えないんですよ・・・昔から日本人は、神さまはすべてに宿っていると考えているんです」

親類たちはなんともいい難い表情を浮かべた。へ、へえ~・・みたいな複雑な様子。波は荒れはじめている。今いかだに乗るのは危険だ。しかしもしかしたら、この概念だって受け入れられるかも知れないじゃないか・・・!

すると義母はそこで、意外な救いの手を差し伸べたのだ。
「じゃあ神はいるのね」

わたしはカソリック号に乗り込みながら「はい・・!」と言いかけた。みなさん、また楽しく食事をしましょう、さあさあゆるやかな音楽とともに・・!

しかしこれで二度目だが、わたしは忘れてはならなかったのだよ、ここには義妹が居るということを。

義妹はイタリア人だからなのか、流暢なイタリア語でそれを遮って無邪気にもこう言った。

「じゃあ戦争の場にも神さまがいるの?あれは神さまがやってるっていうの??」

やってくれおった。わたしは、いや、あの、それは!!と思った。それはそうなんだがそれを今君たちにどう説明すればいいんだ!!

わたしはザビエルをハゲチャビンだと言ったら空海はツルッパゲじゃねえかと言われた気がした。わたしはまたもやいかだに転げ落ち、義妹はつないでいたロープをギコギコと切っている。

わたしは、ここはもう「彼らには理解不能の文化で育った孤高の日本人」を装うしかないと思った。お地蔵さんにおしっこはかけられないし、かといって超合金義妹と戦っても向かえば向かうほど不思議な錬金術に翻弄されるだろう。

捨てるな、拗ねるな、理解されずともベストを尽くせ・・・!
穏やかに答えるのだ、こういうときこそ賢者になるのだ・・・!
 
そこでわたしは「どんなところにも、そこが平安になることを祈る神はいる、という意味で・・」と答えた。

うまいぞ!ここに山田くんがいたらこの切り返しに義母の目を盗んでこっそりと座布団を運んでくれるのではないだろうか。わたしは義母の表情を見た。すると、義母はそれを良い話だと思ってくれているようだった。
OH神よ・・感謝いたします・・・危なかった・・・嘘をつかず、かつ誰の気も悪くせずに済んでよかった・・・!ああ、晴れ晴れとした気分だ。俺は空海・・今からザビエルと仲良く自撮りするところなんだ・・・

しかしこれで何回目だろうか、わたしは忘れてはならないのだよ馬鹿者め、そこに義妹が居るということをね!!!

義妹は彼女の夫にこう説明していた。
「ねえ聞いて!日本ではなんでも神さまになれるの。日本に行けばわたしも神なのよ!」

それがワンクリックだった。義母はわたしを睨みつけてこう言った。
「あなたたちのことは理解できないわ」

かくして座布団は取り上げられいかだは転覆し、わたしはそのパーティーのあいだ、とっても静かにすごしましたとさ。

天然さん、強し・・・!!

この『天然さんいらっしゃい』、こうして書いていると、この環境にあるかぎり無限にエピソードを提供できる気がしてくる。

次回は、我が妹を登場させたいと思う。これまでさまざまな天然さんに囲まれてきたわたしであるが、わたしの感性ではわたしの妹が最も優れた天然エピソードのクリエイターである。

長くなったので、これはまた『天然さんいらっしゃい3』で!
それではまた、明日!

【数限定・個人セッションのお知らせ】

少数ですが10月末からの個人セッションを受け付けています。

ご相談内容、話したいテーマなどはご自由に。

恋や夫婦間の悩み、秘行のこと、その他なんでもOKです。


90分間、対面でのセッションです。
(怖くないです、わたくしめは優しくひょうきんな中年の女性です(笑))

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【東京・トークライブのお知らせ!!】

11月に、なんとあの「いばや通信」の
坂爪圭吾さんとトークライブを行います!!

テーマは「ファンタジーの魔法の使いかた」。

現代の「禅を極めた一休さん」のような
皆さんご存知の「奇跡の存在」坂爪さんと、

この世界に生きる不思議や面白み、過去にも未来にも囚われないで今を生きることについて、それから誰もが使える「ファンタジーの魔法」の使い方について、105分間を語り尽くします!!

人は本当に魔法が使えるのかどうか。
使えるとしたら、どうやって・・?
そんな楽しいトークにしたいと思います。

どうかみなさん遊びに来てね。

真面目な、変な、常識外れな、不思議な、変人なご質問も遠慮なくしてくださいね〜❣️

この珍イベントの場で、みなさまにお会いできるのを楽しみにしてます!!

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