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デジタル庁の「リセット」に従った無残な「三鷹市個人情報保護条例・全部改正案」/個人情報補保護法から使用法に変質

「改正後」欄に「※法第〇〇条(XXXX)」と記述されているのは、自治体で余計なことを規定するなということを意味します。

 個人情報の保護は、1970年代半ば以降、地方自治体がリーダーシップを発揮して、国に先駆けて個人情報保護条例を制定して、個人情報を保護し、憲法が保障する基本的人権を守ってきた。

 三鷹市個人情報保護条例は、1987年12月25に制定された。1986年、東京多摩地区では最初に制定した国立市に次いで2番目である。三鷹市個人情報保護条例は、その目的を条例第1条で次の通り定めている。


第1条 この条例は、個人情報の開示請求等の権利を保障するとともに、個人情報の適正な取扱いについて必要な措置を講ずることにより、個人情報を保護し、もって市民の基本的人権を守ることを目的とする。きわめて優れた条例であり、三鷹市の誇りである。


 ところが、2021年3月19日、衆議院内閣委員会において、平井卓也デジタル改革担当大臣が、現行の地方公共団体の条例の規定は、基本的には改正法の施行までに一旦リセットしていただくことになり、独自の保護措置として存置する規定等については改めて規定していただくことなる旨の答弁をした。


 個人情報保護条例が「リセット」され自治体の個人情報保護条例が国に一元化・標準化されることになると、なくなる原則が二つある。一つは、本人からの直接収取原則、二つは、思想・信条や人種、社会的身分、犯罪歴などセンシティブ情報の原則収集禁止である。


 三鷹市個人情報保護条例がどうなるかにとどまらず、地方自治の観点からも大いに疑問や懸念がある。国の「改正個人情報保護法」は、個人情報保護法ではなく、個人情報利活用法というべきものである。

 国から自治体には「技術的助言」が行われ、法的拘束力のある指示等ではないと国は位置付けているが、国の個人情報保護委員会が示す個人情報の保護に関する法律についての事務対応ガイドラインの中でで、「しなければならない」、「してはならない」及び「許容されない」と記述している。

 「事務対応ガイドライン」は、地方自治法第245条の4に規定された技術的な助言であるにもかかわらず、「しなければならない」、「してはならない及び許容されない」としていることは、国による統制であり、「改正個人情報保護法」は、地方分権及び個人情報保護の後退につながる恐れがあり、地方自主権の侵害でもある。ガイドラインに従わなかった場合、法違反と判断される可能性があると書かれている。(2022年6月議会での嶋﨑英治の一般質問「『改正個人情報保護法』と地方分権、地方自主権について」より)


地方分権一括法の制定に努力された片山善博さん(早稲田大学 教授。 鳥取県知事 (2期)、 総務大臣歴任)は、無念の思いでいっぱいであろうと思う。
 「幸せは歩いてこない だから歩いてゆくんだね…」「地方分権は歩いてこない だからみんなで使うんだね…」である。

野村羊子委員の反対討論 2022/12/08総務委員会

議案第52号 三鷹市個人情報保護条例


議案第53号 三鷹市個人情報保護条例の全部改正に伴う関係条例の整備に関する条例


以上2件は関連がありますので一括して討論します。


 


この議案は、国の個人情報保護法「改正」を受け、「三鷹市個人情報保護条例」を全部改正するものと、それに伴う関係条例の整備に関するものである。


改正の根拠とされた法は、事業者によるデータ利活用を優先し、権利としての個人情報保護の後退、地方自治・条例制定権否定につながるものである。

 2021年2月、参議院で、平井卓也デジタル担当大臣(当時)が、「個人情報保護条例はリセットする」と発言したことに個人情報保護法「改正」の狙いが如実に現れている。


すなわち、個人情報保護法「改正」そのものが、自治体が先駆的に守ってきた個人情報保護、プライバシー権、自己情報コントロール権など個人の基本的人権の尊重が不十分な状態であり、データの利活用、ひいてはデジタル監視社会へと踏み出すものなのである。


三鷹市個人情報保護条例は、国の個人情報保護法の全面施行(2005年)より18年も前の1987年12月25日に制定された優れた条例である。地方における個人情報保護行政においては先駆的な役割を果たしてきている。そのような中での、国の「改正」法共通ルールとして、ガイドライン等に縛られる中での条例「改正」は、個人の権利の保障の観点から、データの利活用の観点への転換となるもので、地方自治が侵されるものとなっていると言わざるを得ない。


改めて、今回の法「改正、それに伴って行われる本条例「全部改正」の問題点を指摘する。


1 個人情報の本人からの直接収集の原則がない。


2 センシティブ情報の収集禁止の原則がない。


3 市民の請求権を制限する「権利を濫用することなく」との条文の追加。


4 「個人情報」を「生存する個人」に関する情報と限定し、保護すべき権益を制限した


5 目的外利用・外部提供の原則禁止はされているが、「相当な理由」があれば、行政の事

 務事業遂行上必要な場合に利用・提供が可能


6 外部委託、外部提供、目的外利用等の判断は行政の長が行い、第3者が関わらない。


7 情報開示期間を請求から決定までの期間を、現行の15日以内を30日としたこと。


 「死者の個人情報」について要領を策定し、遺族等の利用を可能としたが、条例策定によ

 って死者の情報そのもの保護等はうたわなかった。



 「権利の濫用」については、判断基準としてガイドラインが示されたが、基本指針は当然なことを明記したのみ。クレーム事例が示されているが、これは情報公開に問題ではなく、クレーム対応に組織としてどう向き合い、当該職員を守るかの、問題である。このような別事件の案件を、市民の知る権利情報公開の権利を制限することに使ってはならない。


 個人情報保護委員会は名称変更して残置するが、事前に意見を述べることもできないのでは、行政裁量の民主的統制を否定するものである。


国による条例画一化は、地方自治・自治体主権、条例制定権の否定の重大問題である。地方公共団体は地域の特性・実情に応じて必要な個人情報保護の施策を実施することが義務付けられていることから、国が制約することは越権行為である。何回かの協議の末、名称を残したことなどは一定の評価はするが、国の統制に屈服することは、今後他の施策でも自治体独自の事業実施が危うくなることを懸念する。基本的人権としての知る権利、個人情報の開示請求権の保障を求め、改めて国の地方自治・地方分権の破壊に抗議の意を表明し、この条例案に反対する。


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