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エンドユーザーと社会環境全体どこまで考えるべきなのか

背景

消費者なりサービスを使うユーザーの体験価値を上げるために日夜UXデザイナー含めて多くの人々が知恵を出しあう、非常に良い時代になってきている。かくいう私もUX(User Experience) 業界に長年従事してきたのだが、特にここ最近思うことがある。

「弊社はユーザー向けサービスなので社会やその周囲の環境への影響には関知しません。だって弊社はそこまでコントロールする義務ありませんから(きっぱり)」

わりとこういうサービスが増えてきた。それでいいのか?

事例:ポケモンGo に見る社会影響

ポケモンGoは、現実世界にポケモンの世界を実現できるなど非常に素晴らしい体験を創ったことは間違いない。例え今、ユーザーが減ったとしても、一度はインストールして皆楽しんだのではないだろうか。私ももちろんその一人である。

さて御存じのように、ポケモンGo によって良いことばかりではなく悪い事も生まれてしまった。

・不法侵入、夜間徘徊による騒音やゴミ問題
・ながらスマフォによる事故

幸か不幸かポケモンジムになってしまった店や施設が「来ないでください」という看板やSNSでお願いする程それは一時期深刻化した。

ここでのポイントとして、ポケモンGo を開発しサービスしている Niantic Inc. は、表向きには「ルールやモラルを守りましょう」とはいうものの、あとはユーザー任せで、会社としては基本そこは責任持てませんので、というスタンスであること。

歩く時は画面は強制オフなどソフトやシステムでできることもあるにしろ、それはユーザー体験やユーザビリティを損なうことがあるのでやらないのだろうと推測する。

事例:Uber Eats

新型コロナウィルスによる外出自粛で注目がさらに集まっているサービス「Uber Eats」。スマフォでちょちょっと注文すれば、近所の名店などの食べ物をあっという間に自宅に届けてくれるお手軽さ。金額もそこそこなので、この春に体験した、活用した人も多いのではないだろうか。

しかしサービスが流行ってくることで出て来たのが配達員のマナー・モラル問題。都市部では、多くが自転車にのって配達しているのだけれど、信号無視など危険運転をしている配達員が多い。私も何度も遭遇して、ドライブレコーダーの記録をクレームとして出そうとおもったことがある。

聞くところによると、Uber Eats としては、配達員との関係は、配達の業務委託であって、配達上の責任は彼ら配達員(個人事業主)にある、と言うらしい。背中に「Uber Eats」とブランド名が大きくかかれたバッグで運んでいるのに、だ。

そんな企業姿勢に私は正直落胆して、Uber Eats を今は使っていない。知人も同じ理由で使わないと言っていた。なんとも頑固な人間と思われるかもしれない。

超大手企業ではそうはいかない

私は大手電機メーカーに長年勤務していたが、ユーザーだけよければ良い、という考えはことごとく潰された思い出がある。ポケモンGo とソックリな、ARと地図情報をつかったゲームを企画したことがあったが、上司らに報告した時、

「不法侵入したり、ながらPSP/PSP Vitaしたりする人が出るはず。それをどうするのか?犯罪や事故を助長する会社っていわれたら、会社のブランドは丸つぶれになるぞ」

そう言われた。まさにポケモンGo の問題は当時既に誰もがお見通しで、そのリスクをしょってまではサービスインしなかったのだ(もちろん、それ以外にも没になった理由はあるのだけど)。

世界のどこにいっても社名を言うと皆知ってるといってくれる、そんなビッグカンパニーになると、こういう妙な重荷(足枷)がのしかかってくるのだ。それは大企業だからこそ「儲け」だけでなく地球上で活動する「使命」や「ブランド」が重要だ、ということでもある。

もちろん、それによって、やれることがやれない、遅い、といった日本企業の良くないところにも繋がっているのも否めない。

まとめ

エンドユーザーのこと考えるので精いっぱいだし、それより競合他社にまけたら事業そのもの潰れるんだから、社会環境とか他人とか考えてる余裕などない、というは資本主義としても正しいだろう。

ただ、なんとかPay の乱立をみていると、自分ところだけ良ければいいの?って気にはなるし、そういう企業のわがままに消費者も段々気がつき始めてるのではないだろうか。

私の今回のお題は、多くのサービスや企業からは否定されるだろう。

だから日本企業はGAFAになれないのだ、遅いのだ、失敗を恐れすぎる、と。それについては私も同意する。失敗してもマーケットインしてから、どんどんフォローする方法もあると思う。

ただ一方で、私がコンサルしている大企業では、やはり、まだまだブランドや社会環境における影響や活動について非常にナーバスである。ブランドは一度傷がついて落ちると、なかなかその信用を回復するのが大変だと彼等はちゃんと理解しているからだ。

エンドユーザー中心のUXよりも、社会環境やブランド価値を中心とした BX(Brand Experience) をまずやるべき、という極論ではない。

おそらく、サービスの規模やその企業の理念などからUX優先、BX優先、どっちも、など考えて行くことが重要だと今は思っている。

個人としてはせっかく良いサービスが日々出てくるのだけれど、自分のユーザーだけ、というレベルで終わってしまっていることに少し残念(個人の主観)に思っているのである。

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