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ファッションの何に疲れたのか?

私は『ファッションに疲れた』とプロフィールに書いているけれど、

一体ファッションの何に疲れたのか?

正直、自分でもよくわかっていなかった(曖昧にしてきた)けれど、考えてみると、まず最初に浮かぶのは、

『トレンドを追うことに疲れた』ということ。


そこで、そもそも、トレンドって誰が決めるの?

『アパレルブランドのデザイナー=ファッションのトレンドを決める人』だと思われている。

でも実際にはトレンドなんて決めていない。

①カラー:世界の色彩情報団体が集まったインターカラー(国際流行色委員会)が決めたものを、JAFCA(一般社団法人 日本流行色協会)が日本に合わせて決めていく。
②素材:糸や素材の国際的な展覧会があり、そこで、これが流行りますよーと展示される。
③世界の有名メゾン(ブランド)がコレクションを発表。(パリ・ミラノ・ニューヨーク...などなど)
④インターネットや雑誌でコレクション情報がトレンドとして発信される。→SNS,インフルエンサー含む

というのが、ファッショントレンドのかなりざっくりした流れであると私は認識している。


じゃあ、日本の国内ブランドのファッションデザイナーは何をしているのか?

①~④の流れを見ながら、自分の属するブランドのお客さん(顧客)を想像する。

顧客にマッチするトレンドもあれば、マッチしないトレンドもある。その場合は、トレンドのエッセンスを取り入れながら顧客に合うようにアレンジを加える。

例えば、30代中盤のOLをメインターゲットとしているブランドが『エスニック』のトレンドを取り入れる場合。

エスニックは基本的にオフィスには不向きな柄なので、顧客のカジュアルシーンを想定。店舗では、オフィス向けの洋服と分けて陳列。(今年は例外だけど)夏だと、リゾートイメージのアイテムを集めて、そこにエスニックを一つの要素として入れる。顧客の嗜好から、個性的になりすぎないように、素材・色・デザインは極力シンプルに。手持ち服ともコーディネートしやすいように…などなど

を、考えてデザインに落とし込んでいく。

取り入れ方、(そもそも、そのトレンドをブランドに取り入れるかどうかも含めて)打ち出し方はブランドによって異なる。


でも、最近って、どこでも同じような服売ってない!?

と、思われる方もいらっしゃると思う。

私の考えでしかないのだが…

『お客さんがブランドを追う』のではなく、『ブランドがお客さん(売上)を追う』構造の逆転がその原因なのではないだろうか?

トレンドの①~④+日本の市場(売れているもの)を、アパレルブランドが追い始めているから、同じような服があちらこちらで売っているのだと思う。(特に、一万円以内のお洋服)

オンラインショッピングが主流となり、人気・売上ランキングが見れるようになったことで、他社のヒット商品やマーケットの興味関心が簡単に可視化できるようになったこと。(自社商品だけではなく、取り扱いブランドが多岐にわたるZOZOTOWNなどは一目瞭然)

それと、ファッションビジネスをしている会社向けに、トレンド調査・分析・提案までしてくれる会社の存在。(昨年の今頃に売れていたものまでリマインドしてくれる。)

この2つによって、トレンドってこれだよね!?という確認作業の為のお洋服が並び、前年踏襲、もしくは後出しじゃんけんで、ある程度『売れる』と予想のつくものが正解となった。

ビジネスなので、当たり前!!売れなきゃビジネスとして成り立たない!!

…そう。そこがアパレルビジネスの難しいところ。


『これ売れてまっせ!これ売れまっせ!』を見てしまうと、目先の利益ばかり追い求めてしまう(売れることを最重要事項としてデザインする)ので、

与えられたトレンド(お金になるデザイン)を追って追って追って。

ひたすら追い続けることになる。

なんだか、どこかで見たようなお洋服ばかりがお店やオンラインサイトに並ぶ。

アパレルらしい『とんがった』部分も、その『ブランドらしさ』も、ひどく曖昧だ。だって、作っている側の人間が重要視しているのはそこじゃないから。


…もはや、トレンドがよくわからなくなってきた。そして、良い悪いを言いたいわけじゃない。


私は、ビジネスとして成功させつつ、お客さんに新しいときめきを持って帰ってもらう方法はないのか!?と、考えていた。

私は、『売る』と『新しいデザイン提案』のバランスが大切だと考えていたが、そのバランスは人によって違うので、理解しあうことが難しかった。

ブランドの特性(店舗数・売上規模・ブランドイメージなど)もあったと思う。上司との考え方やセンスの違いも大きかった。


私の知らない誰かが決めた『正解』を追い続け、

そして、それが『私のクリエイション』のゴールであることに、私は疲れてしまった。

『私がありたいデザイナーの姿』と『職業人として求められるデザイナーの姿』が乖離していくことに耐え切れなかった。


私がファッションに疲れた理由は、私が休職し、『ファッションデザイナー』を辞めることに繋がることなので、モヤモヤして、そんな自分が情けなく思えて、なかなか言語化できなかった。

本当は、もっとドロドロして、真っ黒な感情もたくさんあって、

こうなったのは、○○のせいだ!と思っていたこともあった。

休職する前の私は、他人軸で生きている状態だったと、今は思う。

ファッションと他人軸を切り離すことはおそらく出来ないし、そこをどう考えていくかは、それでもファッション業界でクリエイターとして生きていきたい私の課題。

でも、もう他人軸では生きたくない。


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