マガジンのカバー画像

ショート小説集:みじ語り

5
ショートショート、短編の物語集です。 ジャンルは、ホラー、SF、ミステリー、ファンタジーなどです。 あなたの暇つぶしの傍らに寄り添えますように。 ※参加企画 ・毎週ショートショ…
運営しているクリエイター

#毎週ショートショートnote

神様時計

神様時計

「ちょっと聞いてくれよ」
いつも面倒臭い白川くんが、いつも以上に高いテンションで絡んでくる。
「この前、東京バンズ横の路地で神様に会ったんだよ」
既に嫌な予感しかしないが、とりあえず聞いてみる。
「神様ってどんな格好してんだ?」
「髪も髭もボウボウで、ボロボロの服着て、浮浪者みたいな格好だな。
 あ、でも杖持ってたから、あれは神様だよ」
「それ、浮浪者だろ」
こいつは何をもって神様と認識してんだ。

もっとみる
ぴえん充電

ぴえん充電

最愛の人と結ばれた日、友人達と夢を叶えた日、娘が生まれた日、両親が亡くなった日、娘が嫁に行った日、妻が旅立った日…。

「もう止めてくれ」
ご主人様が私に『ぴえん充電装置』を止めるように言った。
ぴえん充電装置は心を揺さぶられた日を追体験し、感情を取り戻す装置だ。
「充電器がいつまでも使えないのと同じで、この装置を使っても、涙はおろか心を感じることすら無くなってしまった」
ご主人様は寂しげな目で私

もっとみる
黒い手袋の女性【毎週ショートショート:読書と石鹸】

黒い手袋の女性【毎週ショートショート:読書と石鹸】

私のバイト先の喫茶店に常連の女性客が来た。
以前はご主人と一緒に来ていたが、ここ半年くらいは1人で来ている。
また、前はよく詩集などを読んでいたが、最近は桐野夏生の『OUT』や京極夏彦の『魍魎の匣』、島田荘司の『占星術殺人事件』などの推理小説に仕切りにペンで線を引きながら読書をしている。
そして、手には黒い手袋。
女性は席に本と鞄を置くや否や、詩集がどうのと言いながら、トイレに駆け込んだ。
これも

もっとみる