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【散文詩】シングル・ジャングル・ライフ

 観葉植物がどんどん茂って、絵本の『かいじゅうたちのいるところ』のジャングルみたいになった。リビングルームにこの世のものとは思えないほど美味しい果物が生って、不思議な色の鳥たちもやって来た。マーティン・デニーの『ジャングル・ドラムズ』を聴きながら冷えたスプマンテを飲む。遅い午後、女一人のジャングル・ライフ。ここは高層マンションの20階だから、危険な野生動物も毒虫だって来はしない。いいとこ取りのシングル・ジャングル・ライフ。日が暮れて涼しくなって、木々の間から三日月が見えた。暗がりへしみ出すがらんどうな心。スプマンテをキャンティ・クラシコに変えた頃、ガサガサ、ガサガサ、ジャングルかき分け近づく音。続いて遠吠え。ここは20階よ。ひょっとして、かいじゅう?まさかね。絵本のマックスみたいに私は逃げる船を持っていないの。ああ、ここは20階だから船があってもどうしようもないわ。それにマックスみたいに帰る場所もありはしない。シングル・ジャングル・ライフ。あなた誰?そうだ、よかったら私と一晩中〈かいじゅう踊り〉を踊らない?

**マーティン・デニー『ジャングル・ドラムズ』: https://youtu.be/VLvVbqSHbfI

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