日本語のために

やっと届いた

月報に柴田元幸が引く翻訳論を読む。森田思軒の文章だ

故に時ありては、彼の名詞を以て我の動詞となし、彼の形容詞を以て我の副詞となし(略)。然れども畢竟犠牲を宰(ころ)すは犠牲よりも尊き神を敬するためなり。神なき祭壇には犠牲を献ぜず(略)。

「翻訳王」と呼ばれた森田はこの書簡を『マクベス』を翻訳した坪内逍遥に宛てた

うーむ、と唸るほかない

この本の第十章に氷川玲二の文章が収められている。英文学者として『ユリシーズ』を丸谷才一、高松雄一と共訳した。その後スペインに渡ってヒッピーとして暮らした

この全集の最終巻となる本である。配本はまだ続くが。その最後に収められたのが中井久夫の「私の日本語雑記」という表題が人をくった文章。中井の創作の秘密を通して日本語の「あのー」の活躍を語る。なんという文章だ。「あのー」は決して書かれることはない。書き言葉で〈「あのー」はどこに行ったのだろうか〉と中井は書く。彼の答えは〈何くわぬ顔をして「読点」に化けているのではないかと私は思う〉というものだ。人をくったようでいて、卓見ではないか

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