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[書評]『東京に北斗七星の結界を張らせていただきました』

保江邦夫『東京に北斗七星の結界を張らせていただきました』(青林堂、2021)

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「神に感謝」が180度ひっくり返る驚き

この書には驚きが3つある。

1) 昭和天皇の従兄弟の数奇な運命
2) 北斗七星の結界の張り直し
3) 神の愛の真実

どの驚きも大きいが、神学をやる人には3番めのそれが腰を抜かすほど大きいだろう。日頃、「神に感謝」の言葉を唱えるような人には、ぜひ一読を奨めたいような気もするが、逆に読まないほうがよいかもしれない。評者は読んでよかった。3つの内容は、知る限りでは活字になったのは初めて。

昭和天皇の従兄弟の話は、2020年秋の某有料動画で初めて公開された。まさか活字になるとは思わなかったが、2021年はそれだけディスクロージャーが進む年なのだろう。

マカーサーと昭和天皇の間で決められたことではあるが、本書に書かれている説明は真相の何分の一かではないか。

この方面の前著『語ることが許されない 封じられた日本史』の場合もそうだったが、書けることは真相の十分の一もないという。

それはなぜかと言えば、これらの事柄は大昔の、今と関りのない歴史的出来事として追いやれるものでなく、現在にも深い影響を与えているからだ。だから、真相をぜんぶ書けない。

そうなると、読者に求められることは何だろう。書かれていることだけに満足して、納得することか。それも精神の安定のためにはいいかもしれないが、割り切れないものが残る人は、想像力を働かせて、自分なりの絵図を描くのもよいだろう。

結界の張り直しが必要になったのは、時代が変わったからだ。

正確には、2020年12月21日 (冬至の日) を境に、女神の鳳凰の時代、「風の時代」に入った。それまでは、男神の龍神の時代、「土の時代」だった。天津神の時代から国津神の時代に入った。

そこで、古い龍の結界から、新しい鳳凰の結界に張り替えるお役目が著者に回ってきたわけだ。

張り替えの経緯は詳述されているが、ふしぎなことに、北斗七星と東京の七箇所との対応図がない。おそらく、わざと図を載せなかったのだろう。

ミサ聖祭を結ぶ言葉は〈神に感謝〉だ。評者の場合は、いつもアイルランド語で唱える (buíochas le Dia)。

中学の授業で神とは何かを先生が問うた。宗教の時間か、あるいは音楽の時間だったかもしれない。今でも鮮明に覚えているが、ある級友が立上がり、「神は愛です」と答えた。クラスじゅうが静かにどよめいた。

その簡明な言明に、人間の側から応える言葉として〈神に感謝〉がある——と、殆どの人は思っているだろうし、評者も例外ではなかった。

ところが、本書では、「てにをは」が違う。〈神に感謝〉ではなく、〈神の感謝〉なのだ。人間が神に対して感謝するのではなく、神「が」感謝するのだという。

このような観念は聞いたこともないが、著者は伯家神道の神官として神事を行ったときに体感したと述べる。奇想天外な考えにも思えるが、湯川秀樹の弟子としての物理学者の立場で著者が唱える素領域理論にも矛盾しないようだ。

そういえば、素領域理論の黎明期に、すぐれた学者が似たようなことを言っていた。案外、形而上学的な領域を物理学的に考えると、神学的な結論が導きだされるのかもしれない。

#書評 #保江邦夫 #結界

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