[映画] パゾリーニの詩学
Il Vangelo secondo Matteo (1964)
「奇跡の丘」(伊・仏、1964)
監督・脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
Enrique Irazoqui: Cristo
Margherita Caruso: Maria da giovane
Susanna Pasolini: Maria anziana
Marcello Morante: Giuseppe
Mario Socrate: Giovanni Battista
無神論者が作った映画がこれほどホーリーであるとは。
その理由をすこし考えてみた。詳しくはいづれ書くとして、今はブレインストーミング。
聖書(イタリア語)の引用が音楽的
はっきり言えば、詩の朗読のようにかっこいい。
ところが、これは演じている俳優ではなくて、別の人が読んでいる。例えば、キリストの声は、Enrico Maria Salerno だ。
この映画のせりふは全部、聖書からの引用だ。それがこれだけかっこいいと、それだけで十分見応えがある。137分があっという間だ。
ルーツミュージックとの親和性
Odetta, "Sometimes I Feel Like a Motherless Child" も効果的だが、なんといっても Blind Willie Johnson, "Dark Was the Night, Cold Was the Ground" が圧倒的(下の動画)。この曲が流れるところは映画のハイライトが多い。
あまりにもルーツミュージックがかっこよく宗教ドラマにはまるので、ボブ・ディランの音楽を思い出してしまった。
*
映画の原語タイトル Il Vangelo secondo Matteo は「マテオ(マタイ)による福音」の意。新約聖書の四福音書をたまたまホテルで通読したパゾリーニが、マタイで行こうと決めた。
彼の映画製作にあたっての考え方は、キリストの生涯の聖化(consecration)であり、再神話化(re-mythologization)だった。
パゾリーニは無神論者、同性愛者、マルクシストとして知られる。そんな彼がいったいなぜ?
これは簡単には解けないだろうけれど、ぼくは上に挙げた二点が大変気になっっている。どちらも音に関わる。
*
個人的なことをいうと、2018年になってから、映画は14本ほど見たけれど、5つ星をつけたのはこの映画だけだ。
監督はリアルな映画を目指していないといいながら、この映画のリアルさは、ぼくにとっては言語を絶するほどの衝撃がある。
*
2015年にヴァティカンの新聞 'L'Osservatore Romano' が、本作をキリストについてこれまで作られた中でベストの映画と評した。この新聞は日本からも購読できるが、ヴァティカンの準公式新聞として大変おもしろい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?