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Book/Film Reviews

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書評集
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#絵本

[書評] If Not for You

Bob Dylan, David Walker (pictures), 𝐼𝑓 𝑁𝑜𝑡 𝑓𝑜𝑟 𝑌𝑜𝑢 (Atheneum Books, 2016) ボブ・ディランの有名な歌が絵本になった。ディランの歌を絵本にしたのは 'Forever Young' (2008) という先例もある。 まず、ディランの歌を知る人は当然の疑問がわくだろう。 ・ディランの歌を絵本にできるのか ・ディランの歌が子供に分るのか どちらも難問だ。本書が出た2016年にはボブ・ディランはノーベル文学

[書評]Goodnight Moon

Margaret Wise Brown, 𝐺𝑜𝑜𝑑𝑛𝑖𝑔ℎ𝑡 𝑀𝑜𝑜𝑛 (Harper Collins, 1947) オッフェンバックの「天国と地獄」を取上げた音楽番組で踊るカンカン娘の映像を観ていて、マーガレト・ワイズ・ブラウンのことをふと思い出した。わたしにもできるわよ、と足をあげた拍子に血栓が動いて亡くなった。42歳の若さだった。 ブラウンはルーシ・スプレーグ・ミチェルの「ヒア・アンド・ナウ」理論に基づいて創作を始めた。プロットよりもリズムを重んじる作風はガートルー

[絵本]ゾーヴァのグミベア

ドイツのミヒャエル・ゾーヴァの絵を3冊の絵本で愉しんだ。 1. ちいさなちいさな王様 2. 思いがけない贈り物 3. クマの名前は日曜日 ちいさなちいさな王様 アクセル・ハッケ作(講談社、1996)。内容にふかみがあり絵が魅力を高めている。「大人のための童話」と称されるが確かに大人でも読みごたえがある。翻訳もいい。読んだあとにグミベアの存在感が増す(?)かもしれない。クマの形のグミだが王様の好物なのだ。(下記写真 source) この王様、いまはちいさいが元は大きかっ

うーん、ちょっとちゃう(長谷川義史論)

ジョン・クラッセンの2つの絵本『どこ いったん』(クレヨンハウス、2011)と『ちがうねん』(クレヨンハウス、2012)は大阪は藤井寺出身の絵本作家・長谷川義史が大阪弁で翻訳している。それについての(ふ)まじめな考察。 『どこ いったん』これはネッシーかと思わせる頭頂部のフォルムとまあるいお腹のギャップがはなはだしく愉快な絵本。そのまるいお腹は本の半ばに至るまで出現しないので気づかれにくい。 ミステリとしては「犯人探し」(whodunit)タイプだ。定石として犯人は読者の