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23、グルカゴンの話

今回はインスリンと正反対の働きを持つ、それでいて同じ膵臓から内分泌される、グルカゴンというホルモンについて書きます。何が正反対かというと、血糖値を上げる働きがあるという点が正反対なんです。

なぜ血糖値を上げる必要があるかというと、食の入手が昔は不安定な状況でしたので、いろいろと飢餓状態になったりして大変だったからのようですね。

人類の長い歴史の中で食が安定して供給できるようになったのはごく最近のことです。それまでは食は自ら採りに行かなければなりませんでしたが、季節やタイミングによっては必ずしも入手できるとは限らなかったようです。

狩りに行っても収穫なしで帰ってくることもあったでしょうから、飢餓状態になることも珍しくは無かったでしょう。それでも次の狩りなどに出かけるためには、身体を動かして出かけなければばなりません。そのためには血糖値を上げなければなりません。そのためでしょうか、血糖値を上げるホルモンは複数存在しています。

その一方で血糖値を下げなければならない時は、おそらく食事の後くらいでしょう。だから血糖値を下げるホルモンは、インスリンしか不要だったんじゃないでしょうか。そんな時代なら、糖尿病は無かったかもしれません、分かりませんが。

血糖値を上げる他のホルモンは、心臓を動かしたり体温を作ったりと、必要な代謝を行なうだけでもエネルギーとして血糖を使いますので、そのための血糖値の上昇があるのは分かります。

グルカゴンはそんな人の体が低血糖状態になるのを防ぐ意味で、食事の毎に蓄えられたグリコーゲンを分解して血糖値を上げるように肝臓に働きかける役目を担っているんです。

グルカゴンは以前にも書いた通り、膵臓のランゲルハンス島という構造の中にあるA(α)細胞で生合成されて分泌されます。他にも消化管からも分泌されると言われています。膵臓からは血液の方に分泌されるので、内分泌ですね。

肝臓のグリコーゲンを分解させて血糖値を上げようという作用ですから、標的臓器は肝臓という事になります。そこで、グリコーゲンの分解を促進します。そして、働きがインスリンと正反対なので、分泌の様子も正反対になります。

実際にはインスリンもグルカゴンも、一日中ある程度の量は基礎分泌としてバランスを取りながら、ずっと血液中に分泌されているのですが、食事をするとこのバランスが変わります。

食事で血糖値が上昇するので、インスリンの分泌も増えます。血液中に糖がたくさんありますから、これ以上血糖値を上げる必要はありません。ですからグルカゴンの分泌は減ります。そしてインスリンの分泌が収まって普段の状態になった頃になると、分泌は元の基礎分泌くらいのレベルに戻ります。食後の減った時間と比べると、グルカゴンはちょっと増えた状態ですね。

そんなリズムを繰り返しているのですが、糖尿病などではインスリンが少なくなっていますから、グルカゴンはある意味でやりたい放題かもしれません。インスリンが効いていないのでバランスが取れないからでしょうか、基礎分泌の状態ですでに健常人よりも多く分泌されています。加えて食事の時、インスリンの効きが悪いのでグルカゴンが頑張って分泌される(?)らしいんです。ランゲルハンス島全体が頑張ってしまうからでしょうか。ですから糖尿病の人の食後は、余計に高血糖状態になってしまいます。

何とかしなきゃ。だから、治療として外からインスリンの注射をしてでも血糖値の上昇を抑えるんですね。このインスリン注射は病名によっては保険請求が可能な場合がありますから、気になる方は医師と相談をしていただくことをお勧めします。


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