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果糖ブドウ糖液糖

今回取り上げるものは「果糖ブドウ糖液糖」という名称のものなのですが、「これはいったい何?」といった名前ですね。調べていくと、「果糖ブドウ糖液糖」と言う名称以外にも「ブドウ糖果糖液糖」という名称のものがあることが分かりました。言葉が入れ替わっただけなのですが、そこに意味があるようです。

まず、どの様な物質なのかという事ですが、「果糖ブドウ糖液糖」「ブドウ糖果糖液糖」はともにでんぷんを酵素を使って分解してブドウ糖や果糖の形にします。最初のでんぷんの原料はサツマイモやトウモロコシが用いられます。そして、でんぷんから作ったブドウ糖と果糖の混合物のことを「異性化糖」と呼ぶそうですね。でんぷん自体は白い粉末で甘味はありませんが、分解してブドウ糖や果糖になると甘味が出て来ます。

さて、日本農林規格(JAS)というものがあって、異性化糖はこの規格によっていくつかの種類に分類されているそうです。分類の軸は果糖の含有率ですが、果糖とブドウ糖の量の割合ということなんですね。

果糖含有率50%以上90%未満のものを「果糖ぶどう糖液糖」と呼びます。反対に果糖の含有率が50%未満であれば「ぶどう糖果糖液糖」となって、物質名の表記順序が入れ替わります。多い方の物質を先に表記するという事で見分けているんです。さきに「果糖ブドウ糖液糖」は果糖が90%未満となっていましたが、これが90%以上になると「高果糖液糖」と呼び、さらに名前が変わります。これに砂糖が加わると(砂糖の割合は10%以上だそうですが)、砂糖混合異性化液糖となります。実際には「ぶどう糖果糖液糖」なら「砂糖混合ぶどう糖果糖液糖」という表記になります。砂糖が先に来ます。いろいろな名称のものがありますが、どれがよく用いられているかというと、果糖含有率が55%の果糖ぶどう糖液糖です。

この記事では、以下「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」の両方をまとめて「異性化糖」と表記します。

異性化糖の特徴は甘味だと名前から判断できますが、砂糖の代替品といった感じでしょうか。なぜこのようなものを作って利用するのかですね。例えば人工甘味料と比較すると、アスパルテームやサッカリンなどの人工甘味料は化学的に合成して作られます。したがって食品添加物として指定されることになりますので、添加した場合は必ず記載しなければなりません。それに対して異性化糖の場合は天然の原料(サツマイモやトウモロコシ)を使用しています。化学的な合成品ではないからでしょうか、食品添加物にはなっていません。また、異性化糖は砂糖の代替品として用いられていますので、砂糖と同じ程度の甘さになっています。それに対して人工甘味料は砂糖の数百倍の甘さがあります。こういった点も違いとしてあるんですね。

それじゃ異性化糖は砂糖と比べるとどこが違うかという事も気になりますが、そもそも原材料や精製方法の段階から異なります。異性化糖の原料は先に挙げた通りのサツマイモやトウモロコシですが、砂糖の場合はサトウキビやてんさいを精製して作ったものです。精製することで不純物を取り除き、純度を高くします。

ただ、大きな違いの一つに価格が挙げられます。異性化糖は砂糖よりも価格が安いという点ですね。よく使用されている理由として、これは大きいんじゃないでしょうか。

もう一つ、異性化糖を使う場合の大きなメリットがあるんです。甘味の話になるのですが、砂糖の甘味を100%とした場合、ブドウ糖の甘味はおよそ70%ですが、果糖の場合はこれが120%~170%になっています。つまり、果糖が入ると、より甘くなるんですね。現在多く使われているのは先に挙げた通り果糖含有率55%のもので、これが砂糖と大体同じくらいの甘味に調整されています。ただ。ここで果糖の持つ性質が利いてきます。果糖の甘味って温度によって変化するんです。高温の場合は砂糖よりも甘味は弱いのですが、低温になると砂糖よりも甘味が強くなるという性質があるんです。そのため、異性化糖は冷たい飲み物の清涼飲料水などに使用されることが多いということなんです。分かりやすい例がガムシロップでしょう。

食品に添加する物質はすべて健康への影響を考えなければなりませんが、サツマイモやトウモロコシを原料にして酵素で分解しただけのものだと、健康上の問題はなさそうだと思いませんか。肥満などへの影響が話題になったこともありましたし、実際にアメリカなどでは食品の製造に異性化糖をわざわざ砂糖に戻しているという話も有ります。果糖が甘味をより強く感じるという意味では、摂取が過多になる可能性は否定できませんが、摂取量に問題が無ければ、肥満の問題も回避できそうに感じるのですが、いかがでしょう。

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