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36、オキシトシンの話

前回は脳下垂体の後葉から分泌されるADH(抗利尿ホルモン)の話でしたので、後葉つながりでオキシトシンを取り上げます。以前にも取り上げた事がありましたが、新しい話題を見つけたので、再度書いてみます。

オキシトシンは下垂体後葉から分泌される9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。これは結構小さな分子構造ですね。前回取り上げたADHとはアミノ酸が2個違うだけとのことなので、よく似た構造のようです。

もともとは産婦人科領域で話題になるホルモンです。分娩の時に子宮を収縮させて胎児が外に出やすいように働きかけます。さらに出産後は母体の乳腺を刺激して乳汁の分泌を促し、授乳が出来るようにします。オキシトシンの名前自体が出産の時間が罹らないようにするといった意味があるのだとか。

その他にも、オキシトシンはポジティブ・フィードバックの機構を持っているとも言われています。これは分娩時の子宮の収縮に関係があって、いったんオキシトシンの分泌で子宮が収縮を始めると、それがポジティブ・フィードバック機構に則って更にオキシトシンが分泌されて子宮の収縮が進み、ついには分娩に至るという流れなんだそうです。このポジティブ・フィードバックという機構は生体の中ではしばしばみられるものだそうですが、オキシトシンはその代表例だということでした。

ですが最近は違う働きとでもいうのか、別の働きの方が注目されています。オキシトシンの別名が「幸せホルモン」となっていたりすることから、幸福感をもたらす働きがあるんじゃないかと話題になっているんですね。他にも「愛情ホルモン」とか「信頼ホルモン」とか、そんな名前(あだ名?)で呼ぶ人もいるそうです。こんな話を聞いただけでも優しい気持ちに慣れそうな気がしますね。

もともとはどこかの大学の研究がアメリカの雑誌に発表されたのがきっかけらしいのですが、その最初の研究は日本だったのだとか。ペットの犬と遊んだりして触れ合うことで、お互いにオキシトシンの分泌量が増加する」といった内容だったそうです。

このような分野は実験でデータを集めるうえで、いくら人間が対象といっても人体実験を行うことはできません。したがって、必然的に動物を使った実験が多く用いられることになります。たいていマウスが用いられるようで、実際にオキシトシンの場合もマウスの実験データが発表されています。

それによると、オキシトシンも分泌されても受け取る受容体が無ければその作用が出て来ないという、他のホルモンなどと同じ仕組みになっているのだそうです。また、オキシトシンの分泌が無ければいくら受容体があっても働きは見られませんし、受容体がオフになっていればオキシトシンが分泌されても作用は表れてはきません。

それはともかく、幸せホルモンなんていい名前ですね。


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