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HDL,LDLコレステロールの話

今回のテーマである虚血性心疾患に限らず、様々なところで「動脈硬化」の名前が出てきます。そして、その時にセットで出てくる物質として、HDLコレステロール、LDLコレステロールの二つが挙がります。この二項目について、詳細を書いたことが無かったので、今回はこれを取り上げます。

HDLやLDLの意味

HDLコレステロールのHDLとは、いったいどんな意味でしょうか。また同様に、LDLコレステロールのLDLの意味はなんでしょうか。

HDLとは、High Density Lipoprotein の略で、高比重リポタンパクといった表現をします。これに対してLDLとは、Low Density Lipoprotein で、低比重リポタンパクと言います。
比重が高いとか低いとかは、言い換えれば比重が大きいとか小さいとか、そんな意味になります。すなわち、高比重とは比重が大きい、言い換えればそれだけ重いということであり、低比重とはその逆で軽いという意味です。リポプロテインとは、リポ(脂質)を含んだプロテイン(タンパク質)という意味です。

比重の大きさは、成分である脂質の量に左右されます。水より軽い脂質の量が多ければ、それだけ比重は軽くなります。反対に脂質の量が少なければ、比重は重くなります。それから考えると、HDLとは脂質の量が少ないリポプロテイン、LDLとは脂質の量が多いリポプロテインということになります。

ところで、人間の身体はその70パーセントほどが水分だということはご存じですね。そしてHDL~、あるいはLDL~という物質は血液中を流れていますが、血液もまた水分が中心です。そして、水と油は本来は混ざることはありません。ではどうやって脂質成分が血液中を流れているのかということですが、この脂質を運ぶものがリポプロテインです。

どうやって脂質を運ぶかということですが、リポプロテインは丸い形をしていて、その中心部分に脂質を入れています。外側はタンパク質なので水と親和性があり、内側に脂質を隠している、そしてまるで溶け込んでいるかのように振る舞っている、そんな状態を作りだして運んでいるのです。

HDLコレステロールが善玉の理由

HDLコレステロールは成分としての脂質の量が少ないので、比重が高いと先ほど書きました。それで、体中の血管をまわって、余分なコレステロールを回収することが出来ます。これによって、血管の内壁のコレステロールを引き抜くことになり、動脈硬化の進行を妨げる働きをするので、善玉と呼ばれます。

反対にLDLコレステロールは成分の脂質が豊富にあるので、全身をめぐって末梢にコレステロールを届ける役割を持ちますが、増えすぎると動脈硬化のリスクを挙げてしまいます。それで悪玉とされます。

脂質の役割

脂質は油の一種ですから、水には溶けません。代わりに有機溶媒に溶けるという性質があります。体内ではエネルギー源となりますが、糖質やタンパク質が1グラム当たり4キロカロリーに対して、脂質は9キロカロリーと、はるかに高エネルギーな栄養素です。また、脂質は体に蓄えることが出来て、必要に応じてそこから取り出すことでエネルギー源として活用することが出来ます。

細胞の膜を作る成分として重要な働きをしていること、ホルモンなどの生理活性物質の材料になるという点でも、とても重要な役割を担っています。脂質は一般的には不足することは少ないでしょう。ただ、ダイエットで油絶ちなどをした場合には、不足する可能性が出てきます。その場合、肝機能が低下することがあったり、皮膚の脂分が減少してカサカサになるといった影響が出る場合もあります。成長期の子供がもし脂質不足になった場合、発育障害が現れることがあるので注意が必要です。

脂質は一般に食事として食べ物から体内に取り込まれますが、主に小腸で消化吸収されます。また、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を良くする働きもあります。
脂質を多く摂取すると肥満を招くことになり、生活習慣病を引き起こす原因にもなりかねません。その多くは中性脂肪が主成分です。


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