看護師という仕事

未知のウイルスの流行

その渦中に私はいた

どんな症状が出るのかもわからない
治療法も確立していない

そんな時期に、コロナ病棟の立ち上げスタッフとなり、
患者さんを担当することになった

マスクにゴーグル、ガウンに手袋…
完全防備で、毎日仕事をした

必死だった

目の前の命を守るために
自分の命を守るために


必死に、必死に、生きていたのに…

“うつるから来ないで”

“コロナなんでしょ?汚いから来ないでよ”

“病棟で使えない看護師がコロナ患者を診てるんだろ”

そんな心無い言葉を何度も言われた

未知のウイルス、怖いのはわかる

だけど…

私だって怖い

毎日ビクビクしながら仕事をしてた

検査をするたび、不安になった


看護師だって人間だよ

『怖い』『不安』っていう感情だって、もちろんある

怖くて逃げ出したくなる時だってある

でも、逃げることは許されなかった

“看護師なのになんで逃げるのか”
“逃げるってことは、医療者としての自覚がないのか”

そんなことを言われた

逃げることも許されず、
周りからは避けられて…

“看護師って、なんだろう…?”
初めて、自分の仕事が嫌になった
バカバカしく思った

“だったら、お前がやれよ!”
何度も何度も飲み込んだ言葉

別にお礼を言われたいわけじゃない

ただ、普通に仕事をして、
普通に生活をしたかった


荒んだ心を癒してくれたのは、
たった1人からの、“ありがとう”だった

久しぶりに聞いたその言葉に、
自然と涙が溢れた

たった一言
その言葉に、救われた

その一言があったから、今もこうしていられる
看護師としていられる

“やっぱり私は看護師が好きだ”
そう思えた
たった4年前のあの日のこと

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