2017年9月 忘れもしない 夏の終わりの、まだまだ蝉の声が聞こえる、ある晴れた日 私たち家族は、ある宣告を受けた 『乳がんステージⅣ』 母の胸に巣喰うがん細胞は、すでに全身に転移していた 何もしなければ余命は半年 治療をしたとしても、いつまで生きられるかはわからない はっきりと言われた 何かの間違いであってほしい 何かできる治療はあるんじゃないか そんな期待を持って、参考書や論文を読み漁った でも、さすが論文 現実を突きつけられた 5年生存率の壁 それが
未知のウイルスの流行 その渦中に私はいた どんな症状が出るのかもわからない 治療法も確立していない そんな時期に、コロナ病棟の立ち上げスタッフとなり、 患者さんを担当することになった マスクにゴーグル、ガウンに手袋… 完全防備で、毎日仕事をした 必死だった 目の前の命を守るために 自分の命を守るために 必死に、必死に、生きていたのに… “うつるから来ないで” “コロナなんでしょ?汚いから来ないでよ” “病棟で使えない看護師がコロナ患者を診てるんだろ” そ