『最新世界史図説 タペストリー』(二十一訂版)ノート
川北稔、桃木至朗 監修
帝国書院刊
この本は、以前に私がnoteに投稿した『日本史年表・地図』ノートを読んだ友人から紹介されて購入した。全ページカラー刷りで大判380ページ以上ある。そのほか36ページの白地図作業帳(試験問題形式)と、史料として、〈死者の書〉からはじまって歴史上見落とすことができない重要事項の記事が93項目記載されている。この付録を読むだけでも面白い。それで消費税込みで957円という低価格で驚いた。
発行元とこの価格から考えて、高校生の教科「世界史」の副読本だろうと推測しながら読み進めていくと、「この資料は実際に過去の東京大学の試験に使われた」とか「入試に強くなる!」などの説明書きがところどころに書かれており、筆者の思った通りであった。
しかし、単なる副読本ではなく、世界史の探究方法や資料から歴史を読み解く、など歴史を学ぶ上でのアドバイスが書かれており、ますます世界史に興味が湧いた。ちなみに筆者の大学入試の選択科目は世界史だった。
本を開いてみて、『タペストリー』(綴れ織り)というタイトルを付けた意味が分かった。タペストリーは、壁に掛ける織物のことだ。主に風景や幾何学模様などを題材としているものが多いと記憶する。
この本は、先史時代から21世紀初頭までの出来事が通史的に書かれており、それを縦糸とし、それぞれ同時代の世界の繋がりを横糸として編まれている。いわば人間の歴史の織物のような構成になっているからだ。
初版は2003年で、二十一訂版だから、毎年改訂されていることになる。
目次の次に〈本書の使い方〉が見開き2ページを使って説明してあり、まずここをよく読んでから開いた方が、この本をより活用できる。分かりやすくするための編集の工夫やインデックスの使い方、さらにQRコードもところどころにあり、「動画で見る現代史」と題して、〈サライェヴォ事件〉〈第一次世界大戦〉〈ロシア革命〉〈世界恐慌〉〈ヒトラーの演説〉〈日本軍による真珠湾攻撃〉など当時のニュース映像をもとにした14点の動画をスマートフォンでみることができる(本書巻頭13~16ページ)。それぞれの動画のQRコードの下に「考察」という欄があり、「~を考えよう。」とあるのが教科書らしい。
次の巻頭ページには、特集記事「今、注目のトピックから世界史に迫る」が載っている。たとえば、〈新型コロナウイルスの感染拡大とワクチン接種〉では、公衆衛生や予防医学・免疫学の登場、〈強硬姿勢を強める中国〉では、香港の中国返還、一国二制度、その根底に「中華民族の偉大なる復興」の願望があることなどが書かれている。
この巻頭ページまでが前説で、そのあとの「先史時代~文明の発生」からこのテキストの本編が始まる。
本編の最初には、紀元前2千年~20世紀初頭までのさまざまな民族や国の勃興や盛衰を表す勢力図が、その時代の主な出来事とともに掲載されている。また政治や文化にとどまらず、建築や芸術の歴史、自然災害や気候変動も取り上げている。
終わりの方では、「西洋思想史完全整理」、「近現代の条約と会議完全整理」といういかにも教科書的タイトルの資料が掲載されており、さらには世界各国の王朝の系図や歴代政治指導者の名前等の一覧表と世界史年表が収録されている。
この本は紙面の工夫がされており、その情報量の多さも含め、索引や関連資料も充実しており、教科書や副読本してだけでなく、ビジュアルな読み物としても実に面白い。
情報量が膨大なのでまだ隅から隅まで読んではいない。筆者は、座右ならぬ机の左側に置いて、自分が生まれた時代から読み始めている。
ひょっとしたらお子さんの本棚にあるかもしれないので、買う前に探すことをお薦めする。