世界陸上ブダペスト参加資格変更点の考察①

はじめに

どーも、ゆーすけです。
先日世界陸上ブダペストの参加標準記録が発表されました。
日本陸連から日本語訳も出たことですので、
これからオレゴン大会からの参加資格の変更点を見ていきたいと思います。
用語がわからなくなったら、前回の記事もご参照ください。

おことわり

トラック&フィールド種目(競技場内の種目)の個人種目のみに触れていきます。
マラソン、競歩、リレーは触れません。

参加標準記録

今回、参加標準記録はほとんどの種目で上昇しています。
理由は今までが低すぎたからです。
何と比べて低いのかといえば、世界陸連が理想と考えている状態と比べて、です。
その状態は参加標準記録をクリアした選手と世界ランキングで選手された選手の比率が50:50となっている状態です。
しかし、ほとんどの種目で参加標準記録をクリアした選手が50%を超えているのが現状です。
10000mでは「出場選手全員が参加標準記録をクリアしている」ということが起こったこともあります。
だから引き上げられたのです。
さて、参加標準記録を見ていきましょう。

男子

まずは男子です。

男子の参加標準記録の比較

参加標準記録が下がった種目は400mと走り高跳び(HJ)だけ。
その他は記録水準が上昇しました。
特に長距離種目には記録がかなり厳しく設定されています。

女子

続いて女子です。

女子の参加標準記録の比較

参加標準記録が下がった種目は800mとやり投げ(JT)だけ。
他の種目は厳しくなっています。
男子と同様に長距離種目の参加標準記録の水準が大幅に上がっています。

さて、ここからが本題です。
この記録水準が世界陸連の狙い通りとなるか、ということです。
結論からいうと種目によります
ここで、3つの種目について見ていきます。

種目① 男子100m 10秒05→10秒00

メディアで主に報じられたのは男子100mでした。
日本人からみるとこれはかなり厳しいように見えますが、この水準は極めて妥当です。
東京五輪、世界陸上オレゴンでは資格記録(一定期間内のベスト)の中央値が10秒01でした。
つまり、出場選手のうち半分が一定期間内(だいたい1年)に10秒01を出している、ということです。
前回の記事で書いたように、参加標準記録は出場選手中半分がクリアできる(できない)水準が理想とされています。
したがって、水準は極めて妥当だということが分かります。

種目② 女子10000m 31分25秒00→30分40秒00

こちらは意味が分からないくらい参加標準記録がきつくなった種目です。
東京五輪、世界陸上オレゴンでは資格記録の中央値が30分59秒前後でした。
したがって、20秒ほど余分に上げたということになります。

種目③ 男子1500m 3分35秒00→3分34秒20

この種目は参加標準記録の引き上げが大幅だが、適正水準である種目です。
0秒80の大幅引き上げがされたので過剰な引き上げがされたように見えます。
しかし、東京五輪、世界陸上オレゴンでは資格記録の中央値が3分33秒6前後でした。
つまり、あと0秒60も引き上げ余地があるということになり、
かえって基準がゆるいことになります。
ただ、これは出場枠が変わらなかった場合の話。
今回は出場枠が増えるので(後述)それを加味した場合、適正水準にかなり近い値となります。

ターゲットナンバー

次にターゲットナンバー(種目別出場枠数)についてです。
数字は男女ともに同じです。
ほとんどのトラック種目は変わりませんが、以下の種目に変更があります。

出場枠拡大
800m 48→56
1500m 45→56
フィールド競技 32→36

出場枠縮小
200m 56→48

一番インパクトが大きいのは1500mの11枠増です。
先述したように参加標準記録の引き上げがありました。
ただ、その影響を緩和するために(引き上げすぎを防止するために)
出場枠を増やした可能性があります、
また、フィールド競技の4枠増にも注目です。
跳躍、投擲すべての種目に適用されます。

その他

その他も変更が大きく3つあります。

1.記録の有効性にかかる条件

2023年1月以降は、世界陸連に事前に申請済みの競技会の記録しか参加標準記録やランキングの対象にならなくなります。
ある程度大きな大会での記録が求められる、ということになります。

2.エリア選手権優勝者

エリア選手権優勝者は、参加標準記録やランキングの条件をクリアしていなくても参加資格を得られることがあります。
参加標準記録をクリアしたとみなされる場合があるためです。
その条件が今までは曖昧で世界陸上ドーハでは少しもめました。
(日本陸連から和訳が出るようになったのはこれがきっかけです。)
しかし今回はその条件が明確になりました。
同種目で同エリアから優勝者より高いランキングを持つ選手がエントリーされていないこと」です。
したがって、エリア選手権優勝者の出場可否はランキングが確定しないと分からない状況となり、出場決定が遅くなります。
この条件がどんな意味を持つのでしょうか。

エリア選手権を優勝すると順位点をたくさんもらえるので、
世界ランキングが上位になりやすくなります。
それでも同じエリアの選手にランキングで負けるのなら、
特別扱い(参加標準記録をクリアしたとみなす)の必要はないですよね。

こういう意味を持つものと推測されます。
よく考えられているな、と感心しました。(何様だと突っ込まれそうですが)

3.競技不正操作監視対象リスト

記録に関する不正が疑われる国の選手に対しては、カテゴリー(格)の高い大会しか記録が認められない制度です。
まだ対象国は未発表ですが、日本は対象外になると思われます。

9/23追記
リストの対象国が発表されました。下記の通り旧ソ連圏の国が中心で、日本は対象外です。

【2022年9月23日から対象】
アルバニア
アルメニア
ジョージア
キルギス
モルドバ
トルコ
ウズベキスタン
【2023年1月23日から対象】
カザフスタン

最後に

有効期間の関係で、世界陸上オレゴンは大半の種目でノーカウントになります。
これは世界陸上オレゴンがかなり前倒しの開催になったためです。
その一因として、1年延期により、エリア選手権やコモンウェルスゲームズと同年開催となったことが挙げられます。
それなので、参加標準記録を切り直す必要があります。
ちょっと大変そうです。

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