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良いサブスク事業のタイプと、事業をやる上でのキモが見えた話|「日本サブスクリプションビジネス大賞2019」参加レポ

 2019年12月9日に開催された「日本サブスクリプションビジネス大賞2019」に参加してきたのでレポートをアップします。評価軸を公表してくれなかったので、おそらくこの部分が評価されたのだろうという予測を交えています*。レビュー部分ではうまくいっている特徴や、参入時に抑えておくべきキモについても書いています。サブスク系事業を考えてる方の参考になればと!
(*語尾に「〜〜印象。」と付記しています)

「日本サブスクリプションビジネス大賞2019」とは
今回初めて開催される授賞式。その年に飛躍したとされるサブスクリプション系ビジネスを選ぶもので、今回のエントリー数は100社を超えるという。初回のスポンサーとしてさくらインターネットなどが名を連ね、アンバサダーとしてロザン宇治原さんも登場しました。

受賞結果まとめ/Fact

 先に受賞したサービスをまとめます。グランプリ、シルバー賞、ブロンズ賞、スポンサー賞(3社分)の計6社が受賞・登壇しました。

グランプリ:トイサブ!|株式会社トラーナ

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月額3,340円+taxから始める「おもちゃのサブスクリプション」。0歳から4歳未満を対象に、おもちゃ・知育玩具をコンシェルジュが選定して隔月で提供(交換型)するもの。
「どのおもちゃが良いかわからない」という選択の困難さと、「大きくなったら使わなくなってしまい捨てるしかない」というスペースの問題および環境問題を解決する点が評価された印象。

契約数:2,200世帯程度
サービスイン:2015年
月額費用:3,340円 税別
タイプ:ハード・レンタル型/コンシェルジュ選定式
買切時の相場価格:1品あたり15,000円以上

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シルバー賞:MEZON|株式会社Jocy

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月額10,500円から始める「美容室のサブスクリプション」。MEZONが提携している各美容室を契約期間中は使い放題になるサービス。シャンプー・ブロー・ヘアケアなど便益も幅広い。
現在全国に美容室が25万件(=コンビニの4倍)あるとされ、美容室の利用スタイルに変革を生み美容室の存在意義をシフトする目的で運営している点を評価されていた印象。

契約数:25,000名程度
サービスイン:2018年
月額費用:10,500円〜(※通い放題は16,000円以上のプラン)
タイプ:ソフト・無制限型
1回あたりの相場価格:5,000〜10,000円

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ブロンズ賞:オプチューン|資生堂

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月額10,000円+taxから始める「パーソナライズ化粧品のサブスクリプション」。スマートフォンの専用アプリを通じて肌の状態を診断。自宅に届いた専用マシンがデータをもとにユーザーに最もマッチした化粧品を調合して生成する。
IoT活用やデータによるパーソナライズなど先進技術を使いながら生活者に手が届く価格設計としている点が評価されていた印象。

契約数:不明
サービスイン:2019年
月額費用:10,000円 税別
タイプ:ハード・レンタル型+替え刃式ビジネス
1回あたりの相場価格:???(比較しにくい・・・)

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さくらインターネット賞:Goo Pass|カメラブ株式会社
月額5,800円+taxから始める「カメラ&機材のサブスクリプション」。登録者は希望の機材を選択すると自宅にカメラが届く。現在利用者は10,000名を超えている。通常購入では数十万と高価なカメラをサブスクリプション形式にすることで誰でも気軽に本格的なカメラライフを始めることができる点を評価されていた印象。

GMOペイメントゲートウェイ賞:ダイソンテクノロジープラス|ダイソン株式会社
月額1,000円+taxから始める「dyson製品のサブスクリプション」。高性能だが高額でも有名なdyson製品を「気軽に試せるようにして本当にマッチした製品と出会ってほしい」と考えてスタートしたサービス。
通常の買切価格に対して月額費用で大幅にお得になる点が評価されていた印象。

ペイディ賞:ネット宅配クリーニング『リネット』|株式会社ホワイトプラス
月額390円+taxから始める「宅配クリーニングのサブスクリプション」。受賞した企業の中でも古参でサービスインは2009年から。現在の利用者は累計35万名を超える。
現在のサブスクリプション型ビジネスモデルのひな形ともいえる堅牢な型と着実な成長を評価されていた印象。

よきサブスクは3タイプに分類できそう/Review

受賞したサービスを見ていて現在ユーザーに喜ばれているサブスク型サービスにはタイプがあることに気づいたので以下まとめます。

プラチナムブーメラン(モノ系/高額品のリース/自由に選べる)
高価なものを定額でリースするタイプ。Goo Passやdysonはこれにあたります。こんな値段で使えるの?というパーセプションがカギですね。

高級なパルプンテ(モノ系/上質品のプレゼント/プロの選定)
良いものを普通に買えばそれなりの値段がかかるところを、プロによる無作為選定とすることで通常の買切価格より安く手に入るもの。

無限ランチャー(コト系/ショット利用の無制限化)
通常は都度利用で支払うもの(美容室・自動販売機など)を一定の条件内で無限に使える系サブスク。

うまくいってるサブスク4つの特徴/Review

あわせて、優秀だと評価されたサブスク型サービスには以下の特徴があるともわかりました。

1.価格ジャンプ率
実際に利用する場合・購入する場合に比べてとにかく安いというのが特徴の1つ目です。文字の級数の差を示す「ジャンプ率」をヒントに命名しましたが、数十万が数千円で利用できるなど、こんなに安くていいのか?という驚きが惹きつける引力になっています。

2.もたない喜び
買った場合の置き場所の問題を解決して「もたない喜び」を提供している点は意外にも心をくすぐるポイントでした。カーシェアリングなどハードウェアを保持・維持・メンテする苦労を知っている人にとっては大きな便益になっています。

3.行かない利便性
オンラインでオーダーが完了し自宅に届くという、指定の店舗・場所に行く必要がないのもポイントでした。サービスを利用する一連の流れから「店頭に行く」というフェーズが抜けるだけで場所性と時間から解放されます。

4.悩まない楽さ
買い切りの場合はある程度のリスクを背負うことから判断にカロリーがかかりますが、サブスク型にすることで心理的負荷も下がり悩みにくくなります。サービスによっては専任コンシェルジュが代わりに選定することで、さらに判断工数の低下させ且つ安心感を提供しています。

サブスク事業のキモは5つ/Review

 しかし実際にやるとなると難易度はどうかと考察しましたが、ひとえに「簡単じゃないぞ」ということも分かってきました。おそらく以下の5つのキモを抑えた上で参入しない限りは、サブスク型でやるのはお勧めできません。

1. モノ系のサブスクは価格ジャンプ率がキモ
「この価格でいいの?」という驚きこそが誘引力のカギと言えます。中途半端だと見向きもされません。ジャンプ率が出せない場合はその他便益を十分に提供する必要があります。

2. サービス系・コンテンツ系のサブスクは選択肢の多さがキモ
使い放題・見放題というサービスあるいはコンテンツのサブスクで成功しているものは「実質無制限」といえるほどに選択肢が多いです。多いのではなく実質無制限なほどに多くなければいけません。

3. サービスイン前の事前準備がキモ
提携してくれる店舗の数や提供できるコンテンツの数を十分に供えたり、注文から到着までの迅速なオペレーションを設計したり、サブスクユーザーは「モトを取りたいからガンガン使う」という前提要件に対応できる準備がキモになります。

4. 損益分岐となる回数と月額のバランスをシビアに見極めるのがキモ
サービスインをしてしまうと一度設定した価格を安易に値段を変更することはできません。どの程度月平均利用するのか、そのユーザーがどのくらいの期間サービスを利用するのか、月額をいくらで設定したら何ヶ月でリクープするのかなど、シビアにシミュレーションして判断することが求められます。

5. リクープまでの資金繰りがキモ
提携先の開拓やシステムの準備、場合によっては在庫の準備など、サービスインまでに非常にお金(人工や販管費含め)がかかる部分もサブスク型ビジネスモデルの特徴です。リクープまで資金がショートしない状況作りも成否を分けると言えそうです。

まとめ

 原則として長期戦ビジネスのため、最低5年以上赤字であろうが融資・出資を集められる「計略」「情熱」「執念」がない場合は、非常にレベルの高いビジネスモデルなので参入は控えたほうがいいかなと・・・。
他方できちんと軌道に乗せられると業績は安定しやすいことから中長期的な戦略や施策の着手ができるともいえそうです。将来的に国家規模の大きな事業を考えている場合はサブスク型ビジネスはやった方がいいでしょう。


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