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映画『PERFECT DAYS』

びっくりした。こんなに面白い映画だったとは。期待以上。いろいろな意味でおもしろかったけど、何といっても音楽が圧巻だった。さすがヴィム・ヴェンダース。主人公の平山さん音楽の趣味良すぎでしょって感じだった(笑)。
平山さんは車の中でカセットの音楽を流す。曲によって東京の風景が違って見えてくる。この感じ好きだな~いいな~


音楽

ネットで検索した、平山さんがかける曲のセットリストがこれ。

The Animals “House of the Rising Sun”
The Velvet Underground “Pale Blue Eyes”
オーティス・レディング “(Sittin’ On) The Dock Of The Bay”
パティ・スミス “Redondo Beach”
ルー・リード “Perfect Day”
The Rolling Stones “(Walkin’ Thru The) Sleepy City”
金延幸子“青い魚”
The Kinks “Sunny Afternoon”
ヴァン・モリソン “Brown Eyed Girl”
ニーナ・シモン “Feeling Good”

高校時代の思い出

60~70年代のロック、パンク、ソウル…
やばい。個人的に、高校時代の音楽通だったボーイフレンドに聞かされた音楽たちとかぶっていて、懐かしさマックス。
ルー・リード、The Velvet Underground、StonesにKinksにAnimals……

高校時代、わたしはそれまでそんな音楽まるで聴いたことがなかったから、最初はなんじゃこりゃ??だった。正直とても好きになれるとは思えなかった。けどだんだん馴染んでいったんだよね。
とにかくたくさんの音楽を知っていて、音楽評論家になりたいと言っていた知的な彼がすすめてくる音楽を何とか理解したくて、必死に聞いていたっけ…。ロック初心者にはハードな洗礼だった。

それにしても本当に趣味が良いというか、ずいぶん老成した高校生だったことよ…。Aくん、あなたもどこかでこの映画を観て何かを思っていますか? そんなことを考えながら観ていた。

彼は大量のCDをわたしに貸し出すとともにおすすめ曲をセレクトしたカセットテープも作ってくれてーーそれはすごくセンスが良く、私は今でも持っているんだけどーー(トップ画像)、平山さんのかける曲たちはそれにかなり近い。
Doorsとかルーリードとかライク―ダーとか…でもセットリストの紙をなくしちゃって、わからない曲もあるのよね。

あの時代そういうことをした。わたしも社会人なりたてのころヘヴィメタ好きの先輩に頼まれてヘヴィメタ好きが好きそうなクラシック音楽セレクトテープを作った。かなりツボだったらしく喜ばれた。

金延幸子

金延幸子のあの透明感のある歌声が流れてきたときは驚いたなぁ。わたしこの曲の入った『み空』ってCDを持っている。
これはAくんつながりではなくて、はっぴいえんどが大好きだったころに、はっぴいえんどつながりで知ったんだったと思う(はっぴいえんどとドアーズをコピーする「どこでもドアーズ」ってバンドで鍵盤・歌・コーラスをやっていた)。

古本屋に行くシーンが2回ほどあるけど、1回目で彼が幸田文の『木』を求めていたのに思わずおお!と心の中で唸る。あ、この表紙知ってる! わたしも同じの持ってる! 古本屋で100円で買ったよ~(トップ画像)。幸田文に夢中だった時期があって、見つけるたびに買っていた。
100円でこんなに楽しめるんだからすごいよね本って、古本屋って。

古本屋の女性店主の言葉がまたいい。「幸田文はもっと評価されるべきよね。同じ言葉を使っているのにどうしてこんなに違うのかね」。まったく同感!

平山さんの生き方

主人公の平山さんはこんなに知的でセンスが良いにもかかわらず安アパートに住みトイレ清掃の仕事をしている。
「トイレ清掃の仕事をする人はこういう人」という固定観念というか先入観というか偏見からするとかけ離れた人物像といえる。

本人はいたく満足して暮らしている。
しかし周囲の目は違う。「トイレ清掃の人」として扱われる。平山さんがトイレで泣いていた子どもと手をつなぎ母親を探すシーンがあるけど、会えたとき彼女はお礼も言わないし、すかさず子どもの手を消毒する。

再会した妹は「こんなところに住んでいるのね」と言う。
彼女が姪のニコを乗せて車で去った後に平山さんは泣く。これは何だったか。社会的評価が高い方の生き方を選ばなかったことで得た上記のような傷が少し傷んだのだろうか。

このあたりの感覚、わかるのだ。
わたしも大学卒業後、待遇のいい職について(団体職員)、自ら辞めて苦労したので。自分自身はまったく変わらないのに周囲の見る目が変わったという経験がある。むしろ自分自身は成長しているのに、社会的肩書だけで、何もしていなかったころのほうが評価されたり。おかしな話。
今もそんな違和感を感じることは多々ある。無資格の非常勤職員(パート)だから。わたしはむしろ自由な生き方を選んでいて、自分自身を高めるための資金稼ぎのために働いていて、実際いろいろな面でぐんっと成長しているし充実した日々を送っているのだけど。

その他

『TOKYO STYLE』

平山さんの部屋が都築恭一さんの『TOKYO STYLE』から抜け出してきたみたいな雰囲気で興奮した。
小さな木造アパートに、素敵な本を並べ、植木を育て、木漏れ日の写真を撮り、好きな音楽を聴きーーおしゃれでもリッチでもないけど自分だけの城を築いている。
飲食、お風呂などは自宅外のサービスを利用。「レストランや飲み屋のそばに小さな部屋を確保して、街を自分の部屋の延長にしてしまえばいい」という、まさに『TOKYO STYLE』の住民的発想で暮らしている。

おしゃれトイレ

平山さんの掃除する渋谷(?)の公園のトイレはすごくおしゃれ。きっと平山さんのアパートのトイレよりずっとハイテクなトイレ。
これ外国人が見たらどう思うのかなって。そう、この映画は「外国人から見た東京」っていう視線がまた興味深いのだ。
東京の風景、銭湯、テレビの相撲中継、居酒屋……Wow, this is Tokyo!! って感じだろうなぁ。感想を聞いてみたいなぁと思った。

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