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できそうでできない、フランス映画「キリマンジャロの雪」を観て

舞台はフランスの港町、マルセイユ。
主人公は結婚30周年を迎える50代の夫婦。ふたりのこどもは既に結婚していて、孫もいる。
夫のミシェルは労働組合の委員長で、公正を期すためくじ引きでリストラ対象者を選ぶ際、自分も選ばれ、職を失う。妻のマリ=クレールは近所のお年寄りのケアの仕事をしている。

その後、結婚30周年のパーティで、子供やミシェルの弟夫婦らがお祝いにアフリカへの往復航空券とお金をプレゼントする。
夜、ミシェル夫婦と弟夫婦が共にミシェルの家で過ごしていると、強盗に押し入られ、プレゼントされた航空券とお金、弟のカードからもお金を盗まれる。

盗まれたモノの中に、ミシェルのサイン入りのコミックブックが含まれていて、ある日、ミシェルはバスの中で子供たちがそれを持っていることに気付く。ミシェルは彼らの後をつけて、犯人を突き止めた。それは元同僚で、リストラされた中にいた20代の若者だった。彼はパーティにも来ていた。
彼の母親は彼を16歳で生んで、その時の男とは別れ、その後ふたりの男の子を生んで、現在別の男のところにいて、子供らの世話は彼に任せていた。

そもそもリストラの方法がよくなかったと反省したミシェルは、警察への訴えを取り下げようとするも、事件として処理されており止めることはできなかった。
で、ミシェルとマリ=クレールは、警察に行き、彼にミシェルが会う機会をもらう。ミチェルだけ面会することになり、マリ=クレールが刑事にミシェルは彼を殴らないと言った後、挑発されてミシェルは元同僚を殴ってしまう。元同僚は初犯とはいえ、数年は刑務所に入るだろうと言われている。

ミシェルのしたことにショックを受け、犯人のふたりの小学生ぐらいの子供のことも気になっていたマリ=クレールは、ある日ふたりを訪ね、食事や洗濯等世話を焼く。最初はちょっと警戒していた子供たちも彼女になついていく。でもこのままではいけないと、母親に会いに行くも、30代後半で自分の人生を楽しみたい彼女は、付き合っている男と3日間の船旅に出る。

戻ってきた航空券を現金化して、元同僚の子供二人に渡そうとするミシェル。でも結局会えず、港の方へ行くと、妻の姿が。彼女にそのお金のことを話すと、元同僚の子供らが水着のまま妻のところに来て彼らにタオルや食べ物を渡している妻。ふたりとも彼らを気にかけていたのだ。

ミシェルとマリ=クレールはチラシを配る仕事をはじめ、相談した結果、元同僚の弟二人を養子にする決意をし、自分の子供たちに話す。が、彼らは反対する。

元同僚の子供ふたりと、ミシェルとマリ=クレールがバーベキューをしているところに、弟夫婦も来て、弟の嫁は子供らに自分のファーストネームで呼ぶよう言い、食事が始まるシーンで終わる。

善意とはいえ、できそうでできない行動をとる二人。
印象的だったのは、マリ=クレールが立ち寄ったカフェバーでも店員とのやり取り。彼は勝手に彼女の気分を想像して、それにあった飲み物を提案する。話しているうち彼女は気に行った飲み物に出会う。こういう店日本にもあるかな。その後、このカフェで娘が彼女に相談するシーンがあり、彼女は、「自分で決める」よう進める。

それと、ミシェルの弟の妻が強盗の件でショックを受けて、彼が仕事から帰っても食事をつくってないシーンがあって、謝る彼女に彼は責めることも失望することもなく、ただ彼女を優先する。いいシーンだった。

ある朝、いつも長い髪を後ろで三つ編みにしているマリ=クレールが髪をほどいてふわふわな状態で、カフェボールで飲んでいる姿はチャーミングだった。

ちなみにこの作品は、監督がヴィクトル・ユゴーの「哀れな人々」(韻文形式の短編小説?)から着想を得たらしいが、それに出てくる貧しい漁師とその妻はどうやら報われないらしいが…。


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