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☆本#31 姻族関係終了届と孤独死「夫の墓には入りません」垣谷美雨著

16年間連れ添った40代半ばの夫が突然死する。というと、喪失感がテーマかと思うかもしれないけど、そういうセンチメンタルな話ではなく、人生の分岐点で戸惑い、悩み、前向きに生きる話。

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この小説で「姻族関係終了届」というものを知った。配偶者の死後その親族との関係を断ち切ることができる届け。本人のハンコだけで受理してもらえて、女性の場合、その後苗字を旧姓に変更することも可。

主人公が夫の親族の老後の世話係に使われそうになったとき、父親がいい味を出す。発言も、行動も。

彼は娘に、誠実で信頼に足る人間でも人が好過ぎて頼まれたことを断らないと周りに「つぶしてもいい人間」だと思われる点を指摘する。人間関係を悪化させたくない場合、相手に要求するのではなくまず自分の気持ちを話すよう導き、実地する。確かに共感してもらうには、感情で訴えたほうが伝わるかもしれない、相手によっては。

アメリカ人は世帯で独立しているので、親世代も子どもに世話してもらおうという発想は日本ほどはなく、フランスでも、シニア夫婦は資産のアパートを死後売却する契約で未払いを清算するやり方が普通にあって、自分たちの老後は、子や孫に頼る発想がなく、自分たちで管理している印象。

頼るのがいい悪いではなく、ただ日本ではひとりで息絶えると「孤独死」と呼ばれネガティブに受け止められるのはいかがなものかと思う。

アメリカではそれは普通で、死後家にあったものはいわゆるガレージセール的に欲しい人に安価で売られる仕組みが普通にあって、一度破産宣告したアメリカのオンラインショップnasty galの創業者Sophia Amorusoも、ヴィンテージ品をebayで売っていた頃、そういったセールで購入していたと自伝「#GIRLBOSS」で述べていた。

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ひとまず「孤独死」ではない、別の呼称はないだろうか。

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