会長海老澤と新代表元木が語る組織の未来と挑戦【MIC新旧代表対談:前編】
◎はじめに
こんにちは、ベンチャーキャピタルMICの有賀です。モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテクノロジー領域においてリード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先スタートアップへのバリューアップ支援の一環として、事業会社とのオープンイノベーションに注力中です。
本記事は、弊社が毎週火曜日に配信している公式Podcas「起業家のキモチ」を文字で読むことができる「読むPodcastシリーズ」です。1本3,000字程度にまとめていますので、空き時間でさくっと読みたい方にお勧めです✨
今回は先日代表取締役社長に就任した元木、そして元代表取締役社長、今回取締役会長へ就任した海老澤の対談収録を実施したものを記事にしました。まずは前編からお届けします。
◎新体制発表の背景と経緯
有賀:
今回は特別版として、先日6月7日付で弊社新代表取締役社長に就任した元木さん、そして同時に新取締役会長に就任した海老澤さんを迎え、新体制発表スペシャルをお届けいたします。早速ですが、改めて自己紹介を海老澤さんからお願いできますでしょうか。
海老澤:
はい、海老澤でございます。今までは代表取締役社長という役職でしたが、今回新たに取締役会長という役職になりました。今後ともよろしくお願いいたします。
元木:
新代表取締役社長となりました元木と申します。まだ少しぎこちないですが、よろしくお願いいたします。笑
有賀:
さっそくですが、まずはこのタイミングで新社長就任となった背景、元木さんが新社長として選出された理由やプロセスについて教えてください。
海老澤:
私がMICに来たのが2018年でして、社長になった時から次の社長を育てることを意識していました。本格的に動き出したのは2019年の秋で、MIC5号ファンドが組成されたタイミングです。その時点で投資と経営の分離を打ち出しました。投資のトップは元木、私は経営のトップを担うという両輪体制が始まりました。
その後、元木が投資のトップとしての役割を果たす中で、経営やマネジメントの面でも任せられるようになったという判断から、今回新代表取締役社長に就任していただきました。
元木:
2019年以降の取り組みとしては、コーポレートの動きとファンドの動きを分離しながら進めるというMICらしい取り組みができていたと感じています。これからも海老澤さんのお力を借りながら、うまくやっていきたいと思います。MICとしては体制的には大きく変わらないというのが大前提にあります。
海老澤:
そうですね。大きく変わらないところもありますが、一番変わるのは会社の顔です。代表が元木になるという点が大きな変化だと思います。
◎MICの未来像と組織文化の変革
有賀:
では、お2人が描くMICの未来像についてはいかがでしょうか?
海老澤:
MICの未来像というのは、一人が決めるものではないと考えています。我々の会社は10名ほどの小規模な組織ですから、みんなで未来を考え、作っていくのが良いのではないかと考えています。私が私がというよりも、みんなでどうしたいのかを考える。そういう組織にしようと思ってこの6年間やってきました。
有賀:
トップダウンではなく、ということですね。元木さん、この点についてはいかがですか?
元木:
まさに海老澤さんが来る前は、自分たちで会社を作るという発想を持ちにくい環境でした。海老澤さんが来てから、ある意味自由に発想していいんだよという大きな転換点がありました。ただ、自分で変えていいんだという考えに振り切っているというところまでは、まだまだ発展途上だと思います。それに対してどのようにアクションをするのかが今後の私たちの取り組みで問われているところではないでしょうか。
以前は、MICが自分を作ってくれるという考えが強かったのですが、この1~2年で少しずつ変わってきています。自分がMICを作るという意識をバリューの一つとして取り組んでいます。まだ完璧ではありませんが、2018年からは変化を感じています。
有賀:
私自身も4年前にMICと縁ができ、自由に取り組める環境だったからこそ、この番組も作れるようになったと感じていて、非常にありがたく思います。
今後社内メンバーに期待することは、MICが作ってくれるのではなく、自分たちでMICを作っていくという意識が一番大きいということでしょうか?
海老澤:
そう思います。そこがないと組織全体として辛くなってしまう気がします。全員が全部を動かす必要はありませんが、どこか一部でも自分が動かすという意識を持って行動することが必要だと思います。
◎オープンイノベーションへの取り組み
有賀:
新代表として、元木さんが注力したいMICの方向性はいかがでしょうか?
元木:
MICとしては創業来、オープンイノベーションにこだわってきました。ただ、オープンイノベーションという言葉があること自体が、(取り組みが大きく進んでいない)まだ不完全だということだと思います。これはハードルの高い取り組みで、MICの一つの方向性だと考えています。海老澤さんは事業会社でのオープンイノベーションの経験が豊富なので、その知見をMICに還元していただけると、LPの方々や投資先の方々にとっても大きな価値になると期待しています。
有賀:
オープンイノベーションは達成が難しいものなのでしょうか?
海老澤:
簡単に失敗しますね。私自身も経験がありますし、多くの失敗事例を知っています。皆さんもまだまだ苦労されているのではないでしょうか。オープンイノベーションは千差万別で、型がないと言った方がいいでしょう。各社にとってのオープンイノベーションは何なのか、を考える必要があります。よくあるのは、オープンイノベーションすること自体が目的になってしまうことです。しかし、オープンイノベーションは手段でしかありません。
オープンイノベーションを使って何を実現するのかという議論を先に始めないと、ゴールが見えなくなってしまいます。目的が明確になれば、オープンイノベーションが適切か、あるいは従来型のクローズドイノベーションの方がいいのかも判断できます。
◎新体制における課題と展望
有賀:
海老澤さんが代表取締役社長として在任中に直面した大きな課題や壁、そしてそれをどのように乗り越えてきたのかをお聞かせください。
海老澤:
組織の風土文化の変革が一番大きな課題でした。自分自身が動き、自分自身が決める。そのためには自信が必要です。自信と可能性を感じ、自分の発言が実行されるという体験をすることが重要です。
2018年に就任した時、私は意図的に決定を避けました。社長が決めるだろうと思われていたので、「決めてください」と言われても決めず、「やりたい」と言ってもらうまで待ちました。最初は皆さん驚いたと思いますが、自分が発言して実際に動くという体験をすることで、一人一人に自信がつき、なにをやったらいいですか?という考えはなくなって、思考が回り始めるんですね。
有賀:
元木さんも、この変化を体験されたのですか?
元木:
はい、私自身もそうでした。意思決定のレベルによって違いはありますが。自信がある領域では皆が動くことができますが、それ以外のことは他人任せになりがちですよね。「やっていいんだ」ということを時間をかけて学んでいったという感じです。
有賀:
新体制に移行した今、これから直面するだろう課題やその対策について、海老澤さんから元木さんへアドバイスがあればお聞かせください。
海老澤:
自分で動くことと、他者をフォローすることの両立が重要です。自信を持つことで自分も動けるし、他者も認められ、フォローができるようになります。ただし、これは流動的で、個人の意識によって変化します。この意識は常にメンテナンスが必要で、意識し続けないと簡単に壊れてしまいます。
心地よい環境は良いのですが、それは努力なしに維持できるものではありません。みんなが努力し合って作り上げているものだと思います。
元木:
ベンチャーキャピタルの仕事は一人で完結しやすい面があります。投資案件やフォローアップも基本的に自分で完結できてしまうので、他者へのフォローを意識しないと見えにくくなります。
また、投資案件は価値観のぶつかり合いでもあります。自分はいいと思っても、他から見るとそうでもない場合もある。それが人格否定のように感じられてしまうこともあります。そこを乗り越えて、お互いを認め合うことが大切です。今はその段階に到達しつつありますが、新しいファンドが始まるとまた状況が変わるかもしれません。構造的にそうならないよう、様々な工夫が必要だと感じています。
海老澤:
実は、みんなに「おせっかい」になってほしいんです。おせっかいが嫌がられるのではないか、拒絶されるのではないかという恐れがあると、フォローができません。自分の担当外でも、「こうした方がいいんじゃないか」と一言を言えるかどうか。それが回るかどうかが重要なポイントだと思います。
有賀:
ありがとうございます。ここまで前半は組織の中の話を新取締役会長海老澤さんと新代表取締役社長となった元木さんに伺ってきました。後半では、もう少し大きな枠組みで、VCとしてのMICについてお二人にお話を伺いたいと思います。前半のお話、ありがとうございました。
海老澤・元木:
ありがとうございました。
👉MIC新旧代表対談スペシャル:後編へ続く
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MICでは投資先企業を紹介する公式Podcast番組「起業家のキモチ~シーズン4~」を毎週火曜日に更新中。今回の収録音源もSpotify、Apple Podcastなど各種プラットフォームからご視聴いただけます。こちらもぜひ、お聞きください♪
◎モバイルインターネットキャピタル株式会社概要
モバイル・インターネットキャピタル株式会社(以下MIC)は、1999年の創業時からデジタルテック領域において、リード投資を基本とし、シリーズAを中心とするオールステージにてスタートアップへ投資支援活動を行う独立系のベンチャーキャピタルです。投資先のスタートアップへの支援の一環として、事業会社との事業連携等オープンイノベーションにも注力中。