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日向夏 『薬屋のひとりごと』 を読む

こんなに面白いラノベにハマったのは「なんて素敵にジャパネスク」ぶりかもしれない。そして、ひょっとしてラノベを最も現役で必要とする世代(17歳くらいまで)で読んでたら、氷室冴子以上にハマったと思う。(氷室冴子は17歳まで私の神だった。アレがあったから私は学校っていう集団生活の中で息が出来たのよ。)結局、ラノベって児童文学の一つだと思うのよ。もちろん読んでる人は大人もいるってわかった上で、言ってます。
小説一般の中での児童文学の位置づけって、「どう成長していけばいいか」っていう指針をある程度示すものであり、子供に対して大人の社会の構図をわかりやすく示しつつ導いていくというか、そういうものだと思う。そのやり方が、『俺の青春ラブコメは間違っている』みたく「ぼっちが社会化される」っていう個人の精神的な要素からアプローチするものもあれば、社会構造を示した上で、その限界を見せつけつつ飛翔するみたいなのもあるわけで。『薬屋のひとりごと』は明らかに後者で、しかも女子(と、男子の典型的なライフコースに抑圧を感じている人)を対象にしているよね。ラノベってなんだかんだ言ってサブカルなので、社会情勢と結構シンクロして描かれてるものが多いから、「女も男と同じ立場で夢を見るんだから!」っていう氷室冴子のストーリーには、素直にノれないよね、今の子たちは。男だって辛さはあるし、すべての女がおんなじことをしないといけないわけではない。けど現行での男女による構造的な問題は、「男女とかそういうの関係なく、個人の能力と方向性によって活躍しましょうよ」と言えるほどフラットじゃない。むしろ、それをやるには血反吐を吐きながら気合を入れて歩き続ける未来が待ってるわけで、そういう今の真実をスッキリさっぱり教えてくれている。
設定は、清朝近辺の中国に似せたファンタジーで、もちろんそれは作り物(嘘)なんだけど、その作り物の世界を借りて、皇帝の弟と、一介の薬屋の女の子がはぐらかし合いの恋愛を繰り広げながら政争に巻き込まれるという荒唐無稽な嘘くさい筋立てなんだか、その嘘の中で際立つ「真実」がなんとも絶妙なのです。
一冊が分厚くて年に一回しか発行されず、最新刊は来年2月以降の発売だと思われるが禁断症状が出そうだ、、、。何しろ、この三日間、一巻400p弱ある文庫を9巻一気読みしたからな、、、。もう昼夜の区切りがわからないからな。そしてこれから2週目に入ります。幸せすぎて鼻血出そう。ちなみにモノクルのおっさんが一番好きです。いやあ、それにしてもはぐらかしてきた皇弟どのと薬屋のぬるい恋愛だが、「薬屋最愛のオヤジ」が「皇弟どの」と同じ属性の生き物だったって自覚しちゃった9巻である意味もう最高潮迎えて詰んでるからこれ以降は消化試合だな。あとさ、違う領域で生活力のある人間同士は、そう簡単に一緒になれないよって書いてるのもなんともいいです。夢がなくて。

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