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最後の英語の授業

いつかやってみたかった、中東のパレスチナ問題に関わる授業。とても内容がデリケートなので難しいのですが、高校3年生で扱った最後の単元が丁度ここに関わる内容だったので、思い切って突っ込んでみました。

結果、少しは話題に関して考えるきっかけを提供できたかな、と思っています。
欲を言えば、世界史や現代社会の先生とタッグを組んでやりたかったんですが、ここまでは時間が割けず・・・次までの課題です。

せっかくなので、簡単に流れを記録しておこうと思います。

導入はBanksyの写真から

対象は高校3年生なので、世界情勢として、ある程度この問題については知っていてほしいところですが、どうしても「教科書で学んだ話」の枠から出ないので、教科書に加え、写真や動画、外部リソースを多く使いました。

その中のひとつが、Banksyの落書きアート写真です。

毎回、授業の最初に、パレスチナ問題に関わるアート写真を用意して、何が描かれているかと、あえてざっくりと印象を聞いて、「どこからそう思う?」「そこからどう思う?」と深めていって(英語)から、展開へ。

この流れは、「13歳からのアート思考」(ダイヤモンド社)を参考にしています。

内容をイメージ化してリテリング活動

毎回、授業の最後にはRetellingをさせるのですが、そこに至るまでに、教科書本文を読んで、本文内容に関連した動画を視聴して、その後にRetelling活動を入れます。

動画の視聴前に「このあとにretellingに入るから、動画を見て、関連するキーワードを3つ、自分で決めること」。

内容に関連した写真や動画などを使うことで、英語の単語や表現の字面と、イメージを容易に繋げることが出来ます。ただ文字で覚えるだけではないので、頭にも残りやすいんですね。

(本来は、本文内容からイメージを膨らませてほしいところですが、ここは生徒のレベルに合わせるとして。)

このプロセスを入れている理由は、2つあります。
1つは、英語からはずれて、パレスチナ問題に触れること。
もう1つは、英語の「reproduction」ではなく「retelling」をすること。前者は、教科書本文の再生、後者は、内容を理解して自分の言葉で伝えること、です。

村上春樹氏 エルサレム賞受賞スピーチ

高校3年生なので、この単元の最後には大学入試問題を持ってきました。

2017年 滋賀医科大学で出題された、作家・村上春樹氏によるエルサレム賞授業スピーチの一部抜粋です。

少し古いですが、東洋経済さんの記事で紹介されていました。

全文と、実際の様子はこちら。(授業では動画は見せていません)

これまでの授業で学んだことを基にして、このスピーチ内のメタファー(隠喩)が何を指すのかを考えること、そして、この場で、この内容のスピーチをすること、それが意味することを考えてほしい。

だから、これを最後に持ってきました。

「どっちが悪い」ではない

デリケートな問題な分、絶対に避けたかったのが、「誰が悪い」「どっちが悪い」としてしまうこと。

私自身、両方の側に知り合いがいるので、目の前の生徒達にそういったイメージを持ってほしくないのが、正直なところでした。

なので、エルサレム賞受賞スピーチについて考えた後、最後の最後の締めに持ってきたのは「イスラエルからの声」です。

私が過去、何度もオンライン交流をしているイスラエルの先生に、生の声を共有してもらいました。(実際の接続は様々な側面から難しかったので、預かった手紙(英語)を私が読み上げる形になりました。)

どっちが悪いとか、どっちが可哀想とか、そういう話ではありません。

この後もう一度、世界史や現代社会の教科書を読み返してほしい。1つでいいから、ニュースを探して読んでみてほしい。

その時、あなたは何を思うか。
どこから、そう思うのか。
そこから、どう思うのか。

あえて、意見は吸い上げないまま終わらせてもらいました。

補足ですが、英語の授業なので、もちろん英文読解もしています。
でも、読み解くことがゴールではなく、読解やリスニングは、あくまでその先にあるゴールまでの過程です。

また、使用する教材は、従来の教科書+資料集に加え、Banksyのアート写真、YouTube動画、大学入試問題を使っています。何を使うかは、単元を組み立てる段階で、自分で見て選びました。

私達も、普段何かの情報を得る際、何か1つしか使わないということはないと思います。テレビ、ネットニュース、YouTube、本屋で売られている本、新聞など、様々なものから学んでいます。

普段の生活では自分で読むものをピックアップしますが、授業ではそれを教員側で選んだだけです。

最初にも書きましたが、興味深い形にできたと思う一方、課題も残ったので、次は教科横断(もしくは融合)できるように考えていこうと思います。


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