見出し画像

Vol.3 滋賀 羊毛を洗う

羊毛の選り分けの続きです。

毛糸になるべく選ばれた2.7kgの羊毛たち。今回はこれを洗います。

画像1

洗いの作業は天気の良い日に。室内にこもって作業すると、むせ返るほど羊の匂いが充満します。決して嫌な匂いではないのですが、とにかく濃い生きものの匂い。窓を開け放し、風が通る日に作業しています。

はじめに、羊毛の汚れをお湯につけて落とします。羊毛は揉むと毛が絡み合い、硬く縮んでしまいます。このフェルト化を防ぐために、大きめのネットに入れて、できるだけ羊毛を動かさないようにします。作業しながら、羊毛を観察。ひと房ひと房(ステイプル)がしっかり残って良い状態です。

画像2

羊毛が擦れ合わないように、やさしくゆっくりお湯につけてしばらく置きます。動かさず、ふわっととろけるように。これだけでだいたいの汚れが落ちますが、再度、石鹸水を入れたお湯につけ、少し脂分を落としました。

実は、洗う前の羊毛は、ベトベトしています。これは、貴重なラノリンという成分で、良質なクリームや化粧品に利用されているもの。保湿保温を高める効果もあります。毛糸やニット製品にしたときに、抵抗なく身につけられる程度に、ほどよく脂分を残す、洗い具合がポイントです。

画像3

「洗う」と言っても、ほとんどお湯につけ置きするだけ。これで、真っ白な姿が現れます。数回すすいで、お湯が透明になってきたら水気を切って、こんな仕上がりに。全く違う羊毛になったような白さ。ステイプルの先が黄ばんで見えますが、このあとほぐすと不思議と真っ白になるので大丈夫。

画像4

できるだけまとまりを崩さないよう羊毛を広げ、風の当たる場所に干します。ふわっと柔らかな羊毛たち。そして、お湯洗いでは取りきれなかった、羊小屋の藁や、牧草地のさまざまな植物がついています。羊毛の利用を前提にされた羊は、カバーで覆われ、毛に汚れがつかないように飼育されますが、この羊はあるがまま、あちこち飛び回って暮らしていた生後1歳の男の子。その痕跡を見たと思うと、ゴミを取り除く作業も少し楽しくなりそう。

画像5

藁などを指やピンセットで一つずつ拾う作業は根気が要ります。もうこの位でやめようかと何度も思いながら、あとちょっと、あとちょっとと、とにかくがんばります。細かい汚れは、この後のほぐす作業で取れるので、このあたりで完了です。

画像6

真っ白のふわふわに膨らんだ羊毛の姿は感動もの。次は、羊毛をほぐし繊維にする作業です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?