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いい夢をみる(5) 猫の哲学

すごく面白いのに、悪夢を見る作品がいっぱいある。
悪夢を見ると一日嫌な気分になる。
だったら逆に、いい夢を見れる文章が書けないかと思う。
特に死にたい人にはいい夢を見てほしい。

こうやってやっと少し言葉になったので、noteマガジンのタイトルも変えた。
今はまだ暗号文とかお経みたいだけど、パズルみたいに文章が組み上がっていて書いていてすごく面白い。
多くの人にとっては全く意味のない文章だと思うけど、万が一面白かったりいい夢を見れたらぜひ教えてください。


猫の哲学

今日、猫は少し真面目だった。いつもは真面目なフリをしているだけだったから、今日こそはと真面目な顔をしている。人間はそんな猫を見て笑う。猫は真面目な顔をすると笑われるのだと少し嫌になってきた。不貞腐れて、ごはんをプイっと残す。すると人間は嫌な顔をする。その顔を見るのが猫の楽しみだった。満足して昼寝につこうとすると、人間が何か騒いでいる。ごはんの残し方が気に入らないらしい。だけど、そんな事はどうでもよいのだ。今日は暑いから、少し涼しいところに移動する。人間が邪魔だったから、いない事にした。少し寂しいけれど、今の気分にはちょうど良い。今日は風通しの良いところで、真面目な気分でいたいのだ。だけど、一分もすると飽きてきた。真面目な一日が早速終わってしまった。邪魔にした人間をちょっとずれた場所に戻す。そうしたら、人間からも適度な距離と、少し真面目な気分からも少し抜け出して、ふわふわした気分になった。猫は、この感じを真面目に探そうとしていたのだった。まずは探すことをやめないと、この気分には出会えない。求めれば求めるほど遠ざかる。深遠な哲学を思いついたので、ソクラテスの家にやってきた。生憎彼は留守だった。代わりに弟子たちに今日の発見をおしえてあげた。弟子達は感動で涙を流しながら、ソクラテスの弟子を辞め、猫の弟子になった。猫の弟子達は、猫のためには全く働かず、真面目な振りをしている猫を陰で笑った。猫は悔しくなって、どうでもよくなって一緒に笑った。楽しくなってきたので、みんなで座って川の風を浴びた。陸上の世界大会で優勝したのと同じくらい嬉しい気持ちが込み上げてきた。優勝して思いっきり胴上げされる猫は、遥か彼方まで飛んでいき、空の点になった。そこから三回転を何回もしながら帰ってきた。ちょうどソクラテスが戻ってきたので、猫は弟子を返してあげた。猫の懐の深さに感動したソクラテスは、お菓子の「ル・マンド」を差し出して猫をもてなした。哲学をするとお菓子がもらえる。それが猫の哲学だった。真面目な顔をしている猫には、目を合わせないようにしながらおいしいお菓子を差し出すと最高に喜ぶのだと、世界の秘密の一つを知った気分になって紅茶を飲む僕が鏡に写っていた。鏡の中の僕は少しだけ物知りだったから、先に用意していたお菓子を僕にもわけてくれた。こっちがわの僕は向こう側の僕に紅茶を分けてあげて二人で楽しんだ。その様子を横目で見ていた猫は心の中で深く頷いた。僕はそれを見ない振りしていたけど、猫は気づいている。そろそろ心の読み合いに疲れてしまったので、猫に特別おいしい缶詰をあげた。僕も一緒に缶詰を食べた。同じだねと心の中で言い合いながら、真顔で見つめあった。なんだかそれがすごくよかった。


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