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1988年生まれのドイツ人選手ベストイレブンを考える。 FOKUS Bundesliga!!! #5

前書き

 2014年7月13日、今日からちょうど10年前にマラカナン・スタジアムで行われたワールドカップ決勝でリオネル・メッシ擁するアルゼンチン代表に勝利し、ドイツ代表が史上4度目となる「世界王者」に輝いた。

 同大会のドイツ代表にはいくつか特徴がある。なかでも気になるのは23名の代表メンバーのうち、5選手が「1988年生まれ」だったことだ。同じ年に生まれた選手が選ばれることはあっても、5選手というのはなかなかである。1988年生まれの次に多かったのは1992年生まれの3人。1988年生まれのメンバーが突出して多かったことが分かる。

 1988年生まれは2014年時点で26歳となる選手たちである。たしかにピークを迎える時期ではあるが、それにしても特徴のある選手選考だ。実際、2014年のワールドカップでベスト4まで進出した他のチームと比べても、オランダ代表は1人、ブラジル代表とアルゼンチン代表は3人ずつだった。

 1988年はドイツに優秀なサッカー選手が数多く生まれた年だ。本テキストではそんな1988年に生まれたドイツ人選手のなかから各ポジションの優秀な選手を選び、べストイレブンを組んで紹介する。

1988年生まれのドイツ人ベストイレブン

GK マヌエル・リーマン

生年月日:1988年 9月 9日
出身:バイエルン州 ミュールドルフ郡
身長:186cm 利き足:右
キャリア通算:521試合 0得点

実績とキャリアを考えれば、1988年生まれ最高のドイツ人ゴールキーパーはスヴェン・ウルライヒだという人もいるだろう。1人のバイエルンファンとして私も同意したいが、リーマンの方がより優れていると感じるのも事実だ。ゴール前での対応の安定感、ショットストップの確実性、キャッチングの巧みさ、相手フォワードに放つ気迫めいたプレッシャーはブンデスリーガ屈指のものだ。

リーマンはブンデスリーガ1部で長く活躍した選手ではない。ユースチームから所属したSVヴァッカー・ブルクハウゼンでデビューし、2010年にVfLオスナブリュックへ移籍。ドイツ3部で安定した出場機会を得て、2013年に当時2部のSVザントハウゼンへ移籍した。ボーフムへ移籍したのは2015年。そして2021/22シーズン、ボーフムのブンデスリーガ昇格に貢献すると以降3シーズンに渡るクラブのブンデスリーガ残留の立役者となった。

同世代の選手たちが引退を決意するなか、リーマンはリーグ内での評価をいまだ高め続けている。リーマンの今後のキャリアが楽しみでならない。

RB ベネディクト・へ―ヴェデス

生年月日:1988年 2月 29日
出身:ノルトライン=ヴェストファーレン州
身長:187cm 利き足:右
キャリア通算: 386試合 28得点

1988年はドイツに多くの天才的なディフェンダーが生まれた年だった。その筆頭ともいえるのがベネティクト・へ―ヴェデスだ。2009年のフリッツ・ヴァルター・メダル金賞の受賞者であるへ―ヴェデスは名門シャルケのユースの出身で、かつシャルケに長く貢献した功労者だ。2001年にシャルケのユースチームに加入し、2007年にトップチームでデビュー。2017年にユヴェントスへレンタルされるまでキャプテンを務めるなど、クラブの象徴的存在として活躍した。

へ―ヴェデスの特徴はドイツ人らしいフィジカルを活かした粘り強いディフェンスセットプレーの強さ。とくにセットプレーでの得点力はへ―ヴェデス最大の特徴で、チャンピオンズリーグ本大会でもシャルケの選手として出た35試合で5ゴールを挙げるなど、勝負強さに定評がある。センターバックに加えて、両サイドバックとしてもプレーできる守備のマルチロールであるへ―ヴェデスは、クラブのレジェンドとしてシャルカーたちに記憶されている。

CB ジェローム・ボアテング

生年月日:1988年 9月 3日
出身:ベルリン
身長:192cm 利き足:右
キャリア通算: 577試合 13得点

自殺した元彼女との関係、ファッション・フリーク、異様に多い負傷での離脱・・・サッカー選手として以外の一面やほとんどプレーできないという印象が強いボアテングだが、キャリアの絶頂期はグアルディオラ監督率いるバイエルンの中心選手としてドイツ年間最優秀選手に選ばれるなど、ヨーロッパを代表するディフェンダーとしてプレーした。

ベルリン出身のボアテングはヘルタ、ハンブルク、マンチェスターシティなどでのプレーを経て2011年にバイエルンへ加入。ダンチとコンビを組んだ2012/13シーズンにはクラブの3冠達成に貢献し、2014年のワールドカップ決勝でも優勝を経験した。

そんなボアテングの絶頂期は2015/16シーズン。第8節・ドルトムント戦の2アシストに代表される、センターバックでありながらプレーメイカーのように振る舞うスタイルでリーグ最高のディフェンダーという評価を確立した。腹違いの兄であるケヴィン=プリンスと同じく、圧倒的なフィジカルと足元のテクニックを兼ね備えるジェローム。絶頂期は「新たな皇帝」などとも称される存在であっただけに、現在のキャリアや評価は残念でならない。

CB マッツ・フンメルス

生年月日:1988年 12月 16日
出身:ノルトライン=ヴェストファーレン州
身長:191cm 利き足:右
キャリア通算: 661試合 51得点

2008年1月、19歳でドルトムントに加入してから計13シーズンにわたって同クラブを支えたレジェンド的存在。2016/17シーズンから3シーズンにわたって古巣のバイエルンでプレーした際にはブンデスリーガ3連覇を経験。DFBポカールでは3度優勝を経験するなど、数多くのタイトルホルダーである。チャンピオンズリーグ決勝にも2度出場した。

フンメルスの驚異的な能力は後方から前線に展開するパスの精度の高さ。自陣ゴールライン手前からでも、ハーフライン付近からでも、ゴール前の選手やスペースにむけて正確なボールを送ることができる。得点につながるような、相手ディフェンダーが対応できないパスを、アウトサイドのキックからくり出す姿はフランツ・ベッケンバウアーを彷彿とさせる。

フンメルスがドイツ代表にとっていかに重要な存在であったかは言うまでもない。2014年にワールドカップで優勝したチームの守備の要は間違いなくラームとフンメルスだった。ポジションを捨てがちなボアテングのスペースをフンメルスがカバーするという守備面、ノイアー、ボアテング、クロースとのビルドアップはドイツに抜群の安定感をもたらした。

LB マルセル・シュメルツァー

生年月日:1988年 1月 22日
出身:ザクセン=アンハルト州マクデブルグ
身長:180cm 利き足:左足
キャリア通算: 367試合 7得点

2008/09シーズンの第1節・レバークーゼン戦でデビューを飾って以来、12シーズンにわたってドルトムントを支えたシュメルツァー。クラブレジェンドであるデーデーの後継者として起用されるようになって以来、ユルゲン・クロップ監督率いるドルトムントの中心選手として活躍した。

フリーキックも任される精度の高い左足のキックとオーバーラップを武器とする左サイドバックとしてプレーしたシュメルツァー。レアル・マドリード相手に得点を挙げるなど、大一番でも活躍した。キャリア晩年は負傷に悩まされたが、ドルトムントの「ワンクラブマン」として、ファンから愛されている。

CM ラース・シュティンドル

生年月日:1988年 8月 26日
出身:ラインラント=プファルツ州シュパイアー
身長:180cm 利き足:右
キャリア通算: 566試合 138得点

2010年代のドイツ代表はタレント揃いだった。ミュラー、ロイスなどのドイツ代表「常連組」以外にも、ブンデスリーガで活躍した選手がいた。その1人がシュティンドルである。シュティンドルはカールスルーエのユース出身。2008年の3月にブンデスリーガデビューを果たすと、2010年にハノーファーへ移籍するまでプレーした。

ハノーファーではキャプテンを務めるなど評価を挙げたシュティンドルは2015年、名門ボルシア・メンヒェングラートバッハへ移籍を果たす。2022年の退団までにチームを勝利に導く得点を数多く挙げた。2010年台後半のグラードバッハを代表する選手だ。

CM ケヴィン・グロスクロイツ

生年月日:1988年 7月 19日
出身:ドルトムント
身長:186cm 利き足:右足
キャリア通算: 試合 得点

ケビン・グロスクロイツほどサッカーの才能に溢れた選手もそうはいないだろう。中盤や右サイドバック、左ウィングなど複数のポジションでプレーできるユーティリティープレイヤーであり、鋭いクロスやシュートを武器とした選手だ。何より彼によって幸運だったのはキャリアの絶頂期をユルゲン・クロップ率いるドルトムントで過ごすことができたことだろう。

2006年にロート・ヴァイス・アーレンでデビューしたグロスクロイツは2部での活躍もあって2009年ドルトムントへ移籍を果たす。移籍後すぐ先発に定着すると、2010/11シーズン、2011/12シーズンはリーグ戦でそれぞれ8ゴール、7ゴールを挙げ、クラブのリーグ連覇に貢献した。

彼のプレースタイルは、その勤勉さとエネルギッシュな走力が特徴で、試合中のピッチを縦横無尽に駆け回る献身的なスタイルで知られた。グロスクロイツのキャリアは順風満帆ではなかった。いくつかのトラブルやスキャンダルに巻き込まれ、その影響で一時的にパフォーマンスが低下した。それでも、彼は常に困難を乗り越え、再びピッチ上で輝きを放った。

RM マックス・クルーゼ

生年月日:1988年 3月 19日
出身:シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州
身長:180cm 利き足:左足
キャリア通算: 試合 得点

マックス・クルーゼは、世間的に知られている選手ではないかもしれない。代表で活躍した実績はなく、リーグやポカールでの優勝経験もない。しかしブンデスリーガを知る人であれば、マックス・クルーゼがいかに才能溢れる選手だったかは忘れようがないだろう。ザンクトパウリフライブルクグラードバッハヴォルフスブルクブレーメンウニオン・ベルリンなどの様々なクラブへ移籍したにも関わらず、どのクラブでも攻撃の中心を担い、欠かせない存在となったのだ。

左利きのシャドーストライカーであるクルーゼは、ライン間でボールを受け、少ないタッチ数でシュートに持ち込むことに長じた選手。左足のキックは威力と精度が高く、ボックス内の比較的ゴールから離れた位置からも得点を狙うことができる。またスルーパスや右足のシュートも選択肢にあるなど、小柄な体躯を活用して相手守備陣の脅威になれる。ポーカーのプレイヤーとしてもかなりの腕をもつことや2015年には交通事故を起こすなど、いささかトラブルメイカーとしても知られるクルーゼは2010年代のブンデスリーガを代表するアタッカーの1人だ。

LF メスト・エジル

生年月日:1988年 10月 15日
出身:ゲルセンキルへン
身長:180cm 利き足:左足
キャリア通算: 605試合 97得点

才能溢れる1988年生まれのドイツ人選手たちのなかでも、バロンドールを受賞できる可能性があった人物はメスト・エジル以外に思い当たらない。トルコ系ドイツ人であるエジルはロート・ヴァイス・エッセンシャルケのユースを経て、2008年にブレーメンへ加入。クラブは2008/09シーズンのリーグ戦を10位で終えたにもかかわらず、エジルは3ゴール15アシストを記録するなど圧巻の結果を残し、2010年にレアル・マドリードへの移籍を果たす。

モウリーニョ監督率いたレアル・マドリードではクリスティアーノ・ロナウドとコンビでラ・リーガを席巻。2013年に加入したアーセナルではトップ下として攻撃に違いをもたらす役割を担い、アレクシス・サンチェスと猛威を振るった。2014年には左ウイングとしてプレーし、ワールドカップ優勝に貢献したことは言うまでもない。

エジルの能力を端的に説明することは非常に難しい。トルコ系の選手らしい左足の繊細なテクニック豊富なアイデア、ブンデスリーガで培われたであろうスピード発想の瞬発力、ドリブルもスルーパスも長けているゆえのプレーの幅広さ。なにより言葉で言い表せないエジル独自の緩急がありながら、そのプレーがコンスタントであるという「能力」がエジルの特別さであるように思う。

2018年のエルドアン大統領との会合とドイツ代表の凋落に伴って、エジルのドイツ国内での評価や印象が著しく下がったことや一部のアーセナルファンがいわれのない批判を彼に向ける事実は残念でならないが、サッカーファンであればエジルがいかに特別な存在であり、「憧れ」の対象となりうる人物であるか理解できるだろう。

ST ニルス・ペーターゼン

生年月日:1988年 12月 6日
出身:ザクセン=アンハルト州ヴェルニゲローテ
身長:187cm 利き足:右足
キャリア通算: 522試合 193得点

ブンデスリーガを代表するスーパーサブのストライカーといえば、それはニルス・ペーターゼンに他ならない。途中出場からリーグ記録となる34ゴールを挙げた同選手はフライブルクの「頼りになる存在」だった。

2007年、当時ブンデスリーガ2部に所属していたカールツァイス・イェーナでデビューしたペーターゼンは、2008/09シーズンの冬にブンデスリーガ1部のエネルギー・コットブスへ移籍。チームはプレーオフの末に2部に降格してしまうも、ペーターゼンは主力となり、2010/11シーズンには25ゴールを挙げて2部の得点王に輝いた。

2011年に王者バイエルンへの移籍を果たすも出場機会を得られず、ブレーメンで2シーズン半をすごしたのちにフライブルクへと移籍した。2015/16シーズンを2部で過ごしたフライブルクでペーターゼンは21ゴールを挙げる活躍を魅せて1部復帰の原動力となった。フライブルクのレジェンド的存在であり、ファンから「フッスバールゴッド」と認識されるのも頷ける選手だ。

ST  シモン・テロッデ

生年月日:1988年 3月 2日
出身:ノルトライン=ヴェストファーレン州
身長:192cm 利き足:
キャリア通算: 試合 得点

シモン・テロッデは、ドイツサッカーのファンにとって特別な存在だ。彼はブンデスリーガやブンデスリーガ2部での得点力で名を馳せ、数々のクラブでゴールを量産してきた。ケルン、シュトゥットガルト、ボーフム、シャルケなど多くのクラブを渡り歩いた彼は、どのクラブでも重要な役割を果たし、特にツヴァイテリーガでの得点王の常連として知られている。

テロッデは、高い得点力とポジショニングの巧みさで評価されるストライカー。彼のプレースタイルは、ペナルティエリア内での冷静なフィニッシュと、空中戦での強さが特徴。背が高く、フィジカルに優れたテロッデは、クロスからのヘディングやセットプレーからのゴールを得意としている。また、ポジショニングのセンスが抜群で、常に相手ディフェンダーの隙を突いて決定的な位置にいることができる名選手だ。


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