指先の記憶


あなたの匂いがしたような気がして

薄い眠りから引き戻される夜明け前

どこかに置いたままの

感情を思い出す

自分に眠っている振りをして

もう一度 せめて夢の中で


手を伸ばして指先が触れるだけでも

柔らかなその前髪を覚えてる

手を伸ばして風が指を抜けるだけでも

深く澄んだ夜の刹那を覚えてる

手を伸ばして

ただ指先が触れるだけでいい

まだ 

あなたの熱い鼓動を覚えてる

手を伸ばして

せめて指先が触れるだけでも

せめて夢の中でも




息切れするような日々をなんとか過ごし、ふと我に返る瞬間が訪れることがあります。きっかけは人から言われた軽い言葉だったり、思いがけない夢の内容だったり。だからといって何かが大きく変わるわけではないけれど、見える景色が少しだけ変わるような気がします。