さよならはどこかへ 2
4月7日
緊急事態宣言が発令されると同時に母親が家を移った。我が家は元々母親と2人暮らしで、来週リフォームした祖母の家に引っ越しの予定だったが新型ウイルスの影響で延期に。母親は毎日渋谷まで通う娘がウイルスを持って帰るのではと怖いらしく、リフォームした祖母の家に娘を置いて先に移ったのだ。
家に帰る道すがら、毎日好きなものが食べられる!と少し小躍りしそうになる。母親とは味の好みが合わず、こんなこと言うのもはばかられるがあまり美味しくはない。
3年前に1人で住んでいた時期があり、その頃よく作っていたひじき煮を思い出す。私が作るひじき煮はとにかくひじき以外の具が多い。一般的にはにんじん、大豆の水煮、油揚げなど各家庭によって好きな具材を入れると思うが、私は一般的な具材と併せてこんにゃく、厚揚げ、ちくわ、れんこん、たまに牛すじをぶち込む。具材が多いひじき煮は白いご飯と味噌汁があれば満足できる。以前は食べる前日の晩に仕込むほどの気合の入れようで、味を染み渡らせたひじき煮を翌日の夜ご飯に食べていた。ひじき煮は飽きたことが一度もなく、当時は毎日作っては食べる作業を繰り返していた。
緊急事態宣言が発令される前からスーパーや食品売り場は時短営業をしているため、閉店間際だった東急ストアへ慌てて駆け込む。
家に帰ると真っ暗な部屋から2つの光が。一緒に連れて行かれたと思っていた飼い猫が寂しそうに廊下で待っていた。猫も私と同じように置き去りにされたのだと悟る。
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