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愛犬から学ぶ、正直さ

私の実家には、17歳の犬がいる。犬の平均寿命が10~13歳なのでかなりのお年で、よく見ると目も白内障で白濁していて、叫んだり床をたたいても聞こえないくらい耳も遠くなっている。去年はまだ自分で歩けたりトイレに行けたりしていたけど、今年に入ってからはオムツ生活に。最近とうとう歩行器デビューをしたみたいで、母から送られた写真を見て、何とも言えない気持ちになった。

ついに歩行器デビュー。。。


男の子で、名前はチョコちゃんだけど、いろんなあだ名の持ち主で、もう本名を忘れているんじゃないかと思うくらい。私が9歳でアメリカにいた頃に飼い始めた犬なので、26歳の今の自分になるまで、長年連れ添ってくれている大切な家族の一員。

初めてチョコちゃんと会った日のことは今でも覚えている。犬が欲しいと親にせがみ続けたところ、ついに親も合意してくれて、賢くて毛が抜けないし匂わないという、極めて合理的な理由でプードルに決定。かわいいプードルのイメージば茶色かアイボリーだったので、姉の案で名前も「チョコちゃん」に決めていたと思う。色々経て、知人の紹介でコロラドの山奥のケンネルに行き、プードル3匹とご対面した。

3匹のうち、2匹はアイボリーで1匹だけ黒。アイボリーの子たちは体が小さめで大人しく、ぬいぐるみのようで愛くるしい。黒色の子は抱き上げるなりギャンギャン鳴いて抵抗し、あまり私に関心を見せず、自分の好きなようにそわそわ動いているような子で、正直あまり惹かれず。。。しかし最終決定権は親にあり、一番元気そうで健康そうだからと黒色の子に決定。少しがっかりしながらも、念願のわんちゃんが来るのでわくわくして、連れて帰るときも私が膝の上に乗せて帰った。


車の中で、タオルを膝の上に敷き、小さくて黒い、そわそわして落ち着かない、ふわふわの毛のかたまりをなんとか膝の上におさめて帰った。その時流れていたノラジョーンズのアルバムを聞くと懐かしくなる。

10歳の私と、子犬のチョコちゃん。
まだ連れて帰って間もない頃。

元気そう、という母の予想は当たっていたけど、同時に自我がものすごく強い犬だった。正直、犬だからかわいがってもらえるけど、これで人間だったら友達は少ないだろうな。。。というような性格で、俗にいう「犬らしさ」には当てはまらない感じ。どの写真を見ても、むすっとしているか、少し不満げな顔ばかりしている。つんとしていて他の犬と戯れることもなかった。犬を飼うのが割と初めてな私たちにも非があったけど、トイレトレーニングにはだいぶ苦労したし、怒られたら反逆して、壁に穴を掘ったりトイレシートをめちゃくちゃにしたり。。。親のストレスが溜まっていくのも目に見えて、やっぱり犬を間違えたんじゃないか、と思うときもあった。友達たちの犬はみんなハッピーで人なつっこくてお利口な犬たちばかりだったので、犬はみんなそうかと思っていた。当然のことだけど、犬にも性格があるということをチョコちゃんを通して知った。

いつもなんとなく不満げな感じ。。。


でも、きっとチョコちゃんのその強い精神力があったからこそ、日本行きの13時間超えの飛行機の旅も、犬を飼える家に私たちが引っ越すまでの離れ離れの生活も乗り越えてくれて、こうやって長生きしてくれているんだと思う。子犬の頃から雷に微動だにしない肝の座りようで、体は小さいのに大きな犬が近づいても決して動じない(むしろ向こうを怖がらせるという、、、謎のパワーの持ち主)。数年前から肝臓癌など、病気をいくつか持っているけど、食欲は健全。今は年をとって丸くなったのか、それとも少しボケたのか、顔を近づけてもうならなくなったし、嫌がっていた抱っこもさせてくれる。

ここまで割とネガティブなことばかりでしたが、決してそればかりではありません(笑)つんとした不愛想なところはめちゃくちゃ可愛いし、センシティブで優しい一面もある。家族が喧嘩していたらそわそわして逃げたそうにするし、悲しそうにしている人に寄り添ってくれる。私が泣いていたとき、顔を私の手のひらにそっとのせて、慰めてくれたことがある。

チョコちゃんは好かれようとしたことがない。好かれる努力をしてなさすぎて、大丈夫かな、と思ったこともあるけど、たとえ私たちから怒られたり、苦笑いされたり、他の犬から嫌われたりしても、「犬らしくない」自分の性格を曲げようとしたことは一切ない。純粋な心を持つ動物だから、自分に正直でいるほかなくて、変わろうという発想にすらならないのかもしれない。だけど、自分を貫くことが難しい人間の私にとって、堂々と心のままに生き、それなりに幸せそうにしているチョコちゃんは尊敬に値する。

大事なのは、良い印象を与えることを心掛け、好かれることを意識すること以上に、自分や周りの人たちに対して正直であり続け、大切な人たちに愛情を注ぐことかもしれない。それを実践的に教えてくれたのはチョコちゃんだと思う。もし周りが気になりすぎて、自分に嘘をついているのに気付いたら、チョコちゃんを思い出そうと思う。

今年、26歳の誕生日を一緒に祝ったとき。

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