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音楽は「所有する」時代から「出会う」時代へ。

押し入れの中には、段ボール箱いっぱいのカセットテープが眠っている。高校の頃、CDラジカセで一生懸命編集したやつだ。ラジカセ本体は度重なる引越の折りにどこかへいってしまったので、カセットテープはもう聴くことのできない遺跡のようなもの。

ほんの気まぐれに、Spotifyで当時カセットテープで聴いていた曲を検索した。

すごい、さすがに何でもというわけではないけれど、ちゃんと懐かしい曲がみつかる。そして、こんなふうに簡単にリンクが貼れる。押し入れの中に眠っていた歌は、遠いインターネットの向こうから再びやってきた。箱に閉じ込めていたはずの音楽が、いつのまにか自由に飛び回っていたのだ。

自分で編集したプレイリストを公開することもできる。フリーマガジン「フリースタイルな僧侶たち」では、僧侶によるプレイリストが公開されている。お経のようにリフレインされる曲、というコンセプトが面白い。

Spotifyのようなストリーミング・サービスがポピュラーになり、音楽は「買って所有してから聴く」時代から「無料もしくは定額で出会う(所有しない)」時代へと移り変わった。リスナーにとってはありがたいけれど、ミュージシャンにとってはどうなのだろうか。

アメリカのミュージシャンの収益は、国内音楽業界の売上全体の10分の1しかないと言われている。ストリーミングで1回再生されると、アーティストに入る収益は平均0.006〜0.0084ドル(約66〜93銭)(参考:Amy X. Wang ”ミュージシャンはどのように稼いでいるか? 複雑化する著作権ビジネス” RollingStone)。国境を越えてファンがいるメジャーなアーティストの場合は莫大な利益となるけど、インディーズのミュージシャンにとっては雀の涙。まさに勝者総取りだ。

ただ、ストリーミング・サービスは、それまで全く知らなかったミュージシャンとの出会いの場になる。私は最近、Spotifyで折坂悠太を知り、それからヘビーローテーションで聴いている。

好きなミュージシャンの歌はライブで直接聴きたい。そして、ライブへ行ったら、ストリーミングで聴けるとしてもやっぱりCDは買ってしまう(そして可能ならサインをいただきたい)。

ストリーミング・サービスは、それ自体はミュージシャンにとってあんまり収益にはならないかもしれないけれど、新しいファンを得る場になるんじゃないだろうか。



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