書きたい欲は、性欲に似ている。

何か書きたいことがあるとき、他の人が先に書いた資料を読み込んでおかなくちゃいけない、という気持ちになる。自分の考えだけでは浅はかだ。知識を補っておきたい。そして、その上でオリジナルのことを書きたい。いいや、オリジナルなことなんて書けないかもしれない。すでに書かれていることを違う言い回しで繰り返すだけかも。それでも、先に出された本を読み込まないと、なんだか不安。

ある意味では慎重で誠実。ライターの仕事として書くなら、まあそれは基本。でも、自分のための文章を書こうとしているときは、これではなかなか前に進めない。

なぜ、書こうとしているのか？伝えたいことがあるから？そういうときもあるけれど、いつも「伝えたいから書きたい」のかと言えば、それは違う。自分の中に降り積もっていく澱を文章にして吐き出したい、そういう欲求のほうが強い。読んでもらえるかどうかは二の次だ。ましてや、読んで理解してもらうことなんて求めない。ただ書きたいから、書きたい。それはまるで自慰のように。そうか、書きたい欲は性欲に似ているのかもしれない。

書けない日々が続くと、悶々としてくる。吐き出したくて溜まらない。別に相手なんていなくていいのだ。……いや、いたほうがやっぱりうれしい。独りよがりの行為のように、勝手に自分だけ出すもの出して気持ち良くなってる。相手の感想なんてお構いなしに。……いや、本当は相手も快楽に浸ってくれたほうがうれしい。そのためにどうしたらいいか、小手先のテクニックばかり考えてしまう。それよりももっと大事なものが、本当はあるはずなのだけれど。