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新しい小説のための習作

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新しい小説のための習作(一)

新しい小説のための習作(一)

日が伸びてきた。もうすぐ七時になろうとするのに、外はまだ明るい。
根岸仁は、窓の桟を椅子代わりにして寄りかかると、煙草を器用に潰れた箱から一本飛び出させて咥え火を点ける。うつむくと、長く伸びた前髪が彼の目元を隠した。

立ち呑み屋で明るいうちから呑み始めるのが、このところの根岸の日課になっていた。
店は、表通りから一本裏に入った路地の二階にある。ビルとは名ばかりの古びた建物で、外階段は今にも朽ち落

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