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傷つける勇気が出ないから

年度の終わり

集会で前に立つ偉い人

考え事の最中、BGMは長い長いお説法

それが人を集めてまで話す話題なのかが疑問だが

マァ社会で生きる以上、おとなしくしといた方がいい時はあるものだろう

そう考え大人しく聞いてるフリをするものの

暇を持て余しすぎてさっきから頭の中はネガティブなもので埋め尽くされている

小さくため息を吐いてふとポケットを見ると、目に映る多機能ボールペン

前のいまだ話している人間をちらりと見やる

あたりを見まわしては大仰に身振り手振りを交えしゃべっている

どうせ自分の世界に入ってこちらのことなんか気に求めてないだろう

目を逸らし少し笑い、一応前の子の影に隠れる

ボールペンの赤を出して袖をまくり、

腕の内側、白いところ

そこに傷の輪郭を描く

塗りつぶしてお次は黒

影になる所をなぞる

青を混ぜて血の色を表現

これでリアルさがグッとます

指で軽く擦り馴染ませて

さらに色を重ねていく

気づくと集会は終わっていた

後ろから声をかけられる

袖を下ろし口角を上げ、会話を始める

何してたの?

その問いに少し悩み、物憂げな顔を作って袖をまくる

怪我しちゃって…

驚きに染る顔を見て今度は自慢げな顔に作り替える

種明かしをすればなんだよ!心配したーと笑う相手

その笑顔にこちらも笑って返し、

袖を戻し、ボールペンをポケットにしまう

カバンに眠るカッターとさっきの驚愕の顔を頭に浮かべ

自信作を強く擦る

たわいもない話をして友人と別れる

少し息を吐きまた腕を見ると

ニセモノの傷はもう無かった。

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