賃上げと企業成長の好循環
こんにちは、中小企業診断士・社会保険労務士の松本秀一です。今回は、日本の賃上げ動向とそれが企業の成長にどのように寄与するかについて、最近のニュース「年収1000万円で満足するな 人件費ケチる企業に成長なし」(日本経済新聞社)をもとに書いていきます。
1996年、日本郵船元会長の故・根本二郎氏は「ベアゼロ」を訴え、日本の賃上げ停滞を招きました。しかし、2024年に日本郵船は18%の賃上げを実施し、平均を大きく上回る結果となりました。同社の曽我貴也社長は「社員には稼ぐ力を発揮してもらいたい」と述べ、人件費を成長投資と捉えています。このように、賃上げが企業の成長に寄与することが示されています。
調査によると、平均年収が10%以上増加した企業の売上高は48%増加しました。計測器メーカーのHIOKIでは、平均年収を26%上げ、売上高を51%増加させることに成功しています。
一方で、賃上げが業績に直結しない企業もあり、特に平均年収が1000万円以上の企業では賃金と業績の伸びが一致しないこともあります。キーエンスのような「超循環型」企業は、業績と年収の両方を高水準で維持しており、社員の経営参加意識が高まる仕組みが効果的です。
今回のニュース記事から明らかになったことは、賃上げが企業の成長に直接的な影響を与える可能性が高いという点です。特に、HIOKIやキーエンスの事例は、人への投資が企業の競争力を高めることを示しています。
しかし、賃上げだけが全ての解決策ではありません。適切な報酬制度や社員のモチベーションを高める仕組みも必要です。キーエンスのように、業績連動の報酬制度を導入することで、社員が自身の成果をリアルタイムで感じることができ、これが企業全体の成長に繋がります。
また、平均年収が1000万円以上の企業で賃金と業績の伸びが必ずしも一致しないことは、賃上げが企業の成長にとって万能ではないことを示しています。重要なのは、企業がどのようにして賃上げを成長戦略の一環として位置づけるかです。
企業は、社員を最も重要な利害関係者として位置づけ、彼らに対する投資を惜しまない姿勢が求められます。これが長期的な成長と競争力の維持につながるでしょう。
日本企業が成長を続けるためには、適切な賃上げと報酬制度の導入が重要であることがわかります。皆様の企業でも、人への投資を見直し、成長戦略を再考する機会としていただければ幸いです。