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地歌 新娘道成寺 3 歌舞伎京鹿子娘道成寺の第一段説明からわかった鐘を恨む理由

成り立ち2では、地歌「新娘道成寺(しんむすめどうじょうじ)」の歌詞が、歌舞伎「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」のどの段からもってきたものか、を調べました。

この成り立ち3では、地歌の歌詞の冒頭にある「鐘に恨みは数々ござる」の理由について、
歌舞伎「京鹿子娘道成寺」について書かれた説明からわかったことを記します。

なぜ地歌の歌詞の話に、歌舞伎が出てくるのかは、
歌舞伎「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」が地歌新娘道成寺の元になっているからです

道成寺伝説がもとになり、そこから能、歌舞伎を経て地歌ができるまでについてはこちらになります ↓


道成寺伝説といえば、女性が大蛇に化けて火を吹いて鐘を焼く、ということになります。

鐘に対する恨みというのも、鐘の中に自分が恋した僧侶が逃げ込んだから、鐘ごと焼いてしまうんだという恨みになります。

しかし、歌舞伎京鹿子娘道成寺の説明からわかったことは、
歌舞伎の中で出てくる鐘に対する恨みは、先ほどの火を吹く大蛇の鐘に対する恨みとはちょっとちがったものであるということでした。

歌舞伎京鹿子娘道成寺の説明については、
ウィキペディアと歌舞伎演目案内というページを参考にしました。

鐘に対する恨みは、歌舞伎の第一段で語られているとなっていました。

第一段というのは、一番最初の場面にあたり、道行(みちゆき)といって、旅の様子を描いた場面になります。

簡単ですが、こんな場面になります。

白拍子(しらびょうし)花子が登場する。
鐘に対する恨みを語る。
恋人との逢瀬を回想する。
朝の別れの時を告げる鐘の音が憎らしいと、
鐘への恨みを覗かせ
、道成寺へ向かう。

となっていました。

歌舞伎京鹿子娘道成寺で出てくる、
鐘に対する恨みとは、
恋人と夜を過ごし、別れの時となる明け方が近づいてくる。名残惜しさでいっぱいの時に、その別れの時刻を告げる鐘の音が恨めしいということなんですね。

わりと、わかりやすい理由であると思いました。

ですので、
もともとの道成寺伝説の、大蛇に化けた女性が鐘に巻きついて、口から火を吐き、鐘に逃げ込んだ僧侶もろとも焼いてしまうという恨みの話とはちょっと違ってきています。

このことについて、歌舞伎第四段についての説明で、

「鐘に恨みは数々ござる〜」の歌詞は、能「三井寺」からもってきたものである、と書いてありました。

もともとのオリジナルの道成寺伝説ではなく、能「三井寺」の鐘の話からもってきているのですね。

その、能「三井寺」とは次のような話になります。

子供が行方不明になってしまった女性がいて、その女性が物狂いの女性として描かれている。子供を探し求めるうちに、夢のお告げにより、琵琶湖のそばにある三井寺にやってくる。そこで、お坊さんの制止も聞かず、みずから鐘をついて鳴らす。

これは、能「三井寺」のヤマ場、鐘の段という場面になります。

能三井寺のセリフについては、のちの成り立ち5になります。

歌舞伎京鹿の子娘道成寺の説明を読んで、
地歌新娘道成寺の歌詞の冒頭にある、鐘に対して恨みを持つ理由がわかりました。

生活の中で鐘の音が常に鳴っていた時代であったので、そんな恨めしい思いがわいたのですね。

次の成り立ち4では、歌舞伎「京鹿子娘道成寺」の第一段のセリフをみて、主人公がどのように鐘に対する恨みを語っているのかをみてみます。

お疲れ様でした。


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