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地歌 新娘道成寺 2 地歌は歌舞伎のどの段からもってきたのか

1は、地歌「新娘道成寺」ができるまでの流れと「新娘道成寺」・「鐘が岬」という曲のタイトルがついた理由についてわかったことをしるしました。


2は、
地歌「新娘道成寺」の歌詞は、歌舞伎「京鹿子娘(きょうがのこむすめ)道成寺」のどの部分からもってきたのかということについて、わかったことを記します。

歌舞伎「京鹿子娘道成寺」から地歌「新娘道成寺」がうまれたわけですが、

地歌新娘道成寺の歌詞を3つにわけると、

1. 「鐘に恨みは数々ござる」からはじまり、諸行無常、是生滅法(ぜしょうめっぽう)、生滅滅已(しょうめつめつい)と仏教用語が出てくるところ

2. 「言わず語らず我が心」からの、女性が、男はつれない、たちが悪い、と語るところ

3. 「恋のわけざと数え数えりゃ」からの、各地の遊郭名が織り込まれているところ

に分けられます。

これらがそれぞれ、歌舞伎のなかのどの部分に当てはまるのかということになります。


歌舞伎は、段というもので構成されていて、それぞれの段にあるテーマが演じられます。歌舞伎「京鹿子娘道成寺」は、その段が全部で十五あるそうです。

その段の説明について、Wikipedia と歌舞伎演目案内というページを参考にしました。

十五ある段のなかから、
第四段「中啓の舞」、
第五段「手踊り」、
第六段「鞠(まリ)歌」

をみてみます。


まず、歌舞伎「京鹿子娘道成寺」第四段の説明です。

中啓の舞(ちゅうけいのまい)(鐘づくし)がある段。
歌詞は「鐘に恨みは数々ござる〜」で、それに続く歌詞は、能の「三井寺」から取った「鐘づくし」である。

とあります。

ちなみに、中啓(ちゅうけい)とは、僧侶などが用いた扇のような形のもののことです。

この説明から、地歌の「鐘に恨みは数々ござる 〜 真如の月を眺め明さん」の部分は、歌舞伎の第四段からもってきたのだろうな、となります。

次に歌舞伎「京鹿子娘道成寺」第五段の説明になります。

手踊り(小道具を使わない踊り)がある段。恋に乱れる女心と、つれない男の心を歌った歌詞を軽やかに綴り、恋の切なさを娘姿で踊る。

となっています。

なので、地歌の「言はず語らず我が心 〜 東育ちは蓮葉(はすは)なものじゃえ」の部分は第五段からもってきたのだろうな、となります。

そして、歌舞伎「京鹿子娘道成寺」第六段の説明です。

鞠(まリ)歌がある段。少女のまりつきを真似て踊る歌詞は、日本各地の遊郭を歌っている。花子は桜の花びらをかき集めて、まりを作り少女のように鞠つきをする。やがて、吉原、島原、伏見、墨染と、当時の有名な廓(くるわ)の名前を読みこんだ「廓づくし」の歌詞で明るくテンポよく展開する。

となっています。

ですので、地歌の「恋のわけざと数へ数へりゃ 〜 思い初(そ)めたが縁じゃえ」の部分は第六段からもってきたのだろうな、となります。
 

地歌「新娘道成寺」の歌詞は、歌舞伎の第四・第五・第六段をズバッとぬいてきたようだな、となるかと思います。


以上、成り立ち2は、地歌の歌詞は、歌舞伎のどの段にあたるのかなということでした。

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