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【カンテレ演奏動画】『カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы/Swan of Kalevala)』

第2回目にお届けするクロマティック・カンテレ演奏動画は、V.パッリネン作曲、M.ガヴリロフ編曲の『カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы)』。

まずはアンサンブル「カンテレ」のソリスト、エレナ・アンヒーモヴァ(Елена Анхимова/Elena Ankhimova)の演奏をどうぞ。

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カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы)
作曲:ヴェイッコ・パッリネン(Вейкко Фёдорович Пяллинен/Veikko Pällinen)
編曲:マクシム・ガヴリロフ(Максим Иванович Гаврилов/Maxim Gavrilov)

演奏:エレナ・アンヒーモヴァ(Елена Анхимова/Elena Ankhimova)
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作曲したのはカレリアのウフトゥア(現カレワラ)村出身のヴェイッコ・パッリネン(1921~2001)。彼のお祖父さんは有名な伝統詩歌ルノラウルの口頭伝承者で、パッリネンも小さいころから音楽に親しみました。子供の頃は2列のアコーディオンやバラライカを弾き、その後自作のヴァイオリンも演奏していたようです。

ペトロザボーツクの音楽大学でアコーディオンを学んでいた1930年代の終わりに、パッリネンはアンサンブル「カンテレ」を設立したばかりのV.グドゥコフや、カンテレソリストM.ガヴリロフとも知り合い、グドゥコフが改良したクロマティック・カンテレや、彼が弾くパワフルな音色、巧みな演奏技術に深い感銘を受け、自身も演奏を始めます。

戦時下において活動は一時中断され、パッリネンも前線で戦いました。戦後、故郷のウフトゥアに戻ったパッリネンは、地域の文化活動の促進に情熱を注ぎます。合唱団や子供のための音楽学校の設立、教育に尽力するとともに、多くの作品を残しました。オーケストラ作品から器楽曲、合唱曲と実に100曲以上もの楽曲を残したパッリネンの作品の多くは、故郷ウフトゥア、現カレワラ村に捧げられたものです。特に、同じくウフトゥア村出身の詩人ヤーッコ・ルゴイェフ(Jaakko Rugojev/Яакко Васильевич Ругоев)の詩に多くの曲をつけ、その多くが地元合唱団のレパートリーとして今でも大事に歌われています。

『カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы)』も、もともとはルゴイェフの詩を基に作曲されたイスケルマ(歌謡曲)『キヴィヤルヴィ湖の白鳥(Kiitehen Joutsen)』を、クロマティック・カンテレのソロ曲としてパッリネン自身が編曲し、タイトルを改めたもの。

キヴィヤルヴィ湖の白鳥(Kiitehen Joutsen)

故郷の湖、キヴィヤルヴィ湖をたゆとう白鳥の姿を、朗々と歌っている歌謡曲。パッリネンはこうしたイスケルマと呼ばれる歌謡曲も多く残していることから、「カレリアのトイヴォ・カルキ」とも呼ばれています。トイヴォ・カルキ(Toivo Kärki)とはフィンランドの作曲家で、イスケルマの帝王と呼ばれるほど多くの歌謡曲を作曲した人物です。

この曲を基に、アンサンブル「カンテレ」で長きに渡りソリストとして活躍したM.ガヴリロフが、自らのコンサートプログラム用に編曲したものが、冒頭で紹介した動画の曲です。哀愁漂うオリジナルのイスケルマも良いけれど、ガヴリロフの編曲は、半音階を生かした見事な美しさですね。

M.ガヴリロフの編曲は、『Звучи моё Кантеле(Sound my kantele)』という楽譜集に収録されており、彼が所属したアンサンブル「カンテレ」で手書きの原稿も保存されています。

ちなみに、ここまでの説明で気づいた方もいるかもしれませんが、楽曲のタイトルで掲げられている「カレワラ」は、フィン・カレリアの民族叙事詩『カレワラ』ではなく、故郷の村の名前「カレワラ」を表しています。

冒頭で紹介したエレナ・アンヒーモヴァは、コロナ下でアンサンブルの活動が自粛される中、自宅で演奏した動画もYoutubeで紹介しています(個人的にはこの自宅演奏がめっぽうお気に入り)。

また、同じくアンサンブル「カンテレ」のソリスト、アナスタシア・クラシーリニコヴァ(Анастасия Красильникова/Anastasia Krasilnikova)は、オネガ湖のほとりで演奏した動画をUPしています。

今ではM.ガヴリロフの編曲がよく弾かれていますが、パッリネンによるカンテレ用の編曲もとても綺麗です。

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カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы)
作曲:ヴェイッコ・パッリネン(Вейкко Фёдорович Пяллинен/Veikko Pällinen)

演奏:ユーリ・グラディシェフ(Юрий Гладышев/Yuri Gladyshev) 
01:35~03:18あたりの演奏が『カレワラの白鳥(Лебедь Калевалы)』
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柔らかく響くカンテレの音に合う曲だな、としみじみ思います。

以下の写真は私の手元にある楽譜集『Музыка Калувалы(Music of Kalevala)』に収められているパッリネン版の楽譜。

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いつかチャレンジしてみたいと思います。ガヴリロフの編曲も弾いてみたいけれど・・・楽譜をせびるには、2年前にもらった課題曲をクリアしてからでないと。

>> クロマティック・カンテレあれこれ

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