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[カレリア民話] 愚か者のお話(HUPAKOH STARINA)

愚か者のお話

むかし、もうそれなりに年をとった愚かな男がいました。(ある日)彼は鶏肉をバターで火にかけました。テーブルに運び、とてもお腹が空いたときにそれを食べようと、フライパンの上にお皿をかぶせておきました。

さて、男はお腹を空かせようと町へ(歩いて)出かけました。ドアに鍵をかけ、入口のふもとにある石の下に鍵を置きました。そうして彼が出かけると、向かい側から若い少年が2人やって来ました。愚か者は言いました。
―若ぞうたち、ワシの家に行くんじゃないぞ。テーブルの上にステーキがあるんだ。ワシはちゃんとドアに鍵をかけて、鍵を石の下にやったんだからな。

「アイツのところに何があるか、見に行ってみよう」と少年たちは思いました。石の下に鍵があり、それを手にすると小屋へと入りました。少年たちはステーキを、骨がすっかりすり減ってしまうほど、ペロリと平らげました。食べ終わると、その骨にとても大きなハエがやって来たので、少年たちはハエを骨の上に押しつけました。そこへ愚か者が帰ってきて言いました。
―なんだって若ぞうたち、ここには来てはいけないんだぞ!
泥棒は皿をつかむと、ハエを閉じこめ捕らえて言いました。
ーほら、捕まえたぞ、ハエを閉じ込めたんだ。

(愚か者は)ハエを捕まえ、そのまま警察へ行きました。警察官のところへやって来ると、言いました。
―コイツをどうにかしないと、ワシのステーキを食いおった泥棒を捕まえてきたんだ。少年たちは動かなかったし、鍵も石の下にあった。だが、コイツは(ステーキ肉の)骨をすり減らしおったんだ!
警察官は「こんなにもバカなコイツに、さてなんて言ってやろうか」とニヤニヤしました。そうして警察官は言いました。
―そのハエを放しなさい。ハエが居座っているなら、棒で叩いてみなさい。もし(叩くことが)できたなら、ハエを引っ立てようじゃないか。だが、できなかったらハエは捕らえはしない。

ハエは飛び上がると、ぐるりと旋回し、警察官の額に飛んでいきました。愚か者は警察官の額を(棒で)撃ちつけ、ハエを叩きました。警察官は壁に向かって倒れ、しばしの間、呆然としていました。
警察官は、この爺さんは愚か者だが、自分はもっと愚かじゃないかと考えました。そうして「家に帰りなさい」と言うと、自分の頭に(包帯を)巻いたんだとさ。

こんな長さのお話だよ。(話し終えると、小屋中で笑いが起こったものさ。)

単語

hupakka [名] 愚か者
luota [名] 皿
prokuroori [名] 警察官
muhahella [動] ニヤニヤ笑う
navahtoa [動] 叩く、打ちつける
kierrellä [動] 旋回する
ällistyö [動] 仰天する, 驚いて呆然とする
kiärie [動] 巻く

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カレヴァラ地区のウフトゥア村
採取年:1954年
AT 1586

日本語出版物

世界の愚か村の話、笑話に類似話が含まれていると思われます。

つぶやき

世界各地に存在する、おバカな住人たちが住む愚か村は、カレリアにも存在します。そんな笑話の一つですね。他の地域の話だと、ハエ(やトンボなどの虫)が止まった人を斧や銃で実際に殺してしまったりと、大惨事になっていることもありますが、カレリアでは幸せな笑いで締めくくられています。

さて、気がついたら10月を過ぎていました。
今年中に民話訳50本を目標に、しばらくは余裕をもって進めていたのに、ここにきて焦り始めています。週に1話訳しても間に合わないじゃないか!

カレリア語映画の上映会準備やらで時間をとられているのですが、何とか追い上げて目標達成を目指します。

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

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