[カレリア民話] おじいさんの娘とシュオヤタルの娘(UKON TYTÄR DA SYÖTÄRIN AKAN TYTÄR)
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[カレリア民話] おじいさんの娘とシュオヤタルの娘(UKON TYTÄR DA SYÖTÄRIN AKAN TYTÄR)

Kieli

おじいさんの娘とシュオヤタルの娘

昔、夫と妻がいました。夫婦には娘が1人いました。娘の名前をマーシャと言いました。母が亡くなると、父は(新たな)妻を探しに出かけました。道に沿って進みに進んでいくと、シュオヤタル婆がやって来て言いました。
―こんにちは、どこへ行くんだい?
ー妻を探しにだよ。
―あたしを妻にしとくれよ。
―いいや、そうはしないよ。

そのシュオヤタル婆は走り、先回りをするとふたたびやって来て、挨拶しました。
ーこんにちは、どこへ行くんだい?
―妻を探しにね。
―あたしをめとりなよ。
―いいや、めとらないよ。

男はふたたび先へと進みました。いっぽうシュオヤタル婆は先まで走っていきました。ふたたび男のもとにやって来ました。
―こんにちは、どこへ行くんだい?
―妻を探しにさ。
―あたしを妻にしとくれよ。
―では、来なさい。

そうして家に帰りました。彼らは一緒に暮らして過ごしましたが、そのシュオヤタル婆は、マーシャを愛さなくなりました。シュオヤタル婆は自分の娘を授かり、ナターシャと名づけられました。シュオヤタル婆は言いました。
―まったく、マーシャは家で何もしようとしないんだから、森小屋へ連れていって、袋一杯の仕事を与えましょう。

父親もそれに賛成しました。袋に鍋とお粥にするための穀物、紡ぐ前の亜麻を入れると、父親は娘を連れて出かけました。森小屋へ連れてくると、そこへ(マーシャを)1人残していきました。マーシャはひたすら紡いで、紡いでいましたが、家が恋しくなりました。夜になり、かまどに火を点けてお粥を煮ると、夕食をとり始めました。お粥を食べ始めると、ネズミがやって来ました。ネズミは言いました。
―マーシャ、若いお嬢さん、オイラにお粥をちょうだいな。
マーシャはスプーンでネズミにお粥を与えました。ネズミはお粥を食べると、かまどの下にもぐっていき、言いました。
―ありがとう、マーシャ。

マーシャは食べ終えると、床に寝っ転がりました。すると、門の向こうから誰かがやって来て、ドアをノックするのが聞こえました。マーシャは尋ねました。
―どなたですか?
クマが言いました。
―開けておくれ!
ドアを開けると、そこにはクマがいました。

―さあ、マーシャ、若いお嬢さん、目隠し鬼をしようじゃないか。
クマは言います。
―オレ様がお前をつかまえようとするから、お前は首に鈴をつけるんだ。もしオレ様がお前をつかまえたら、お前を食べてやる。もしつかまえられなかったら、お前は生涯幸せに暮らすだろう。

そうしてマーシャの首に鈴がつけられました。(鬼ごっこが)始められると、すぐにネズミがやって来て首から鈴を取り、マーシャにかまどの裏に(隠れるよう)言いました。ネズミは長椅子の下を走りに走りまわりました。クマがつかまようとするたびに、毎回逃れていきました。クマは疲れてしまい、言いました。
―いいだろう、マーシャ、若いお嬢さん、(目をふさいでいた)手ぬぐいをほどいておくれ。
マーシャは素早くネズミから鈴を取って首につけ、クマから手ぬぐいを解きました。クマは言いました。
―ありがとう、マーシャ、若いお嬢さん。横になってお眠りなさい。
マーシャは床に横になり、朝まで眠りました。朝、起き上がって外へ出ました。ドアを開けると、庭にありとあらゆる衣類や、宝箱や、さまざまな財宝があるのを見ました。マーシャは喜びました。

ところで、マーシャの家では小さな犬を飼っています。犬が吠えました。いっぽうシュオヤタル婆は、パンケーキを焼いていました。犬はこんな風に吠えました。
―ワンワン、ナターシャの骨がカラカラと鳴り、マーシャの黄金は美しく鳴り響く!
シュオヤタル婆は鍋を支えておく棒を持つと、(犬の)脇腹を叩き、言いました。
―この虫けらめ、何を吠えているんだ?
父親が言いました。
―マーシャを森に迎えに行かないとな。
そうして父親は、マーシャを迎えに出かけました。彼は馬に乗って出かけました。そこへ行くと、何ということでしょう。そこには宝箱に、衣類に、靴類に、あらゆるものがありました。それからマーシャは、これこれしかじかで、クマがくれたのだと話しました。

父親は(財宝を)ソリいっぱいに集めました。マーシャは(紡いだ)糸を袋に集めました。そうして家へと帰っていきました。小さな犬がふたたび、こんな風に吠えました。
―ワンワン、マーシャの黄金は美しく鳴り響き、ナターシャの骨はカラカラと鳴る!
シュオヤタル婆はふたたび鍋を支える棒を取ると、犬を叩いて(言いました)。
―この虫けらめ、何を吠えているんだ?
(マーシャと父親が)家に戻ってきました。何ということでしょう、宝箱がどんどんと、家に積み上げられていきます。シュオヤタル婆は羨ましくなりました。
―ナターシャも連れていこう。

そうして、ナターシャも連れていかれました。シュオヤタル婆は、袋に紡ぐ前の亜麻を少しと、(調理された)お粥を入れておきました。父親は森へ連れていき、そこへ(ナターシャを)残していきました。ナターシャは(持たされた)それらの亜麻を少し紡ぎました。夜になると、お粥を煮始めました。お粥が煮おわると、食事をとり始めました。そこへかまどの裏からネズミがやって来て(言いました)。
―ナターシャ、若いお嬢さん、オイラにお粥をちょうだいな。
彼女はスプーンでネズミの頭を打ちつけました。
―あんたにお粥を?私だって食べたいのよ!
ネズミはかまどの裏に逃げ去っていきました。(ナターシャは)食べて、床に寝っ転がりました。クマがドアの向こうにやって来て、ノックしました。ナターシャがドアのところへ行くと、クマがいました。クマは言いました。
―さあ、ナターシャ、若いお嬢さん、目隠し鬼をしようじゃないか。ほら、首に鈴をつけるんだ、オレ様はお前をつかまえ始める。もしオレ様がお前をつかまえたら、お前を食べてしまうが、そうでなければ褒美をやろう。

そうして(鬼ごっこが)始まりました。ナターシャは鈴を首につけ、走りまわり始めました。クマは(ナターシャを)つかまえると、食べてしまい、残った骨が積み上げられました。家では犬が吠えました。
―ワンワン、マーシャの黄金は美しく鳴り響き、ナターシャの骨はカラカラと鳴る!
シュオヤタル婆は鍋を支える棒を手に取ると、(犬を)打ちつけ、言いました。
―ふん、虫けらめ!
犬は長椅子の下に走り逃げました。シュオヤタル婆は言いました。
―ナターシャを連れ戻さないと、ナターシャも財宝を手にしているだろうしね。

父親が(迎えに)やって来て、ドアを開けると、枝のような骨があるだけでした。(父親は骨を)袋に入れてソリに放り、家へと走らせました。犬がふたたび吠えました。
―ワンワン、マーシャの黄金は美しく鳴り響き、ナターシャの骨はカラカラと鳴る!

父親は家に帰ってくると、袋に入った骨を床に放り投げました。母親は泣き始めましたとさ。お話はこれでおしまいです。

UKON TYTÄR DA SYÖTÄRIN AKAN TYTÄR

Oli ennen ukko da akka. Oli ukolla da akalla yksi tytär. Tyttärellä oli nimi Maša. Maamo kuolou. A taatto lähtöy akkaa eččimäh. Mänöy, mänöy dorogaa myöt’en, tulou Syötär-akka vastah.
Sanou:
- Terveh, kunne mänet?
Sanou:
- Mänen akkaa eččimäh.
- Ota milma.
- En ota.

Se Syötär-akka d'uoksi, kylgeh mäni dai taas vastah tulou, taas tervehyttä laadiu:
- Terveh, kunne mänet?
- Mänen akkaa eččimäh.
- Ota milma.
- En ota.

Taas ielläh i mänöy mužikka. A Syötär-akka d'uoksou kylgie myöt'e. Taas vastah i tulou mužikalla.
- Terveh, kunne mänet?
- Mänen akkaa eččimäh.
- Ota milma.
- Ka tule sie.

I mändih kodih. Eletäh, ka se Syötärin akka ei rubie Mašaa l'uubimah. Saau hiän iče tyttären. Pannah nimi Nataša. Syötärin akka sanou:
- Nukka viemmä Mašan meččäpertizellä, kuin koissa ei kehtua laadie, annamma raaduo värččih.

No taatto i soglasieti. Pannah värccih kattilan'e da d'auhuo hutuksi, da työdä. Lähtöy taatto viemäh. Viey meččäpertizellä da yksinäh d’ättäy. Maša kezriäy, kezriüy, igävöiöčöy. Panou illalla päčin lämmitä, keittäy huttuo da rubei ildazella. Rubieu huttuo syömäh, ka tulou hiiri. Hiiri i sanou:
- Anna, Maša, krasnoi deviča, miula huttuo.
Maša i ando luzikalla hiirellä huttuo. Hiiri hutun söi dai päčin alla läksi, sanou:
- Passibo, Maša.

Maša söi dai vieröy maata. Kuulou, tulou veräjän taaksi i kolistau ovie. Maša i kyzyy:
- Ken on?
Kondie sanou:
- Avaa!
Avai oven, ka kondie.
- A nukka, Maša, krasnoi devuška, "huukah", - kondie sanou, - mie rubien silma tabottelemah, a siula panen kellozen kaglah. Kuin tabottanen, ni siun syön, a kuin en tabottane, ni loppuijän hyvin elät.

I pani Mašalla kellozen kaglah. Rubettih, a hiiri ruttozeh tuli, kellozen kaglasta otti, i Mašan päčin taaksi käški. Hiiri d’uoksendelou, d'uoksendelou laučan alla. A d'o kuin kondie tabottelou, ni kaikki sraasti! Kondie d'o vaibu. Dai sanou:
- No riiči, Maša, krasnoi deviča, paikka.

Maša ruttozeh hiireldä kaglasta čillizen otti, dai mäni kerittämäh kondielda paikkua. Kondie sanou:
- Passibo, Maša, krasnoi deviča, prosti da viere maata.

Maša vieri maata i magaau huomnukseh saahe. Huomnuksella nouzi, lähtöy ullos. Avai oven, ka kaččou - kuin on pihalla kaikenmoista vaatetta, lipasta, kaikenmoista eluo. Maša ihastu. A Mašalla koissa on rikkikoirane. Koirane i haukkuu. A Syötär-akka paistau kakkaraa. Koirane haukkuu: "T'af, t'af, Natašan luut kolissah, a Mašan kullat helissäh". Syötär-akka ottau dai siizmalla andau bokkah, sanou:
- Midä, mado, haukut?
Taatto i sanou:
- Pidäy meilä lähtie Mašaa tuomah mečästä.

Dai taatto läksi tuomah. Hebozella läksi tuomah. Mänöy sinne, ka on midä kaččuo. Lipasta, vaatetta, d'alaččie, kaikkie on. Siidä Maša i sanou: senin da senin, kondie toi.

Taatto rejen täyven keräi. Maša langat värččih keräi. I lähtietäh kodih. Rikkikoirane taas i haukkuu: "T'af, t'af, Mašan kullat helissäh, a Natašan luut kolissah". Syötärin akka taas uhvatkalla i andau koiraista:
- Midä, mado, haukut?
Tuldih pertih, ka on midä kaččuo: lippahie nossetah, pertih tullah. Syötären akalla rodih žaali. Sanou:
- Viemmä i Natasan.

Dai lähtiettih viemäh Nataškaa. Syötärin akka panou vähäzen työdä värččih, panon huttuo keralla. Vei taatto meččäh, dai d’ättäy sinne. Nataša sidä kezriäy vähäzen. Tulou ilda, rubei huttuo keittämäh. Keitti hutun, ka rubieu ildažella. Tulou hiiri päčin taguada:
- Ana, Nataša, krasnaja deviča, huttuo.
Hiän händä luzikalla piädä vasse. Sanou:
- Siula huttu? Iče tahon!

Hiiri i läksi pois pagoh päčin taaksi. Söi vieröy maata. Tulou kondie oven taaksi, kolistau. Mäni Nataša oveh - ka kondie. Kondie i sanou:

- Nukko, Nataša, krasnoi deviča, "huukah". Na, ota kellone kaglah, a mie rubien tabottelemah. Kuin tabottanen, ni syön, a kuin en tabottane, ni palkan maksan.

I rubettih. Pani Nataša kellozen kaglah dai rubei d'uoksendelemah. Kondie tabotti dai söi, dai luuhuzet pölkyzellä pani pistyh. Koira koissa i haukkuu: "T'af, t'af, Mašan kullat helissäh, a Natašan luut kolissah". Syötären akka ottau dai uhvatkalla i isköy, sanou:
- Hoi, mado!
Koira i pagoh d’uoksi laučan alla. Syötär-akka sanou:
- Pidäy Nataša tuuva pois, d'o Nataša eluo sai.

Tulou taatto, avai oven, ka luuhuot pölkyzellä. Värččih pani da regeh lykkäi, da läksi kodih ajamah. Koirane taas haukkuu: "T'af, t'af, Mašan kullat helissäh, a Natašan luut kolissah". 

Tuli taatto kodih da lykkäi luut värčizen kera lattiella. Maamo rubei itkemäh. Da starina sihi i loppu.

単語

laatia [動] ~する, ~を計画する
mužikka [名] 男, 男性
värčči [名] 袋, 1袋分
työ [名] 麻, 紡ぐ前の亜麻
kelloni [名] ベル, 鈴
riiččie [動] 縫い目をほどく, (義務から)解放する, 結び目をほどく
čillini [名] 小さな鈴, ベル
kerittyä [動] (結び目を)ほどく, 解く
lipas [名] (貴重品などを入れる, 鍵のかかる)櫃, 長持, 衣装箱
elo [名] 財産
rikkikoira [名] 小さな犬
kolissa [動] 打つ音を出す, ノックする
helissä [動] 鳴り響く, 金属性の音を出す
siisma [名] フライパンの把手,鍋を支える棒
bokka [名] 脇腹, 側面
jalačit [名][複] 靴類, 履物
senin da senin これこれしかじかで
uhvatkka [名] 鍋を支える棒, フライパンの把手
luuhut [名] 骨, 遺骨
pölkky [名] 木の切れ端, 丸太

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:セゲジャ地区のオンタヤルヴィ(オンドゼロ)村
採取年:1937年
AT 480(旧AA 480*C)

日本語出版物

カレリア/フィンランド民話としての邦訳はなかった気がします。エストニア民話として載っている本があったような。確認します。

つぶやき

継母と継娘に関する民話のうち、カレリアでもっとも一般的なお話で、さまざまなバリエーションがあります。

ATカタログの旧版、アールネ番号だと AA 480*Cで、娘が行き着いた先の家に訪問者が来る流れです。カレリアではこのバリエーションタイプのお話が多いようです。目隠し鬼をするタイプもよく見るので、当時の子どもたちが楽しんでいた遊びなのかもしれませんね。

今回の訪問者はクマですが、ヒーシ(森の精)の場合もあります。ヒーシは怪力なので、捕まえられると全身の骨が折れてしまう…という流れ。

名前のマーシャ、ナターシャはスラヴ系の名前なので、ロシアの影響が強そうですが、ストーリーや登場人物、環境はかなりシンプルなので、古くからの伝承を遺しているように見受けられます。

次に多い AA 480(A)は、娘が飛ばされた物を、あるいは転がったパンを追いかけて行き着いた先が老婆/魔女/ヒーシ/悪魔などの家で、道中に助けた動物たちが、逃げる際に手助けをしてくれるというもの。

ご褒美は、今回のように物品をもらう場合もあれば、話すたびに口から黄金や宝石がこぼれる(逆にシュオヤタルの娘は、カエルやヘビが出てくる)場合もありますが、これは他地域の昔話の影響が大きそうです。

同話型のお話をご紹介している方々の記事も、ぜひぜひご一読ください。

今回のシュオヤタルは、さほど魔女的な悪さはしておらず、単に継母という役割を演じているだけですね。

さて、今回のお話でカレリア民話訳25話目となります。今年中に50話を目指しているので、かなり速いペースで進めてきたわけですが、今後は長いお話も増えてきたり、馴染みのない方言から訳すことになるので、更新頻度が遅くなると思われます。

その代わり、合間にちょこちょこと民話以外のカレリアの口承伝統も紹介していくつもりですので、どうぞお楽しみください。

次回はおそらく、今回と同話型 AT480 の別バージョン訳です。

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

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Passipo! Kiitoš! ありがとうございます!
Kieli
自分の基盤であるフィンランド,憧れやまないカレリア。多くの伝統を共有しながらも,その伝統が異なる方向へと新たに「創造」されていく双方文化から目が離せません。しばらくは主にカレリア語独学記録,カレリア民話の和訳、ときどき伝統楽器カンテレやカレリアの音楽について綴っていきます。