Last.fm 調べ! 自分が一番聞いていたアルバムを紹介 1. Blonde on Blonde - Bob Dylan


前説

Last.fm とは、音楽の視聴履歴(Scrobble)を記録してくれるサービスです。

その『ライブラリ』ページから、自分が聞いていたアルバムの順位を調べることができます。

Scrobble は視聴すると 1 増えます。つまり、試聴時間基準やアルバム視聴回数基準に比べ、収録曲数が多いアルバムが有利になりますが、それなりに精度のあるランキングだと思います。

そしてそのランキングで調べた、自分が一番聞いていたアルバムを紹介しようと言うのがこの企画です。

映えある第 1 位は、Bob Dylan の 1966 年のアルバム『Blonde on Blonde』でした。


全体的なファクト

1966 年発売

同時期のアルバムとしては、

  • The Beatles の『Revolver』

  • The Beach Boys の『Pet Sounds』

などが挙げられ、またヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューシングルもこの年だそうです。

つまり、ポピュラー音楽界がサイケの煙に包まれつつあった年だったと言えます。

ディランのサイケ度はどちらかといえば前作の『Highway 61 Revisited』が強いと思います。このアルバムでのサイケは演奏の元気度あたりに現れているのではないでしょうか。

売上&反響

このアルバムは、全米 9 位、全英 3 位を記録しました。

(単純に順位で言えば、英国のほうが評価高かったんですね……)

Wikipedia によれば、ローリング・ストーン誌のアルバムランキングでも 38 位。

ディラン本人も気に入っているようなことが書いてありました。

ボブ・ディランの長い長いキャリアの中でも、最も成功した部類のアルバムだと言えるでしょう。

プロデュース&パーソネル

プロデュースはボブ・ジョンストン。正直知らない人です。

でも、このアルバムの音は全体的にいい感じというか、シンガーソングライターの音作りの基準になっているような気がします。

そしてバックミュージシャンとして、ザ・バンド(The Band)のメンバーが参加しています。

特に「スーナー・オア・レーター」あたりはザ・バンドっぽい。

全曲レビュー

1. Rainy Day Women #12 & 35

オープニング曲。そういえばよく聞いたな、このイントロ……。

このアルバムの中でもサイケ度が高く、そもそも頻出する"Stoned"と言う単語からして大麻を連想させます。

マーチングバンドのような、跳ねるパーカッション類と、メランコリックなホーンセクションが特徴的です。ニューオーリンズを感じさせるリズムです。

『ガヤ』の声が入っているのも特徴で、たぶんその影響でディランのテンションも高いです。

2. Pledging My Time

ブルースの影響がモロに出ている曲。ブルース・ロックではなく、ディランがやるとエレクトリック・ブルース(マディ・ウォーターズみたいな)に近づきます。

ハーモニカが特徴的で、ディランといえば、のフォーク系吹きまくりハーモニカではなく、ブルースらしいベンドしたハーモニカを吹いています。

基本的にブルースマナーでありながら、一本調子ではなく、メロディの緩急がついています。

個人的にはお気に入りですが、他の大名曲たちに比べると、少々地味なポジションにあります。

3. Visions of Johanna

フォーク・ロック期のディランを代表する何曲かのうちの 1 曲。

バンドアレンジがとても良くて、このバランスは、スピッツや斉藤和義あたりにも影響与えていそうな気がします。はっぴいえんどとかもそうなんじゃないでしょうか。

ロビー・ロバートソンと思われるギターのカッティングが特徴的で、B メロというかブリッジの部分ではギターのタイミングが変わるのが聞きどころです。

4. One of Us Must Know (Sooner or Later)

ポップなバラードです。イントロがちゃんとあるし、サビもある……。

オルガンが聞きどころで、ゆらぎ系エフェクトが激しくかかっています。

エレピ? アップライトピアノ? も熱演ですね。キーボード類が頑張っているのがよりポップさを強調しているのかも。

ドラムもバンドマジックがかかっているように思います。ドラムが右チャンネルにあるけど、真ん中に寄って欲しかった。

5. I Want You

ディランの曲の中でも有名な曲です。でも意外とディランにこのタイプはあまり無いんですよね。

分かりやすいリフのパターンがあるのがポップさを強調しています。リフはギターもピアノも弾いているので、かなり強調されていますね。

ボーカルはディラン一流の『歌い飛ばし』式です。

6. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again

この曲好き! 先の Vision of Johanna がミディアムテンポなのに対し、こちらはアップテンポのフォーク・ロックと言えるでしょう。

ソウルやブルースの影響を感じます。特にボーカルはかなりブルージーです。

ドラムが元気よく全体を支え、ギターは複音を使ってメロディックなプレイをしています。この 2 つの楽器はソウルっぽい演奏ですね。

7. Leopard-Skin Pill-Box Hat

これはブルースですね。ブルースの中で一番有名なリフをギターが弾いています。

歌詞が比較的内容が分かりやすいです。ブルースの伝統に則り、女性にフラレた哀れな男の設定です。

それでヒョウ柄帽子を誰に買ってもらった? とか、ガレージのドアに気をつけろとか、情けないことを歌っています。

実のところ、歌詞とはこういう内容で良いんじゃないかと思いますが、ディラン自身がポップソングの歌詞をイノベートした存在なので、そのへんに皮肉を感じます。

8. Just Like a Woman

三連符系のバラード。この曲も有名ですね。

これも比較的歌詞が分かりやすく、韻も整っているので、そのあたりが親しまれている原因でしょうか。

コロコロとしたピアノの音が好き。

ここまでがディスク 1!

9. Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)

ブルースやロックンロールの 3 コードをディラン流に使った曲です。『ボブ・ディランの 115 番目の夢』とかに近いかも。

ディラン自身はけっこう気に入っていそうです(ライブのレパートリーなので)が、自分は少なくともこのアルバムのバージョンはあまり……。全体に歪み過ぎのように思うんですよね。

10. Temporary Like Achilles

ラグタイム? な平和なピアノで始まる曲です。

これもブルースやロックンロールの 3 コードをひねった曲ですが、感触は前曲とだいぶ違います。

タイトルはアキレスのように一時的にって、アキレスは一時的なんでしょうか……? 無敵能力があったのに滅んだあたりのことを指しているのかな。

11. Absolutely Sweet Marie

元気のいいポップソングです。I Want You にあったように、リフが全体を引っ張っています。

この曲も個人的なお気に入りで、一瞬マイナーからの借用コードになるようなあたりがジョージ・ハリスンに似合います。ジョージはのちにこの曲をトリビュートしています。

また、モータウン調のドラムが良いです。ひょっとして自分はドラムを基準に好悪を判断しているのかも。

12. 4th Time Around

アコースティックなサウンドの三拍子曲です。

全体に繊細な感じが出ていますが、ディランに繊細さを求めるかというと……?

動き回るベースが格好いいです。

13. Obviously 5 Believers

これはブルース・ロックと言っても良いでしょう。ローリング・ストーンズがやりそうな感じ。歪んだ系は苦手ですが、ここまでやるなら OK。

ディランのロック・シンガーとしての実力が出ている曲です。ニュアンスの付け方が客をアジるような感じ。

14. Sad Eyed Lady of the Lowlands

長いよ!  11 分半あります。

バックミュージシャン(The Band?)たちもこんなに長い曲だと知らされないまま録音が始まったという伝説があります。

それもあってか、このアルバムでは影を潜めていたディラン特有の『危なっかしいアンサンブル』がこの曲では出ているように思います。

例えば『Bringing It All Back Home』の"Subterranean Homesick Blues"のような、リハーサルあまりせずにぶっつけ本番にやった感じが比較的強いです。

まとめ

フォーク・ロックのディランの代表作。なにげに J-POP につながる部分が多いと思います("Sooner or Later"や"I Want You"あたり)。

ディランは純然たるフォークもあればもっとロックよりのアルバム、ブルースなアルバムなど、いろいろなアルバムを出していますが、この時期が一番作曲力が充実していたのだと思います。2 枚組ですし……。

たぶんこのあとですが、ディランはバイク事故を起こしてしまいます。このアルバムは気力体力ともにノリまくっていたころなので、巨匠がその才能を最大に発揮しているところが聞きたいなら、このアルバムがおすすめです。『もののけ姫』『千と千尋』のころの宮崎駿みたいな感じです。

終わりに

ディランの Blonde on Blonde の紹介でした。

今後も Last.fm から聞いていたアルバムを見つけレビューするという、この企画は続いていく(はず)なので、暇なときに読んでください。

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