一匹狼さんに贈る電磁気学本 入門~大学院:レアだけど最短で学科1位になれる方法,砂川&ジャクソンを使いません
イントロ
先日
を書きましたので、その勢いで電磁気学 編も書いていきます。
なお、この記事では対象を下記とします。
非 旧帝 レベル
物理・工学・情報系向け
少なくとも数学科ではない
博士後期課程には進まない
プロにはならない
この前提で「学科1位になれる」かは怪しいですが、印象的なタイトルのためとご理解いただければと思います。
わたしのスペック
通称バコテン、ランダウ・リフシッツ 場の古典論,東京図書,1978
は挫折。大したことないです。
ヘタレです。
どうせアレを挙げるのでしょう?
タイトルにも書いていますが、これらをメインで使いません。
「Jackson」はまったく使いません。
そもそも「Jackson」を使うほどのレベルの人はこの記事を見てません。
さて、わたしの場合です。
学部生の時、
で勉強をはじめました。
早々に諦めました。
この本は、ベクトル解析の未修を前提としているようで、
電磁気学とベクトル解析が同時進行で説明されます。
読み進めていると、なにがなんだか、物理が見えてこない。
そこで、ベクトル解析を先に解決することにしました。
わたしがベクトル解析をどのように進めたかは、
で書きました。
ベクトル解析を終えて、純粋に電磁気学が展開されている本を探しました。
1~2週間で終えたはずです。
多くは、Maxwell方程式から折り返す、一度「電磁気学」を到達した人のための2巡目の本ばかり。「砂川電磁」はその代表的な書籍です。
1巡目として、ようやく見つけたのがこちら。
と、さまざまな版があります。手に入ればどれでもいいです。岩波さん、2016版は高価過ぎますよ。
この本では電磁気学が非常に整然と構築されていきます。
本当に助かりました。
ベクトル解析を十分に使いこなせる力があれば、最速でMaxwell方程式に到達できます。演算がコンパクトに整理されて、ぐちゃぐちゃ感がまるでありません。まとめ本といってもよく、非常に進めやすいんです。
一方で、電磁気学としての現象論に紙面が割かれていません。
電磁気学に独特な泥臭さがないというか。
そのため、「電磁力学」を使った場合、そのデメリットを
「砂川電磁」
などで補わなければなりません。
しかしながら、この記事では
2巡目に、こちらを強くおすすめします。
学部生であれば特にです。
院生など上級になると、手っ取り早く「砂川電磁」を調べてしまいます。
それがなにがわるい?
「ファインマン物理学」の方が物理が深いんです。
※ ファインマンさんについてはコチラに記事を書きました。
この記事で「ファインマン物理学」の経緯を紹介しています。
「砂川電磁」では数式に頼りすぎるんです。
電磁気学がただの計算に成り下がってしまうです。
※ 砂川先生、すみません。
人によっては、計算に追われてしまって物理が見えなくなってしまう、可能性があります。
たとえば、
「概念から数式へ(数式化)」(英文和訳)
「数式から概念へ(概念化)」(和文英訳)
と英語として捉えると、
英文和訳が「砂川電磁」
和文英訳が「ファインマン物理学」
ペーパーバックスをスラスラ読むことは、英語学習者であれば誰もが憧れるでしょう。なりよりカッコいいです。
※ もっともペーパーバックスを読むときは英文和訳などせず、「訳さずに英語を読む」のが一般的でしょう。
しかし、和文英訳の力はどうでしょうか。
手間がかかるし、解答の英文が一通りではなく、釈然としない。
学力に余裕がある人でないと、おろそかになりがちかもしれません。
この現象が、物理でも起こり得るのです。
物理を概念化できない、つまり、計算している内容が物理(の振る舞い・現象)として見えていない。
優秀な方であれば、「砂川電磁」で、数式化と概念化をともに習得できるでしょう。
しかし、多くの方が、数式化とテクニカルに数理的な物理へと、先に急いでしまうのではないでしょうか。
そして、物理を見失う。
一度、立ち止まって、概念化の訓練をしてみませんか。
ファインマン物理学では数式を言葉・概念に落とし込むトレーニングできます。
この記事のやり方では、とくに「電磁力学」というキレイに整備された経路で電磁気学を速習しています。
もしかして、計算に揉まれて概念の数式化もあやふやかもしれません。
「砂川電磁」はいつか使います。
※ この話の流れからすると、「長岡 電磁気学」は不要かも。
ファインマン物理学から得られることは、物理の深い理解であり、今後の資産となりえます。
このタイミングを逃すとファインマン物理学を体験できないのです。
一度、電磁気学を学んだからこそ、ぜひ「ファインマン物理学」を手にとってみてください。
ところで、「ファインマン物理学」は、英語版は無料でWEB公開されています。
The Feynman Lectures on Physics
"3 電磁気学"と"4 電磁波と物性" は Volume Ⅲ に相当します。
"Feynman Lectures"の英語は大学入試の長文より簡単です。ファインマンさんは難しい表現を好まなかったんだと思います。一方で、翻訳書の和文は少しぎこちないです。
余力がある方は、英語版をメインで読み進め、翻訳書をヒント集にして学ぶのもいいと思います。
演習書をやってください。
詳解電磁気学演習,共立出版,1970
でもいいですが、わたしは各章・節のまとめだけでお腹いっぱいでした。
わたしは後者から問題をピックアップして解きました。
仕上げ
ここで「Jackson」でしょう?
違います。
原著 Introduction to Electrodynamics,David Griffiths,2012
ものすごい数のレビュー数ですよね。
これでもいいです。
ところが、「電磁力学」と「ファインマン物理学」とで、電磁気学を1.5~2周しているので、わざわざ「グリフィス」を使う必要がありません。
わたしが絶賛おすすめするのは、
Modern Electrodynamics, Zangwill, Cambridge University Press,2012
大事なことなので、太字にしました。
「Jackson」も「砂川電磁」も数理処理がどこかしら古いんです。もっと洗練された記法や計算法があるのですが、「Jackson」も「砂川電磁」ではそれらが使われておらず、古典を読んでいる気分になるのです。
「Jackson」レベルの電磁気学をモダンにアプローチしているのが、「Zangwill」なのです。
もちろん「Zangwill」も読み進めるには、苦労します。
※ わたしは隅から隅まで読み切ったわけではありませんが。
「砂川電磁」はいつでも参照できます。
「Jackson」改め「Zangwill」レベルまで到達するのをおすすめします。
もちろん、このフェーズを「砂川電磁」で済ませるのもいいですよ。
ものすごく後悔していることがあります。
とあります。
わたし、物質中の電磁気学をしっかりとやっていません。
だから、固体物理学(物性論)があやふやです。
結果的に、「キッテル固体物理学」の読み込みが浅いです。
本当に後悔しています。
この分野の成書は、数が少ないながら (「Jackson」を除いて)
物質の電磁気学(岩波基礎物理シリーズ 新装版),中山正敏,岩波書店,2021
旧版,1996で可です。内容は同じなはず(確認してません)。
以下もありますが、内容を確認したことがありません。
もちろん「ファインマン物理学4 電磁波と物性」や「Zangwill」にも載っているんですよ。
いずれも読み込みが甘いんです。
皆さんはこのようなことにならないよう、学部生の間に、何らかのかたちで、物質中の電磁気学を手を付けておくのをおすすめします。
で、バコテンはどうするの?
ですが、場の量子論におけるワインバーグ 場の量子論 に相当する、電磁気学と相対論の金字塔ですよね。
非専門家であるならば、無理に克服をしなくてもいいよう思えます。
年齢を重ねれば、わたしも違った考えになっているのかもしれません。
をバコテンの代わりに読むかもしれません。
抜けていたこと(回路/電磁波)
全然考えていませんでした。
後日、書きます。
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